アコースティック・ギターのボディ・シェイプのひとつであるオーディトリアムには、同じく一般的なシェイプであるドレッドノートのように、100年以上の歴史があります。
加えて近年、その抱えやすいボディ・サイズやバランスの取れたジャンルを選ばないサウンド・ポテンシャルを背景に、オーディトリアムの人気は確実に高まっています。
例えば、これまでステージでドレッドノートを抱えて歌っていた多くのシンガーが、宅録やストリーミングなど発信の場所と方法が変化していくのに伴って、もう少しコンパクトで取り回しが良く、それでいて音量やトーン、サウンドに不満が少なく、ストレスなしに持ち替えられる別のギターとしてオーディトリアムを検討するようになってきているのです。
しかしながら、ドレッドノートに比べボディが小さいオーディトリアムはその特性上、そもそもの音量感だけでなく、とりわけストラミング奏法や繊細な演奏をした時に中低音域成分が不足しがちであったり、また全体の重心がネック側に傾いて抱えたときのバランスに難があったりと、解決したい課題があるのも事実でした。
そこで私たちIbanezは、従来のオーディトリアムに突きつけられた課題を解決すべく、独自のオーディトリアム・ボディ・シェイプを模索することにしました。
こうして誕生したのが、AAM (Advanced Auditorium)なのです。
音響効果を求めてボディ・サイドに開口部を設けられた前例は多くありますが、このA.I.R. (Acoustic Information Response) portはただ孔を開けただけではありません。
図の通り、ボディ内部に設けた二つの反響部が響きの波を屈折反射し、効率よくポートから響き出るようにイメージして設計しています。
ギターを構えるプレイヤーの直下にA.I.R.portが来るよう設計しており、これによって自らのアコースティック・サウンドをより強く感じられるようになっています。
抱えたときのバランスに優れ、自分のサウンドを体感できる、オリジナルのボディ形状です。
ボディのウェスト部分(最広部)は、一般的なオーディトリアムよりもほんの僅かに幅の広いボディ設計です。また、ボディのくびれ部分(最狭部)は、重量バランスを考慮し、一般的なオーディトリアムよりもほんの僅かにネック方向にくびれの位置を移動しました。
さらに、抱えやすさにこだわり、ボディ・エッジ部分には緩やかに角度を付けて丸める、ラウンド加工をほどこしています。
Ibanez独自のドレッドノート・モデルであるAAD (Advanced Acoustic Dreadnought)の開発時に完成したX-Mブレーシングは、Xから繋がるトーンバーのエリアが"M"のように見えるため、"X-M"と呼ぶこのブレーシングによって、バンド・アンサンブルの中でも埋もれないクリアな低音域とクリスピーな高音域を特長とするサウンドを実現しています。
今回のAAM (Advanced Auditorium)を開発するにあたり、そのX-Mをオーディトリアム専用にアレンジすることで、コンパクト・ボディのギターに不足しがちなロー・ミッド成分の充実に繋げています。
写真の杢目と異なる場合がございます。実際の画像をご希望の方はお問い合わせフォームからお申し付けください。
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