OKUTSU DENKO
Air Cable

絶縁材に比誘電率が最も低い「空気」を使用した電源ケーブルAirCable を試してみました。今回試せたのは

です。果たしてどんな音になるのでしょうか。

Product Overview of Air Cable

そもそも比誘電率って何だ?という疑問があるかと思いますが、物理学的には「物体固有の数値で,誘電率を真空の誘電率で割った物」だったはずです。実際には,そうですね、この値が低いほど電材に電流が流れたとき絶縁体経由で相互に影響を及ぼしにくいと解釈してください。絶縁体に帯電した物体を近づけると誘電分極と言う現象が起きますが、これが起きづらいのです。

電磁気学のレクチャーではないのでこのへんでやめておきます。

まぁ,洗濯機で洗濯する際に「比誘電率が高い=色移りしやすい」と思ってもらって良いかと思います(笑)。

絶縁体はよくあるところではビニールやゴム、テフロンなどもありますね。伸縮性と頑丈性が基準に選ばれているのでしょう。

ところが絶縁性が高いのと、誘電率が低いのは別の話で、電源ケーブルや信号線の場合、他の電気信号に影響を与えることが考えられます。その影響を最も低くできるのが空気という訳です。

最初「空気で絶縁って...」と思いましたが,正確には絶縁体のほとんどを空気が占めている,とお考え下さい。

空気絶縁のコンセプトはStrip Gardenでも採用されています。

さてケーブルに話を戻しましょう。見た目は別段変わったことはありません。見た目は結構太いのですが、空気が内部に入っているので見た目ほどの重量はありません。

とりまわしづらそうな太さです(苦笑)。2mが標準だと嬉しいですね。コネクターもしっかりついており、安心感満載です。

Sound Impression of Air Cable

さて、実際の試聴です。弊社の電源ケーブルフリークqtrも一緒に試聴です。どうやって試そうか、と言う話になったときにqtr情報で「デジタルに効くらしい」というのを聞きました。それならば、と言う事でアナログとデジタル両方に試してみました。

For Analogue

ProToolsのセッションファイルをSSLのXLogic SuperAnalogue Channelに入力、XLogic SuperAnalogue Channelの電源ケーブルを差し替えて試聴しました。パラレルで同じ信号をもう一台のXLogic SuperAnalogue Channelに入力してPT上で切り替えながらの試聴です。

ソースはKick,Snare,Bass,Gtなどです。過剰な処理をしていないので自然な音像、音色で比較するのに良いかな、と思い、Mixされたdataではなく単独のソースを使用しました。

ちなみに比較対象に使用したケーブルは弊社Annex Recordingの標準採用ケーブル(非売品,生産完了品)です。さほど高いケーブルではありませんが、ややタイトながらも情報量が多く、自然な音で気に入っています。相手にとって不足なし、と言ったところでしょうか。以下の印象はAirCable自体の音の印象というよりはそのケーブルと比較しての印象と言う部分もございます。

Strike AIR3-ST-1.5

高域がやや丸くなる印象です。テープの感じに近いかもしれません。コンプ感はあまりありませんが、ちょっとなまるというか...。その分まとまりはよくなったように感じます。単体のソースが通る部分よりはサミング回路を搭載している機材に使用したほうが綺麗に収まると思います。

Alchemy AIR3-AL-1.5

これは一番試聴に苦労しました。というのは弊社の標準ケーブルとの差が少なかったのです。ですので悪く無いです(笑)。前述のとおり「ややタイトながらも情報量が多く、自然な音」といって良いと思います。

Destiny AIR3-DS-1.5

こちらはややコンプ感が加わった感じです。音質傾向としてはStrikeとAlchemyの間辺りな印象ですが、コンプ感のせいかちょっと中域が張りだして聞こえます。とっ散らかったMixをうまくまとめてくれるケーブルかもしれません。Mixerなどに良いと思います。

Universe AIR4-UV-1.5

AIR4シリーズです。前述の3本がAIR3とあるのでVersionが違うのでしょうか

これはすごいです。価格もそうなのですが、音を出した瞬間qtrと2人で「おおーコレスゲー!!」と声を出してしまいました。前述の3機種とは全く別次元の音がします。低域から高域までの位相が揃い、同じスピードで出てきてくれる感じです。

EQをひねっても弊社の標準ケーブルとは全く別の効き方をします。音のまとまりが崩れないまましっかり効いていく感じという感じでしょうか。

価格の順に聞いて行った感じですが、その試みは成功です(笑)。

For Digital

今回はDAされた信号をそのままApogee AD-8000に入力しAD-8000の電源を差し替えていきました。通常,こちらに採用されているのはBlack mammba-α Beryllium Editionです。以下の印象はBlack mammba-α Beryllium Editionとの比較というイメージです。

Strike AIR3-ST-1.5

これはいいです!アナログに試したときには「ソースを選ぶなぁ」とちょっとかんじでいたのですが、ADに使用すると全く別物でした。インターフェイスやPCにも有効ではないでしょうか。デジタルミキサーにもいいと思います。

Alchemy AIR3-AL-1.5

デジタルでどうだろうか?と思いながら試しましたが、印象はアナログとあまり変わりません。今回試した中では一番無難かもしれません。

Destiny AIR3-DS-1.5

こちらはアナログのAlchemyと同じ印象です。別段悪い印象はありませんが,Strikeの時のような感動もありません。ややコンプがかった特性のおかげでまとまりはよく聞こえます。

Universe AIR4-UV-1.5

アナログの時程の好印象ではありませんが、かなり好きです。やはり綺麗に位相が整う印象です。Strikeと好みが分かれそうです。

多かれ少なかれ,どれもBlack mammba-α Beryllium Editionとは音が変わりますのでソースや好みに合わせて変えていくのは楽しそうです。

Afterwords

こうしてみるとStrikeとUniverse,どちらがお得か考えてしまいますね。僕は「Digital用にStrike,アナログ用にUniverseかな」と思いました。まぁ,あれば色々試せますし。

今回デジタルとアナログで効果がここまで変わったのは衝撃でした。たしかにギターアンプに効果的なケーブルが音響機器に有効とは限らないのですが、デジタルとアナログでこうも変わるとは、と言う印象です。

AlchemyとDestinyのコメントが薄いのでなにやら勘ぐられそうですが,今回はそれらに向かないソースだったのかもしれません。

qtrが「strikeをギターアンプに試したらいまいちだったのですが,Digitalにここまで効くとは!」と言っていたのでやはり向き不向きがあるのでしょう(Universeなら良い音したでしょうね)。さらに聴く側の好き嫌いも入りますから...。

デジタルに効く、と一言で言いましたが、デジタル信号を送出する機材(W/C generator など),半分はアナログ信号を扱う機材(AD/DAコンバーターやシンセなど)などいろいろです。今回の試聴でさらに電源ケーブルの奥の深さを思い知りました。

スタジオの電源ケーブルを全部AirCableにはできませんが(予算的に)軸となる楽器、こだわりのあるソースにはもってこいでしょう。特にAD/DAなど必ず信号が通過する機材に使用することを考えるとその恩恵は計り知れません。

是非Annex Recにも導入していきたいですね。導入したらまたいつもの様に加筆していきますね。

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checker:Takumi Otani

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