AKG
C414B-XLS
今回はAKGのスタジオ定番マイクC414B-XLSです。C12Aから始まる長い系譜の最新機種ですね(といってもしばらくたちますが...)AKGの伝統と最新技術を結晶させた21世紀のC414です。
Product Overview of C414B-XLS
ぱっと見たときの外見は旧モデルとさほど変りありません。伝統の1inch Large Diaphamも搭載し、指向性切替も
- 無指向性
- ワイドカーディオイド
- カーディオイド
- ハイパーカーディオイド
- 双指向性
と充実、PAD、Low cutもそれぞれ、
- 0dB
- -6dB
- -12dB
- -18dB
- Flat
- 40Hz(12dB/oct)
- 80Hz(12dB/oct)
- 160Hz(6dB/oct)
と充実のスペックです。
Sound Impression of C414B-XLS
折角なので C414B-XLIIとも試聴してみましょう。見た目はグリルのメッキくらいでしょうか。音に関してはどうでしょう?
今回のソースはA.gtとDsを使用しました。ついでにAnnex Recにある数種類(AKG C414B-XLII,AKG C451B,audio-technica AT4050,CAD E-100(mod),Marshall Electronics MXL-2003,Mojave Audio MA-201 fet,NEUMANN U87Ai,sE electronics sE3,sE electronics sE4400a)のコンデンサーマイクを一通り試してみました。いやー音違うもんですね(←ある意味当たり前)。
for Acoustic Guitar
すべてのマイクの特徴を掲載すると何のレビューか分からなくなるのでC414 XLII,sE3,C451Bと比較していきたいと思います。当店のスタッフコータロー
にTakamineのエレアコを指弾きとストロークをそれぞれ弾いて貰い、48kHz,24Bitで収録し切替ながらの試聴です。同時にたくさんのマイクで試したわけではないので演奏にも若干の差みたいなものはあると思いますが、今回に関しては「ギターに対して同じポジションにマイクがある」方を優先しました。
ちなみに上記3機種を比較対照に選んだのは
- アコギ収録に良く使用される"C451"と比べてどうか
- 同じ"C414"を冠するXLIIと比較してどうか
- 僕自身がA.GtやDsのOverheadを収録するときに良く使用するsE3と比較してどうか
という観点に基づくものです。他にもAT4050などもダイアフラムのサイズなども違い、興味深い結果となりました。
さてさて結果(?)です。ただC414B-XLSがまだ新しいために(C414ULSにはない)高域に少しピークのようなものを感じました。新しいマイクにつきもののあれです。その点だけ予めご了承ください。
C414B-XLS vs. C451B
さすがにスモールダイアフラムC451です。良く"明るい音"と形容されますが、まさしくその通りで高域に強烈なピークを持っているように感じます。ただ周波数特性的にはフラットです。C414B-XLSは指彈き時には高域のさらさら感と低域のどっしり感がとても気持ちいいです。どちらか言うとC414B-XLSの方が自然な感じはします。
バンドアンサンブルの中で使うのならC451,アコギのみのソロを収録するならC414B-XLSと言う印象です。
C414B-XLS vs. C414B-XLII
前述しましたがC414B-XLSの方が新しいせいか明るい音がします。C414B-XLIIの方が中域にエネルギーがある感じがしますが、非常に似ています。使い込んでいけば、C414B-XLSの方がそっけない感じになりそうな感じはします。ここでの印象はC414B-XLSの方がアンビエントなどに適しているかな、という感じでした。オフマイキングの印象がよかったです。
C414B-XLS vs. sE3
これは原産国も違うので面白い勝負(勝ち負けなのか?)ですね。sE electronicsのマイクは高域にC451のような明るいピークを感じることが多いのですが、sE3もご多分に漏れずその特性、つまり"sEサウンド"を持っています。ピックが弦に当たるときのアタックやfingering noiseなどもきっちりでてきます。ストロークのときにはsE3の方が印象が良いですね。ただこの辺はマイキングによる部分も大きいです。と申しますのはラージダイアフラムのマイクはストロークのときに中低域に重たい部分を感じました。結構サウンドホールを狙ったのでそれも当たり前なのですが、もっとネックよりを狙えばそんなことも無いと思います。
楽器により鳴り方が結構違うのでマイキングは慎重に、という感じでしょうか
for Drums
さてさて、次はドラムです。ここではAKG C414B-XLII,Mojave Audio MA-201 fet,Marshall Electronics MXL-2003,sE electronics sE4400aと比べてみました。すべてラージダイアフラムをもつマイクです。
ドラマーの後方に、Ds kit全体を狙うようにマイキングし、収録後の試聴です。
C414B-XLS vs. MA-201fet
MA-201が元気に全体を拾ってくれたのに対し、C414B-XLSは若干地味な印象があります。
「ステレオ(=マイク2本)で収録しろ」といわれたらMA-201 fetを選ぶかもしれないが、アンビエントとして考えたらC414B-XLS
とかくとイメージが伝わるでしょうか。
C414B-XLS vs. MXL-2003
こちらもMA-201 fetと同じ印象です。ドラムを元気に捕らえるのか、あとで一部として付加すると考えるのか、ということにもよると思いますが、その用途によって使うマイクが変わってくる感じです。
C414B-XLS vs. C414B-XLII
これはC414B-XLSの圧勝でした。"圧勝"というと何かちがう感じもしますが、全体の印象、アンビしての印象ともにC414B-XLSの方がよかったです。
Afterwords
昔とあるエンジニア/プロデューサーの方が、「マイクは好き嫌いしてはいけない」と言っていたのを覚えていますが、僕はそれを「好みに関わらずきちんと特性を把握してしかるべきところに使用するべきだ」と解釈しました。「感度の高い、取扱いの難しいコンデンサーがたくさんあっても...」という意見も聞こえてきそうですが、今回の試聴でも分かったとおりやはり音はすべて異なります。Annex Recのマイクコレクションに新たに加わったC414B-XLS!
今後の活躍が期待されるマイクのひとつです。
2010/05/10追記
後継機種C414 XLS発売開始。指向性切り替えが9種類に増えたほかは回路は同じです。