Soundcraft
Ui24R
今回見ていくのは最近流行り(?)のPCやタブレット、スマートフォンを使用してWi-Fi経由でコントロール可能なデジタルミキサーです。
昨年UiシリーズとしてUi12とUi16がリリースされましたが、Ui12はMic/Line Inputが8、Ui16は12です。
基本的なシステムは同じでMic/Lineが20まで拡張された製品です。
早速見ていきましょう。
Product Overview of Ui24R
Uiシリーズはタブレット、スマートフォンでコントロール出来る、という部分でMackieのDLシリーズやその他のデジタルミキサーと似た印象を受けますが、大きく異なる点があります。
- ミキサーをコントロールするのがApps経由ではなくBrowser経由だということ。
- 本体自体がWi-Fiスポットになること(Ui24Rは2.4GHzと5GHzの帯域に対応!!)。
でしょうか。
1.)のメリットは、OSなどのアップデートなどの影響を受けづらい。
昨今スマートフォン、タブレット、PCはブラウザーを標準搭載しています。ブラウザにより若干の差はあるでしょうが、タブレットの、特にiPadとiOSのverによる影響のほうが大きいでしょう。実際に某社のmixer コントロールアプリは僕のiPadにインストールできませんでした。
2.)に関しては1.)の理由により必然となります。粗悪なWi-Fi Routerが原因で接続が安定しない、みたいなこともないでしょう(相性はあるかもしれませんが)。
10台までアクセス可能です。
Ui24RはRack Mount出来るようになっており、Ethernetポートが2基、HDMIポートが1基、USBポートが5基(TypeA:4,TypeB:1)搭載されています。USBポートのうち2つはコントロール用、残り2つはそれぞれPlayback/Rec、そしてTypeBのポートは32chのAudio Interfaceとして機能します。
フロントのRECと書かれたUSBポートは24-channel direct-to-memory recordingが可能です
HDMI経由でディスプレイに接続し,USB MouseとKeyを接続すればタブレットやPCを用いなくてもコントロールが可能とのこと。なかなか良いアイデアですね。
UiシリーズはUi24Rの他にUi12,Ui16とありますが,単純に入出力の違いだけではありません。Ui12,Ui16との違いを簡単に記載します(既述の部分もありますが,ご了承ください)。- Wi-Fiが2.4GHzに加え5.2GHzが選択可能
- HAの開発はSTUDER
- AUX OutはMatrix Outに切り替え可能
- Mic/Line InにはLPFが,AUX outとL/Rには HPF,LPFが搭載
- VCA Fader搭載
- HDMI経由でディスプレイに接続し,USB MouseとKeyを接続すればタブレットやPCを用いなくてもコントロールが可能
- Inputパッチが可能
- Input/Outpuにディレイが搭載
辺りでしょうか?
コネクターパネルを上に向け,マルチボックス的な使い方が出来るようになっています。ただそのときにはWi-Fiアンテナが低いところに来てしまいます。Wi-Fi接続が不安定になるときはEther Portに3rd partyのWi-Fi Routerを接続し見通しの良いところに設置すれば安定すると思います。
Ui24Rのミキサー部を記載すると
- 20 Mic/Line Input
- 1 Stereo Input
- 4 FX Bus
- 8 AUX(Pre/Post)/MTX Bus (AUX+MTX=8)
- 6 Stereo SUB Group
- 6 VCA Group
- 6 MUTE Group
ということになります。かなり充実したミキサーですね。
MUTE Groupは同一Chを複数のMute Grにアサイン可能ですが、VCA Group,SUB Groupに関しては同一Chを複数のVCA GroupやSUB Groupにアサインできません。
MUTE GroupはInputのみならず、AUX MasterやVCA Master, SUB Gr Masterもアサイン可能です。
意外にもInput chをMUTEしてもPREの場合、AUXに信号は流れていきます。
これはちょっと不便だな、と感じました。
それぞれのGroupは名称をつけることが可能です。
内部のセットアップで結構色々変更できます。
実際にはdemo画面からいじっていただくのが一番分かると思いますが、簡単に基本操作を記載します。
タブレットとスマートフォンでは画面のサイズが異なりますのでデザインも2種類用意されています。僕はiPadとiPhoneで試しました。ブラウザはiPadではChromeで正常作動しましたがiPhoneだと表示が切り替わらなかったのでsafariにしました。こちらのほうが快適です。
INPUT Chに関してはHPF,LPF,4band Full-Parametric EQ,GATE,COMP標準装備でCh1,2のみDigiTechのアンプシミュレーターが搭載されています。DE-ESSERやRTAも装備していますので十分な調整が可能です。
ここへは[EDIT]というボタンでアクセス可能ですが、FX Send,AUX Send,Patchingの変更なども可能です。
OUTPUT周りに関しても同様に[EDIT]で編集可能です。AUXには各Ch,Stereo In, 2Tr-USB,FX Returnを送ることが可能です。MTXに関してはAUX,SUB,Masterを送ることが可能です。
SUB Gr MasterにはHPF+4Band Parametric EQ,Comp Gateが標準装備され、AUX,MTX,Masterには31 Band Graphic EQに加えdbxのAFS2が搭載されています。RTAも搭載していますからハウリングなどの対策も楽チンです。
Stereo MasterはBrowser上のMaster Faderの後にさらに本体にノブが搭載されています。ここで最終的なATTを決めるイメージでしょうか。
Power AmpのVolume knobと同じような役割と思ってもらって良いと思います。
Ui24RはHAも含めフルリコール可能です。HAの設定は[MIX/GAIN]のボタンでアクセス可能です。こちらでは増幅率(-6dB…+57dB)+48V,Phase, Input Delayの設定が可能です。
また、channelのHAという捉え方と共に、INput1の増幅率の決定も可能なようにCH1 ... 20の後にはHW1 ... 20までのFaderが並びます。Patchの変更が可能なので「どうパッチングしたかは忘れたけど、とりあえずInput5に繋がったマイクに+48Vをかける」みたいな時に混乱しなくて済みます。
+48Vといえばファンタムをかけた瞬間と解除した瞬間から数秒間はHA Gainを操作できないようになっています。
Chの数字とINPUTの数字がずれている時にはきちんと表記してくれますし、ch selectの状態でHAモードに入れば対応したFaderに対応しますからあまり混乱はないと思います。
FXとAUXはいわゆるSENDS on Faderモードもあり、先ほどの[EDIT]から入るもよし、SOF使うもよし、です。
SUB GroupとVCA Groupには便利な機能が付いています。まずVCAですが、[SPILL]というボタンを押すとそれぞれのVCAにアサインされているChだけが表示されます。通常の表示に戻すには[CLOSE]で戻ります。
SUB Groupに関してはCh Nameを長押しすることにより似たような機能"SUB GROUP SPREAD"が表示されます。
また、各Inputにも[V1],[S3]といったアサインが表記されますので非常にわかりやすくなっていると感じます。
Faderの並びは
Input,
Stereo input,
2-Tr Player,
FX Return,
SUB Group,
AUX/MTX,
VCA Group,
の順に左から並びますが、VIEWSという、表示されるFaderをカスタマイズすることができる機能もあります1。これは非常に便利でした。左からの順番が指定できます。
AUX Masterや使っていないFX,SUB Groupなどを隠しておけるのでタブレット上の左右の移動はだいぶ抑えることができます。
1:ファームアップによりUi12,Ui16も搭載済み。
Sound Impression of Ui24R
さて、実際の音質と操作感に参ります。
今回は18入力くらいのライブに使用する目的でデモ機を借りました(I藤さんありがとうございます!!)。以前使ったUi16だとちょっと入力に不足があったのです。いつもはMic/Line 12 InputにConsoleに8chをadatで入力しています。
で,いざ当日に使い方がわからないではシャレにならないので簡単に使い方の復習(以前Ui12/16は操作したことがあったのです)と予習です。
Ui24Rの電源をいれ待つことしばし、Wi-Fi Indicatorが点灯しWi-Fi Spotとして作動していることを示します。iPad(iOS 7.X)にてSettingからWi-Fiを変更し接続、Chromeでアクセスです。簡単にLoadし画面が立ち上がります。
歯車のマークから基本的なSettingを行い、Channel Planに従ってCh Nameを設定。Keyなどステレオ使用のものもLinkを組み、Viewsを設定し一応音出し確認です。
HAは既述の通りStuder-designed microphone preampとの事です。厳密な試聴比較ではありませんので参考程度にとどめていただければと思いますが、僕の印象としては、同価格帯のsoundcraftの製品と比べて、わずかにですがミッドレンジに密度を感じます。Soundcraftらしいスッキリしつつもしなやかでハリのある,ニュートラルな音質は健在ですがLiveでも使いやすそうな音質に感じました。
[SHOWS]にベーシックなセッティングをSaveし準備完了です。
今回は18回線使用することになっていたのですがVIEWSで一部隠したchもあり、念のためPCを接続しそちらでMeterを監視することにしました。
当日になり,現場入りし早速起動,[SHOWS]からセッティングを呼び出し,Consoleはあらかた準備完了です。時間にして5分位でしょうか。
Ui24RをStageに置こうかConsoleに置こうか悩んだのですが、万が一を考えてConsoleに置きました。現場はホールだったので混信などのトラブルもなく、結果論ですが、Stageに設置したほうが回線も短く、音もよかったでしょう。
別途Wi-Fi Routerを用意しなくてよいので、客席、Stage色々なところでコントロール、確認が可能です。モニターのTuningも回線の準備が出来たところから直ぐに対応可能です。
いつもご依頼いただいている方々だったのですが,今回FoH周りのSpeakerも更新し,新たなシステムでのLiveです。
別段これ見よがしにiPadを操作していた訳ではないのですが、いつもConsoleをStageを行ったり来たりしていた僕が、iPad片手にStage上でモニターをコントロールしているのをみて出演者が「いつも大変そうだなーと思ってみてたんですけど、今はこういうのあるんですねー?」と。
Parametric EQ,Graphic EQ、Compいずれもしっかり効きます。
FoHが新しくなった,というのも大きいと思いますが,HAがしっかりしているというおかげも有るでしょう。Faderを少し動かしただけでその差は明らかです。
Fx周りもLexicon Insideなので言うことありません。
PCでのMeter monitorも正解でした。GR値も表示してくれます。
これはこの手の製品の宿命ですがFullでI/Oチャンネルを表示させるとタブレット1枚では辛いと思います。
MORE ME
Ui24Rの(というよりUiシリーズの)面白い機能としてMORE MEというコントロールが挙げられます。
Input Chの設定に"ASSIGN ME",AUX MASTERの設定に"ASSIGN 'MY OUT'"というのがあります。例えばですが,Vocalの回線をMEにアサインしたらVocal MonitorがMY OUTというわけです。
MORE MEの画面に行くと左にMY OUTにおけるMEの出力値とそれ以外(BANDと記載されています)の出力値が表記されており中央にスライダーがあり,上下にレベル・コントロールできるようになっています。
「これはイイ!!」と関心したのには理由がありまして,出演者にタブレットなどを渡してモニターの微調整をコントロールしてもらうことが可能ですが,
- 中央のスライダーだけをいじってもらうことになるので誤操作が少ない。
- 自分(ME)の音量を上下させるだけでなくBANDの音も下がり上がりするので,音量をどんどんあげていく,というイタチごっこになりづらい
特に後者に関しては秀逸なアイデアで,音が聞こえづらいときに人間はほしい音のVolを上げがちです。
もちろん悪いことではないのですが,出力システムは無限dBの出力を持っている訳ではありませんし,ハウリングなどの危険性もあります。
程度問題で「邪魔をしているものの音量を下げる」というアプローチも必要になりますが,MORE MEはこれを簡易的にですがイージーオペレーションで行ってくれます。
As Audio Interface
今回は試さなかったので簡単な紹介になりますが,USB Audio interfaceとして機能します。
DAWとUi24RがあればコンパクトながらDAW Playbackの環境が構築可能ですし,Liveを録音しておけばリハ前に簡単な確認が行える等マイナスにはならないでしょう。
20180227追記
ご購入いただいた方が、早速Live録音に使用してみた、とのことで8 tracksほどのMulti Track Dataを送ってくれました。自分で録音したものではないのでマイキングなどの詳細はわかりかねますが、その分ニュートラルな試聴が可能だと感じたので追記します。
まず、Interfacaeとしての機能を見ていきましょう。
前述の通り32ch in/32OutのInterfaceとして認識されます。
I/O PointはPost HA、Pre Proseccingです。
Ui24Rの信号とPC側の見え方は下記のとおりです。
Ui24R output | PC in | |
Master | L | Ch 1 |
R | Ch 2 | |
Aux | 1 | Ch 3 |
2 | Ch 4 | |
... | ... | |
7 | Ch 9 | |
8 | Ch 10 | |
Ch(=HA) | 1 | Ch 11 |
2 | Ch 12 | |
... | ... | |
19 | Ch 29 | |
20 | Ch 30 | |
Line in | L | Ch 31 |
R | Ch 32 |
詳細は取扱説明書をご参照ください。
録音、という観点から見たときにはちょっと不親切なアサインな印象ですが、Mixerという観点から見るとそこまで違和感もありません。
Interfaceとして使用なさる方はご注意ください。
DAW->Ui24RのInputは[SETTING]の[PATCHING]で変更可能ですのでMulti Trackでのカラオケの再生も可能です。会場の音響の差などをTrack単位で調整可能です。
さて音質ですが、滑らかで靭やかな印象です。自然でいてかつEQを施してもきちんと反応してくれます。録音時のマイクアレンジも良かったのでしょうが、良いマイクの性能を引き出すHA、ADもしっかり作られていることを感じます。STUDERが開発に関与したというのも頷けます。
Interfaceとして捉えた場合にはUi24Rはch単価がかなり安価な部類に入るとと思いますが、その性能の高さには驚きを覚えます。僕がスタジオで録音に使用している高級HAとの価格差はもちろん感じますが、そのHAはUi24Rが3台ほど買えるものです。CH単価で考えるとコストパフォーマンスの軍配は明らかにUi24Rに上がります。
拡張性には乏しいですが、程よい規模のLiveをそのまま収録可能です。
Afterwords
この機能が搭載されてこの価格,となるとちょっとすごいな,という印象です。
カフェや店舗等の固定設備なども導入にももってこいではないでしょうか
date:
checker:Takumi Otani
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