KRYNA
Balca5 2.0m
ある日KRYNAのI戸さんからお電話いただき,RCA Interconnectできたので是非試してもらいたい,と非常に光栄な申し出をいただきました。ただ,「我々が使用する環境ではやはりXLRが多いんですよぅ。」とお伝えしたところしばらくして「XLRのInterconnect作りました!是非!!」ということで試聴させていただく機会を得ました。
ちなみに今回試したのは2.0mですが,長さで目くじらをたてるほど音質は変化しないと思います。全体の音質傾向,という感じで捉えていただけると幸いです。
Product Overview of Balca5
届いたケーブルを見るとアルミ削りだしの高そうな(苦笑)XLRコネクターがついています。ケーブル外径が8.30mmほどですが,さほど取り回しづらいという印象はありません。
コネクターも相まって重量感のあるケーブルです。
スペックです。
- 導体構成
- 高純度軟銅線
- 構造
- ZET WIRING(3芯+1芯)
- 導体数
- 4芯
- 絶縁体
- PVC、綿糸
- シールド
- ダブルシールディングトルネード構造
- シース
- PVCシース(素線の方向性を矢印で表示)
- 外径(mm)
- 8.30±0.6φ
- プラグ
- XLRプラグ
- ピン
- 真鍮+24金メッキ
またKRYNA ZET WIRING技術という技術が使われています。
KRYNAのBalcaシリーズでは、不要なノイズの影響による位相のずれ、解像力の低下を改善するために、独自の「ZET WIRING技術」を採用。一度送った信号を一度戻す事で、行きと帰りの信号が相互に影響し合い、信号の中に含まれる高周波ノイズを打ち消します。
ゴーストの様に重なり合い、解像力を低下させる原因となっていた高周波ノイズを浄化することで、さらに広大で鮮明な音場空間を再現し、ホログラフィックサウンドの完成度を劇的に向上させます。
のことです。
何やら手が込んでますね
Balcaシリーズには3,5,7のシリーズが存在するのですが,KRYNA ZET WIRING技術を用いてBalanceケーブルにできるのはとりあえずBalca 5ということでした。
Sound Impression of Balca5
さて,実際の試聴に参りましょう。
実際の録音でHAからADコンバーターの間に試して見ました。この時はKickです。中域が張り出し「ちょっと違うかなー」という印象。比較に用いたBelden 89272で慣れているということもあり89272にしました。
Mixの時にTotal CompressorからMaster Recorderの間に使用してみたのですが,その時もなにやら「中域がぐしゃっとするなぁ」という印象でした。
2連敗です。ただ,KRYNAの製品のQualityやスタッフの意気込みを知っているのでこんな状態の製品を世に出すわけがない,と思い直しホワイトノイズで数日間Break-inを施しました。
その後試聴してみると,「....やっぱり!」
変な癖はなくなっています。やっと"On your mark"です。改めて試聴開始です。
今回は2Mixに使用しました。その2MixはApogee DA-16X ver2.0からパラ出しし,Solid State Logic X-Deskでアナログサミングを行いSolid State Logic XLogic G series Stereo CompressorでTotal Compressionをかけたあと,KORG MR-2000SにDSD 5.6MHzで録音したソースです。
Digitalサミングよりも20kHz高次倍音を含んでおり,Compressionも控えめなのでダイナミクスに富み今回のチェックに最適だと思いました。
比較に使用したケーブルは
- Belden 89272(Annex Rec Default)
- Belden 88760
- KRYNA Balca 3(試作機)
です。
MR-2000Sからアナログ出力し96kHzでADを行う部分のケーブルを交換しての試聴です。
最初は地道にケーブルを差し替えていたのですが,「思い込み」があると怖いので切り替えて試聴ができるように一旦PTに96kHzで録音しました。
まずは89272の印象です。いつも使用しているケーブルということもあり,聞きなれた感じです。ややタイトながらもスピード感のある音がします。
さて,KRYNA Balca5ですが,低域がふくよかになります。89272と比べてレンジが一回り広くなるという印象です。高域もすっきりオープンな印象で,全体的にはふくよかでありつつもすっきりした感じです。高域のすっきり感は10kHzあたりではなくもっと上の周波数で特徴づけらてれいる印象です。ちょっとオーバーな表現ですが,「ガシャ」と鳴っていたH/Hの音がすっきり「カシャ」という感じに変化し,「トフ」と鳴っていだキックが「ドフ」と変わったという感じでしょうか。ベースの帯域に非常に有効な印象ですが低域が出るだけ,という訳ではありません。また,楽器の値段が高くなった感じ,というと伝わりますでしょうか。全体的に艶がある感じの音がします。
KRYNA Balca3ですが,コレもイイ!全体的にはBalca5のほうが高品位で上品な印象をうけるのですが,Rockっぽい感じの良さがあります。
89272だとKick < BassだったバランスがBalca5だとKick=Bassとなる印象でしょうか。89272はややタイト気味な音のケーブルなので致し方ないのかもしれませんが...。といっても一旦OKを出したMixがケーブルでここまで変わるとやはりケーブルの重要性を改めて実感します。
別のタイミングでこのsession Fileを試聴したスタッフが「ほー!」と言っていましたが気持ちはよくわかります。
Balca5はオールジャンルに行けそうですが,実際に楽器を収録しているジャンルがいいと思います。
Balca3はRockやBluesに向く,ややアメリカンな印象です。
Afterwords
この高域のオープンで自然な印象がKRYNA ZET WIRINGにより得られているとしたらすごいことですね。
良いケーブルはついつい欲しくなりますね。DynやEQで出せない説得力を持つケーブル等は特にです。
2Mix用に2.0mが欲しくなりました。
Balca7(原理的に作れないそうです)ができたらコレはもっとすごいのかと思うと作れないのが残念ですね。
上記セッション Fileは試聴可能ですのでご希望の方はお気軽にご来店ください(Studioのスケジュールに左右されますのでご確認いただけると確実です)。