Sontronics
STC-1SB
今回はコンデンサーマイクです。Sontronicsという英国のメーカーのマイクです。楽器フェアかで音を聞いたことがあるのですが、タイミングが合いましたので今回チェックしてみました。
Product Overview of STC-1SB
がっしりした感じの高級感あふれる木箱の中にステレオバー,ホルダー,popガード,本体が収められています。本体重量は程よい質量で、0dB/-10dB/-20dBのpadとLinear,75Hz,150HzのHPFを搭載しています。
いわゆるペンシルタイプのコンデンサーマイクです。
スペックとしては
- 周波数特性: 25Hz - 20kHz
- 感度: 12mV/Pa -36dB ±2dB
(0dB = 1V/Pa 1,000Hz) - 指向特性: 単一指向性
- インピーダンス: <=200Ω
- 等価騒音レベル: 16dB (A-weighted)
- 最大 SPL (for 0.5% THD @ 1,000Hz): 137dB
- 電源供給: ファンタムパワー 48V ±4V
- コネクター: Three-pin XLR
です。あまり変わった印象は受けませんね。使いやすそうです。周波数特性曲線を見ると5kHz-10KHzがうっすら盛り上がっています。
そうそう、ステレオバーが3/8"に対応していないのはちょっとどうかと思いました。イギリスならAKG規格(=3/8")には対応していて欲しいものです...。
Sound Impression of STC-1SB
さて、スペックからは無難な印象を受けるSTC-1S,音質はどうでしょうか。今回はペンシルタイプのAKG C451B,sE electronics sE 3 Stereo matched SE3-STと比べてみました。ソースを何にしようかなと思っていたのですが、今回はとりあえずDsのオーバーヘッドで試してみました。HAはdbx 786を使用しました。
Ds kitはCANOPUSです。
印象をばーと列挙しましょう
Sontronics STC-1SB
周波数特性曲線からは想像できない不思議な中低域をもつマイクです。ステレオイメージもしっかりとしていて、タムを回した感じも綺麗に広がっていきます。Kickもきちんと収録されていて、Jazzならこの2本で成立するんじゃないかという程の説得力を持っている感じです。
AKG C451B
うーん、聴きなれた音!という感じです。Sontronics STC-1SBとは対照的に乾いた、高域の粒子の細かさが感じられる音です。昔有名なエンジニアの方が「ヌケが悪い時とかC451みたいなときがあるんだよねー」とおっしゃっていたのを聞いたか、読んだかしたことが有りますが、復刻版でもその印象は変わりません。
sE 3 Stereo matched SE3-ST
詳細はsE electronics sE 3 Stereo matched SE3-STをご覧いただくのが良いかもしれませんが、どちらかというと、C451に近い感じの音です。やだやはりメーカーが違いますから音は違います。
sE electronics sE 3 Stereo matched SE3-STはすっきりさっぱり明るい感じの音、コンソールでいえばSSLのような印象です。ウイスキーでいうとSpringbankみたいな感じでしょうか(これもわかりづらいか...)。一方、Sontronics STC-1SBはバーボン系です。若干オイリーな感じのバーボンという感じです(まぁバーボン自体、スコッチよりオイリーですね)。
中低域あたりに独特のまとわりつく感じというか、EQで出すのはチョット難しそうな印象です。実際EQでやってみたのですが、位相が狂いまくって使いものになる音ではありませんでした
チョット癖は強いのですが、はまると他では変えられない良さがある「個性派」という感じでしょうか。アコギとか、弦楽器もの、あとPfにも(ジャンルは若干選ぶかもしれませんが、)大きな効力を発揮してくれそうです。
Afterwords
録音,Mixingって結構大きく分けて2つのスタイルがあると思います。
- 録音時にいろいろディスカッションして納得した音を積み重ねて、Mixではそれを修正、補正するアプローチ
- 無難な「とりあえず」の音で録音しておいてMixingでいろいろ音を作っていくアプローチ
僕は結構1.のアプローチに近いので、マイクやHAには大きな興味があります。EQやコンプでは音を変えるのに限界が有りますから。
Annex Recordingには個性的なマイクがいくつか有りますが、それも僕のそんなこだわり(?)の表れかもしれません。
その昔Bob Clearmountain氏(だったかなー)が「Recording techniqueという言葉はもう死語になったのかと思った」と言っていたのを覚えています。また、Andy Wallace氏も「とりあえずHDにdataをつっこんだような録音のMixをするのは嫌だね」とおっしゃっておいでした。個人的は大いに共感できます。
人それぞれ色んなスタイルがあるでしょうし、どちらが良いかは分かりません。それぞれにメリット・デメリットが存在するでしょうから。ただ、EQで音をつくる、と言う事よりもマイキングやマイクアレンジで音を作る、というアプローチをとることが多い僕にとってはSTCのようなマイクは好ましい存在です。
P.S.
僕の周りだけかもしれませんが、お酒をたしなむエンジニアって飲みに行くとウイスキーをよくメーカーの音に例えますね。