RS124の歴史について
アナログ・ハードウェアーによるシグナル・プロセッシングが世界的に見直されている中、イギリスのアビイ・ロード・スタジオは、CHANDLER LIMITEDと共同で、歴史的なコンプレッサーの名機"RS124"を、初めて正式に復刻しました。RS124の最初のデザインは、当時アビイ・ロードの技術チームの主任であったBill LiveyとLen Page、そしてEMIオーディオ開発のデザイナーだったMike Batchelorらによって設計されました。今までに設計されたどんなコンプレッサーよりも、重要な意味を持った1台でした。1950年代の終盤に、EMIはALTEC社の真空管コンプレッサーを導入していましたが、より高品位なレコーディングには不十分なサウンドしか得られないことにすぐに気がつきました。EMIオーディオ開発はALTECの真空管コンプをベースに、全く新しいコンプレッサーとしてEMI/Abbey Roadの名を冠した"RS124"を完成させたのです。RS124は導入されて間もなく、アビイ・ロード・スタジオのサウンド・エンジニアたちにとって特別な機材となりました。それはサウンドを均一にするといったコンプレッサーの役割以上の、素材をどう調理していくのかといった領域に踏み込んだ機材でした。RS124だけが持つ、サウンドを際立たせる個性的なキャラクターが、個々の楽器、リズムセクション、そしてミックス全体のサウンドを飛躍的に向上させたのです。RS124はアビイ・ロード・スタジオの録音やミキシングのプロセスに多大な影響を与えたChandler Limited,RS124,ALTEC 436,真空管コンプレッサー,ビートルズ コンプレッサー,BEATLES録音機材,機材であり、1960年代には同スタジオの全てのコントロール・ルームにインストールされていました。RS124はほぼ全てのザ・ビートルズのレコーディング・セッションで使用されました。元々はアメリカのモータウン・レーベルの作品のベースサウンドに魅せられたポール・マッカートニーのために、モータウン・サウンドの要であるALTEC436をアップグレードしたものがRS124です。ビートルズ作品の中期から後期にかけて、RS124を通した、太く瑞々しいポールのベースサウンドを聴くことができます。
RS124の復刻について
今まで多くの完璧でない情報や想像、仮定の中で、RS124のレプリカと銘打った製品が作られてきましたが、本物は一つとして作られていませんでした。今回、RS124の復刻にあたって、アビイ・ロード・スタジオとCHANDLER LIMITEDの共同開発チームは、回路図をアビイ・ロード・スタジオに存在している歴史的な実機から、そして当時の手書きのノートから正確に再現しまし た。さらに何台か存在するRS124のそれぞれの微妙な違いまでもを正確に再現しようと試みました。アビイ・ロード・スタジオのオフィシャル・イクイップメントを世界で唯一開発・製造・販売できるCHANDLER LIMITED社は、この世界で最も歴史のあるレコーディング・スタジオに実存する貴重な実機や、今まで誰も触れたこともないような貴重な資料にアクセス し、アビイ・ロード・スタジオのサウンド・エンジニア達との試聴テストを繰り返し、ついに RS124コンプレッサーを現代に甦らせました。このRS124は歴史的価値のあるRS124を正確に再現しただけでなく、現代のレコーディング環境でも使いやすいよう、さらに発展させたものです。「このプロジェクトが開始されて間もなく、私たちは現存するそれぞれのRS124に違ったキャラクターやニュアンスがある事に気がつきました。その時点で全てのRS124の個性的なサウンドは、1つの筐体に収められるべきだと考えたのです。新しいRS124ではアビイ・ロード・スタジオに実在する全ての個体のRS124のサウンドが再現できます。」とChandler LimitedのデザイナーであるWade Goeke(ウェイド・ゴーク)は述べています。結果Chandler Limited RS124ではフロントパネルからそのシリアル番号を切り替え、いくつかのRS124のキャラクターを切り替える事ができます。またオリジナル機からのアップグレード点もあり、可変のアタック・コントロール、200/600オームのインピーダンス切り替え、特別な" Super Fuse"の搭載などが新たに加えられています。この歴史的な機材の復刻について、アビイ・ロード・スタジオのMirek Stiles氏は、「1999年にRS124を改めて聴いた時は、確か技術担当のLester Smith氏がこの機種を聴く機会を与えてくれました。その時点でおおよそ20年間以上その機材は大事に保管されていたのです。しかし驚く事にRS124は完璧に動作していました。すぐに機材をセットアップして試してみたのですが、そのサウンドが今までに聴いてきたどんなコンプレッサーとも異なる素晴らしいサウンドであることに一瞬で気がつきました。そんな歴史的な機材が2015年にまた復活して、世界中のエンジニアやミュージシャン、プロデューサーがトラッキングやミックスに使用するなんて最高の出来事です!当時の手書きのノートや技術的な資料を細かく調べていくうちに、初めてこのRS124の本当の姿が見えてきたのです。私自身、この新しいCHANDLERのRS124とオリジナル・ユニットを比較試聴しましたが、設計チーフのウェイド・ゴーク氏は、そのキャラクターを見事に再現したと断言できます。アビイ・ロード・スタジオのエンジニア達は、彼らがRS124のプロトタイプを完成させた時点から、そのサウンドに惚れ込みミックスバスに早速使用していました。本物の価値のある機材です」。
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