MIDAS
XL48
世界的なシェアを誇るコンソールブランドMIDASから8chのHAが発売になりました。XL42が欲しかった僕としては興味津々です。
いろいろなReviewでも書いてきましたがコンソールの音質を影響付ける重要なfactorであるHAですが,MIDASのHAはそれはもうしっかりしています。MIDAS VeniceFを現場使用した時の印象からも明らかです。
タイミングよく録音の現場で試す機会を得ました。早速見て行きましょう。
Product Overview of XL48
1Uサイズにコンパクトに8ch分のHAをが搭載されています。すべて同じ構成で「ch1-2のみHi-Z inあり」ということはありません。
HA一つあたりの構成は
- 増幅段(-10dB ... 60dB)XL4をベースに開発されています。
- +48V
- PAD
- Phase
- HPF:12dB/oct. 10Hz-400Hz 連続可変
- LPF:12dB/oct. 1kHz-40kHz 連続可変
となっています。
GAIN,HPF,LPFが連続可変なのは嬉しいですね。
メーターも全chに搭載されています。
周波数特性は20Hz-20kHz +0dB ... -1dB,最大出力レベルはライン出力(600R 以内)+21dBuです。
また,入力はXLRとD-sub input(XLRとパラレル)も搭載しています。
OutputはD-Sub(TASCAM pin)で出力されますが,AES/EBUとADATも同時出力されています。HA兼Spliterとして使用することも可能です。Live収録の現場では歓迎される仕様ですね。
AD outputは44.1,48,88.2,96kHzを選ぶことができ,WCもIn/Out搭載しています。AES/EBUは8ch 2系統の出力になっています。Manualに特に記載はありませんがハイレート時はDouble Speedでしょう。
ADAT outはハイレート時はS/MUXとして作動しますが,Toslinkは2個用意されていますので安心です。
欲を言えば,FilterのバイパススイッチとMUTEスイッチが欲しかったですが,まあ仕方ないでしょう。
電源スイッチはなくIECのアウトレットを接続すれば電源はONになります。ACはユニバーサルです。ファンの音がするのですが,音を出してしまえばあまり気になりませんでした。
ただ,Control Room, Play Roomとわかれていない環境,例えばリハスタに持ち込んで弱音楽器を録音する,というようなときには注意が必要かもしれません。ファンのお陰でか本体があまり熱くなるようなことはありませんでした。
Sound Impression of XL48
さて,その音に行きましょう。今回はちょうど運良く録音で試すことができました。アカペラのRecです。
AD outも活用して,HAのみならずHA+ADコンバーターとしての音質も見ていればと思います。
A cappella Recording
ちょうどアカペラの録音がありました。
同じHAが複数必要になります。DM2000のonboard HAでも良かったのでしょうがあるなら使いますよね。
というわけでマイクをつないで設定です。今回は5本のマイクとAmbientを使用しましたが,Ambは別のHAにしました。
Micは持ち込みのSHURE 58とBeta58Aだったのですが,情報量が多く,すっきりした音がしていました。
後日DAWでミックスしましたが,EQの効き,コンプのレスポンスも非常によく,優秀なHAでしか味わえない「楽ちんなMix」(=「手を抜いている」のではなく「ストレスなく音が組み上がっていく感じ」とで申しましょうか)を堪能できました。
音の距離感も近く言うことなしですね。
今回試しての印象はMIDAS Consoleが持つ「ガッツ感」というものは若干薄い気がしました。あのガッツはEQや他の部分も影響しているのでしょう。
ただ,レンジの広さや,正確さは備えていますので十分使っていけるHAだと思います。
アカペラの録音時に感心したのは,肉声という楽器全般に比べてどうしてもナローレンジな部分にもかかわらず,その違いをきちんと表現してくれた部分です。
In-Store Live
小規模のインストアライブがありましたのでそこでマイクのHAに使用してみました。出力はADATを使用しました。D-subによるアナログアウトのほうが一般的になるでしょうが,「ADまで含めたXL48の音」を確認してみたかったのです。
サンプリングレートは48kHzです。96kHzにしたかったのですが,デジタルミキサーのほうがS/MUXに対応していなかったのでXL48をマスターにしました。
SHURE SM58でまず「ワンツーチェック」を行いFoHをチューニングするうわけですが,いつもとは全く異なるEQカーブになっていました。会場の共振などの部分はもちろん共通してカットしてあるのですが,使用しているバンド数の少なさというんでしょうか。前述のすっきりしたハリのある感じのおかげか「低域が周りがちな会場でスッキリボーカルを出す」というのが自然に作れた感じです。
モニターのチューニングの時にも音がしっかりでてくるので音が大きく感じられます。パワーアンプの出力を下げる形になったのですが,不足感はありません。ハウリングも起きづらくなりますし言うことなしです。
リハ前に時間がとれたのでミキサーのHAのと比較してみたのですが,違うもんですねー。メーターの触れ方が同じ状態でチェックしましたが,XL48の音を基準にするとミキサーのオンボードHAのは抜けが悪くベシャ,っとした音に感じられます。ミキサーのHAを基準にするとXL48の音はスッキリくっきりしていて抜けの良い音に感じられます。
ステージアシスタントも聞きに来て「ほー!」といっていました。
値段が異なりますから,XL48とミキサーをHAの質だけで比較すると気の毒ですが,拡張HAとしてバンドモノのセンターラインに効くであろう有効なHAだと思います。
Additional Check
D-subとXLRがパラレルなのを利用してXL48と他の8chHAを比べてみました。3chづつですが簡単に録音して比較です。
電源ケーブルなどの環境は可能な限り共通にしました。
8ch HAのとして同価格帯の製品ですので優秀です。優劣というよりは好みの部分が大きいと思います。
XL48のアドバンテージとしてはHAの音質はもちろんの事ですがADが2種類出せる,という部分とパラアウトを搭載しているという点でしょうか。
Afterwords
Rec時の僕のスタイル(Channel Stripを多用し,録音時に音を結構作ってしまう)からすると(音質ではなく機能的に)ちょっと物足りない印象も拭えませんが,非常に優秀なHAといって良いと思います。
SRの現場に多チャンネルのスタジオクラスのHAを持ち込むことはやや非現実的ですがXL48ならば,結構現実的だと思います。
MIDASサウンドがこの価格で手に入るのですからイイ時代になったものです。一番楽しそうなのはDigital Consoleの拡張HAとして使用することです。
センターライン,すなわちKick,Sn,HH,Bass, VocalなどをXL48を経由させAES/EBUでConsoleへ,というのが楽しいでしょう。
ADAT,S/MUXを搭載していますのでRecのHAとしても非常に有効だと思います。MR816csxやUR824などに,別のキャラクターのHAを追加する
ということが可能です。
現場収録のHAとしてもDigital Mixerの拡張HAとしても使いやすい優れたHAだと思います。