sE electronics
RN17
今回FocusしていくのはsE ElectronicsのRN17です。ペンシルマイクながら大きなトランスを搭載したコンデンサーマイクで、その若干エキセントリックな見た目が記憶に残っている方もいらっしゃるかと思います。
このマイクをレビューの対象にしようと思った理由のもう一点は開発に、モデルにも名を連ねているRN=Rupert Neve氏が関わっている、ということです。Universal AudioのBill Patnumと並ぶ回路設計のレジェンドでしょう。彼がマイクに関わるのは今回が初めてではありません。やはりsE electronicsのRNR1も"RN"を冠しています。
録音のタイミングをあわせてデモ機を借りることが出来ました(Hook Up N美さん、いつもありがとうございます!)。
早速見てきましょう。
Product Overview of RN17
届いたデモ機の箱を見て、感じたのは「デカっ!!そして重たい!!」ということ。梱包を解いてみて中を見てみるとかなりしっかりしたフライトケースにが入っています。更にその中に専用ショックマウントと木箱に収められた本体が入っています。当たり前ですが重量の殆どはフライトケースです。
早速本体を取り出してみると大きなトランスのせいでなかなかの重量があります。320gもあります。ちなみにAKG C451 Bは130gとのことですから2.5倍弱の差です
ここでspecを見ておきましょう。
Spec of RN17
- 指向性
- 単一指向性(RN17に標準で付属)
- 周波数特性
- 20 Hz - 20 kHz
- インピーダンス
- 200 Ohms
- 感度
- 5.96 mV/Pa (-44.5dB)
- 最大音圧レベル
- 131 dB (0.5% THD @ 1kHz)
- S/N比
- 76 dB
- セルフノイズ
- 18 dB(A)
- 動作電源
- Phantom Powewr +48VDC
- 重さ
- 320g
- 直径
- 44 mm (トランスフォーマー)、17mm (カプセル)、長さ:200 mm
Spec of C451 B
主要な部分をAKG C451と比較してみましょう。
- 指向特性
- 単一指向性
- 周波数レンジ
- 20-20,000Hz
- 感度
- 9mV/Pa=-41dBV re 1V/Pa
- インピーダンス
- <200Ω
- SPL
- 135dB /145dB/155dB
- ノイズレベル
- 18dB-A(Aウエイト)
- ダイナミックレンジ
- 117dB max.(Aウエイト)
- プリアッテネーション
- 0dB/-10dB/-20dB本体内スイッチにて切り替え可能
- ハイパスフィルター
- flat/75Hz/150Hz(12dB/octave)スイッチ切り替え可能
- ファンタム電源
- 9 ... 52V (48V推奨)
- 消費電力
- <2mA
- 外形寸法
- φ19mm×160mm
- 重量
- 130g
感度がC451のほうがちょっと高いかな、というくらいでしょうか。まぁ一番違うのは前述のとおり重量です。
コネクターを差し込んで見ましたがコネクターもしっかりした作りになっています。
指向性はカプセルを変更することにより変更可能ですが、本日現在無指向性カプセル以外は生産完了となっております。
あと専用ショックマウントにも触れておきましょう。似た構造のユニバーサルショックマウントが色々ありますが、専用設計ということでトランス部前後を容易に支えることができるようになっています。
Sound Impression of RN17
さて、実際の音に参りましょう。RN17 Stereo PairがあればDsのOverheadなどにも試せたのですが、なかったので仕方ありません。今回はアコギの録音に合わせて試すことが出来ました。アコギだけの録音ではなく、バンドの中でのアコギ、という立ち位置です。いつもは他のマイクを使用するのですが、今回曲の中でアコギとVocalだけになるセクションがあり、いつも使用しているマイクより、もう少しアコギに個性をもたせたかったのです。
HAを変えたり、EQをいじるという選択肢もあったのですが、せっかく手元にRN17があれば使いますよね。早速セッティングしてGain upです。ここ最近アコギに使用していた真空管マイクや、先日レビューしたsE8と比べると感度が低いのでHAをより多めにBoostする必要はありましたがC451などと比べるとさほど変わりはありません。音色ですが、独特の雰囲気をもった素敵な音がします。癖がある、というと言い過ぎです。個性的、というのもちょっと違います。
sE Electrnicsの音質傾向とNeve氏が選んだトランスとが絶妙にマッチした感じと言うんでしょうか。押し出しが妙に強いわけでもなく、ぱっと聴き普通なのですが、何かが足りないわけでもなく、ちょうど良いところに収まってくれる印象です。この「ちょうど良いところ」と言うのはなかなかすんなり行くものではありません。MixingでEQ,Dy、エフェクトなどを使いながらまとまりのある2Mixを作っていく訳ですが、Faderをあげた時に「あ、そうそう!!」と思える状態というのはやはり数少ない部類に入ると思います。
弊社Annex RecordingにはVintage NEVEは流石にありませんが、Neve氏が関わったFocusrite, AMEKなどのOutboardがありますが、少なからずそれに近い印象を覚えます。"NEVEサウンド"というよりは"その傾向を持つ"、位にとどめておいて欲しいですが、スッキリあっさりという方向ではありません。しっかり下味の付いた素材を提供してくれる、という表現が近いもしれません。
試したわけではありませんし、邪推ですが、sE ElectronicsのマイクとRND(=Rupert Neve Designs)のHAを組み合わせると近い音が出るかもしれません。
さて、根拠のない妄想は止めてレビューに戻りましょう。
今回試したアコースティックギターにはぴったりでしたが、他にもJazz Piano,DsのOverhead、E. Gtにも向いていると思います。E. GtはDistortionサウンドというよりはClean, Crunch Soundのほうがハマると思います。Jazz/Blues系とかでしょうか。
あとPianoもいいと思います。ClassicalなものよりはやはりJazzやRockのほうがハマると思います。
単なる" One of Them"ではない部分に使っていきたくなるマイクです。
Afterwords
First Pencile Microphone か、と言われればちょっと違うと思いますが(そもそも"First Pencile Microphone"という概念が存在するのかどうかわかりませんが)、ちょっとVectorの異なるマイクが欲しくなった方には是非試していただきたい製品です。
date:
checker:Takumi Otani
sE electronics,RN17
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