sE electronics
RNT
今回見ていくのはsE electronicsのRupert Neve Signature seriesの真空管マイク,RNTです。NAMM2018直前にreleaseされたマイクでsE x RNDコラボの第3段です。発売間もない製品を快くデモさせていただきましたHook Upのn美さん,いつもありがとうございます!
レビューで真空管マイクを取り上げるのは初めてですね。早速見ていきましょう。
Product Overview of RNT
真空管マイク,といえば皆さんはどのへんのマイクを想像するのでしょうか。パッと浮かぶところですとAKG C12,SONY C-800G/9X,Chandler Limited REDD MICROPHONE,Soyuz Microphones,Neumann,あとMojave Audioあたりのシリーズでしょうか。あ,あとTELEFUNKENも外せないブランドですね。
もちろんsE ElectronicsもGEMINI II,Z5600aIIという真空管マイクを製造しています。
僕は真空管マイクの大ファン,というわけではないのですが,真空管特有の音抜け,存在感を持っているものが多く,気軽には使えないながらも肝のパーツに使うとかっちりハマることが多い印象です。
さてRNTのspecと参りましょうか。
- Capsule
- Handcrafted 1" diaphragm true condenser
- Tube Complement
- 1x 12AU7/ECC82
- Polar Patterns
- 9 (omni, cardioid, figure-8, plus 3 steps between each)
- Frequency range
- 20 Hz ... 20kHz
- Sensitivity
- 16 mV/Pa (-36 dB)
- Gain
- -12 / 0 / +12 dB, switchable
- Max SPL
- 151 dB
- Equivalent Noise Level
- 18 dB(A)
- Dynamic Range
- 133 dB
- Signal to Noise Ratio
- 76 dB
- Low Cut Filter
- 40 / 80 Hz, 12 dB/oct, switchable
- Electrical Impedance
- 30 Ohms
- Recommended Load Impedance
- >2k Ohms
- Connectivity
- 3-pin male XLR connector (floor box)
- Microphone Dimensions
- Diameter: 62 mm, Length: 240 mm
- Microphone Weight
- 989 g
- Floor Box Dimensions
- 356 x 135 x 100 mm
- Floor Box Weight
- 3,905 g
真空管は12AU7が使用されています。指向性は無指向,単一指向,双指向の3種類に加えそれからの中間がそれぞれ3つの9パターン。数学的には単一指向は無指向と双指向の平均の状態ですから無指向と双指向の間を9段階で設定可能とも解釈できます。です。ワイドカーディオイド,ハイパーカーディオイドなどの設定も可能です。
推奨負荷インピーダンスが2kオーム以上とマイクに対しての入力Zにしては高めの設定な印象ですが,最近のHAの傾向からするとむしろ一般的でしょうか。出力Zは30Ωなので通常の600Ωあたりで受けても問題はないと思います。Audio InterfaceのHAでPADが搭載されていない場合なども有効ですし、ノイズの観点からもマイクに近い所で増幅できるのは音質的にはプラスですね。
届いたデモ機は製品版と同じ状態で届きました頑丈な黒いケースに入っています。内容物は
- マイク本体
- パワーサプライ
- ケーブル x2種類
- サスペンション
です。
Sound Impression of RNT
さて実際の音に参りましょう。今回は色々なセッションで試すことができました。
Vocal Recording
歌というよりは掛け声、という方が正確です。10数名の掛け声を録音していくsessionがありちょうどよい、と思って使用しました。
10数名と書きましたが話し合って1名ずつ録音することになりました。女性の方が少し多かったでしょうか。
基本的に全て同じ内容を録音していきます。
Power Supply側のGAIN設定は0dBに、HPF Freqは80Hzに設定しました。指向性はもちろんCardioidです。
付属のサスペンションは使用せずにEnhanced Audio M600を使用しました。理由は、いつもホルダーはM600を使用しているので比較の観点からは今回もM600を使うべきかなというのと(今回は試していませんが)付属のサスペンションよりはM600の方が好印象になることがほとんど、という理由です。
ただ、M600の対応内径ギリギリです。ちょっとコツがいるかもしれません。
またマイク重量が1kg弱ありますのでマイクスタンドもしっかりしたものの方が良いでしょうね。M600と合わせると1kgを超えます。
さて音質は非常に滑らかでコシがりもっちりした印象です。Rupert Neve氏が携わってきたAmekなどと同傾向です。Focusriteは少し違うかもしれませんね。REDシリーズはまだ近い気がします。ISAはさほど似ていないでしょうか。AMEK Pure Path range Channel in a BOXやSystem 9098 CLの方が近い印象です。
第一印象はその滑らかな中域に耳が行くと思いますが、10名の声を重ねていっても飽和することなくハンドリングしやすい印象です。
Ds Recording
なんの根拠もなく「Dsの録音に向きそうだなぁ」と思ったのでKickに使用してみました。もちろん In-Kickではなく Out−Kickです。
大体いつもの場所に設置しました。Power Supplyの設定は
- Direction=Cardioide
- Gain=-12dB
- HPF Freq= OFF
です。
いつもと同じoutboard channel stripを使用しましたが、やはりEQのポイントなどは違います。
しっかりした中低域が収録できます。いつも使用しているマイクも結構満足していたのですが、中域の密度感が違うという感じでしょうか。
Bass Amplifier
ベースアンプの収録もあったので使用してみました。
Power supplyの設定はKickの時と同じです。
HAはKickの時とは別のものを使用しました。
Bass Lineはベースアンプ本体のアウトを利用しました。Bass自体の音もよく、EQはほとんどフラットだったので問題ないなという判断です。
cabinetは確か、12インチ x2です。ですのでLineに入ってきているsub-Lowはマイクでは若干弱めです。しかし中低域から上にかけてのドライブ感というか、「スピーカー鳴らしてます」感は白眉です。
まだMixは完了していないのですが,MicとLineは6:4くらいになりそうな予感です。
Ambient
Gut GtとQuenaの録音があったのでアンビマイクとして使ってみました。
Gtに2本,Quenaにも2本のマイクを設置し,中間よりややギター寄りにRNTを設置,2つの楽器の音量が同じ位になるような一というイメージです。高さは1mくらいでしょうか。
指向性は双指向性と無指向性で悩んだのですが,両方の楽器にそれぞれOn-Mikingがあるので無指向性にしました。
ささっとGainと取りtest recです。
各楽器の音色確認とマイクの説明を簡単に行い,Soloで音を聴いていったのですが,RNTの回線をブレンドした瞬間のクライアントの反応は非常にわかりやすいものでした。
「これは必要だ!!」とお二人とも音を聴いてアンビマイクの設置理由を納得いただけたようです。アンビにありがちなのが,単体で音を聴いても「ふーん」という感じだが混ぜると「!!」となるというものでしょうか。アンビエントマイクあるある(?)を久しぶりに体験しました。
録音のレビューではないのでsessionの詳細は割愛しますが,順調に進みOne Take OK連発です。
あとはMixing,Mastering! ストレートで熱い演奏をCool downさせないよう進めていかねばと身の引き締まる思いです。
Afterwords
多分いいんだろうなぁ,という予想を大きく覆し,非常に良いマイクということがわかりました。
今回試せていないので予想ですが,Woodbass,Pf,Acoustic Gtにも良いと思います。
高価な部類に入るマイクですが,皆様是非ご検討ください。
date:
checker:Takumi Otani
sE electronics,RNT
ショップページへ