elysia
museq
さて,今回は久しぶりにアナログアウトボードを試して行きましょう。取り上げるのはelysia museqです。elysiaというとPlug-inにもなっているAlpha Compressorが有名だと思いますが,その職人気質の設計のEQはどのようなものなのでしょうか。早速見て行きましょう。
Product Overview of museq
届いた箱から本体を取り出してみると程よい質量,期待の持てる質量です。
電源を入れる前にツマミを回してみましたが,グラつきなど皆無ですね。ドイツらしいというか,「業務機」としての使用が前提の機材なのでしょう。クリックつきですのでリコールが簡単です。
museqは5バンドのDual EQで周波数の低い順に
- Low
- Bottom
- Middle
- Top
- High
と名称がついています。スペックついでに各周波数帯の担当周波数です。
- Frequency Response
- <10 Hz - >200 kHz(-0.2 dB)
- Low Band (Shelf Filter)
- 9 - 200 Hz (+/-15 dB)
- Low Band (Cut Filter)
- 9 - 200 Hz
- Bottom Band (Peak Filter)
- 18 - 400 Hz (+/-15 dB)
- Middle Band (Peak Filter)
- 150 Hz - 3.5 kHz (+/-15 dB)
- Top Band (Peak Filter)
- 700 Hz - 16 kHz (+/-15 dB)
- Quality factor (Q)
- 1.3 (wide) and 0.5 (narrow)
- High Band (Shelf Filter)
- 1.8 - 35 kHz (+/-15 dB)
- High Band (Cut Filter)
- 1.8 - 35 kHz
- THD+N @ 0 dBu, 20 Hz - 22 kHz
- 0.0037 %
- THD+N @ +10 dBu, 20 Hz - 22 kHz
- 0.0038 %
- Noise Floor, 20 Hz - 20 kHz (A-weighted)
- -91.6 dBu
- Dynamic Range, 20Hz - 22kHz
- 119 dB
- Maximum input level
- +27 dBu
- Maximum output level
- +27 dBu
- Input impedance
- 10 kOhm
- Output impedance
- 68 Ohm
このmuseqの面白いところはLow/HighがShelvingかFilterかの切り替えができるのですが,Filterとして使用したときにはResonanceが発生するように作られています。
そうです。シンセのfilterでお馴染みのレゾナンスです。
Qが2種類しか可変できないのがちょっと残念な気もしますが,メーカーを信じるとしましょう。
またこのmuseqですが,よくある,センターが0dBで左に回すとCut,右に回すとBoost
という構造にはなっていません。Cut/Boostはノブの下のボタンで切り替えます。
面倒な気もしますが,300度の角度を調整に使用できるのでより細かい調整が可能です。
またBoost/Cutのノブを0dB,すなわち左に回しきった状態ではそのバンドを信号が経由しないとのことです。左に回しきった状態でバイパスを押して聴いてみましたが,一聴してわかるような変化はありませんでした。実際にバイパスなのでしょう。
Sound Impression of museq
さて,実際の音に行きましょう。
まずは2Mixです。マスタリングEQという観点で使用してみました。MR-2000Sからmuseq,DM2000のモニターセクションを経由してモニター,という状況です。
まずざっくりEQしていきますが大きな破綻がありません。Buzzaudio REQ-2.2を試した時と同じ印象というか,ただ,少し違うのは非常に頑固,辛口な印象です。言ったことしかやらない,言ったことはきっちりやる,という感じと言うんでしょうか。原産国がドイツという印象が感じ取れます。
さて,細かくEQしていきます。
なかなか,いいかんじです。バイパスをすると急に残念な感じになります。
やはりQのパラメーター欲しかったですね。3種類でもいいので。Narrow,Medium,Wideといった感じでしょうか。
さて,Filterモードも試してみました。レゾナンスが効くのでテープなどナローレンジなものをブーストする,という感じだとイイのかもしれません。もっと言うと楽器などのほうが面白い効果が得られると思います。
個別のソースに試してみました。
まずKickです。どの周波数も確実に効きます。試しにFilerモードにしてResonaceを試してみましたが,モニターのウーファーがびっくりすくるくらい振動します。Micで収録したKickに一気にHip-Hopのバスドラのような低域が加わります。
次にスネアです。
硬質なくっきりした感じの音質を一番感じられた,という印象でしょうか。しっかり効きますのでスネアの質を大きく変えることが可能です。
次にBassです。
ゴリっとした感じのベースからウォームなベースまで気持よく音が変わります。
最後にボーカルです。
高域を思いきりブーストしてAir感を出してみました。
ノイズがほとんど乗ることなく音が綺麗に広がるのはさすがです。
耳に痛いあたりの周波数をブーストしても嫌味がないというか,安心できる感じです。
総合してやはり非常に良いEQです。
Afterwords
ここまでの機材に文句をつけるのもなんですが簡単なメーターが欲しかったですね。-20,+4,+16dBuあたりの3つでいいと思うのですがあると便利だと思います。
あと出力を10ステップくらいでアッテネーションできると良いと思います。使い方にもよると思うのですが,ブーストしても音楽を破綻させず良くなっていく感じなのでついついブーストしてしまうのです。
チェック中に「変だなー」とおもってMixerのメーターを見ると見事にRED ZONE いやDanger ZONEです。Level調整のためだけに他の機材をつなぐのも悔しいのでぜひとも欲しかったですね。
全体の印象は「ヨーロッパの岩の感じを持つ機材」と言って良いかと思います。イギリスだとレンガな感じ,アメリカ東海岸だとコンクリートの感じ,という感じに成るでしょうか。
辛口なので手強い部分もあると思いますが,きちんと組み立てられた音楽に更なる磨きをかけてくれるEQだと思います。