iFi-Audio
iPurifier AC
さて今回見ていくのはiFi Audioが昨年末あたりにリリースしたAC電源アクティブノイズキャンセラーです。以前iPurifier DCという製品をレビューしましたが乱暴に言うとそれのAC版です。
新製品にもかかわらず快くデモ機を手配してくださったS沼さん,いつもありがとうございます!!
Product Overview of iPurifier AC
さてまずはスペックと参りましょうか。
- ノイズ除去:>40dB(>100x)
- サージ保護:最大25,000A@ 8/50uS
- 動作電圧:85V-265V
- サイズ:直径40mm x 長さ100 mm
- 重量:108g
見た目は完全に3極のコンセントプラグです。
ノイズ除去能力が40dB以上というのはなかなかだと思います。仮に100Vのノイズが乗っていたとしたら(ありえませんが)これが1V以下になるということです。あと電圧がユニバーサルに対応しているのもうれしいですね。
ノイズ除去のテクノロジーはおなじみActive Noise Cancellation®です(ノイズ信号と同一の信号を正反対の位相で発生させることによって、あらゆるノイズを能動的にキャンセルする技術)。XLRなどのバランス接続でノイズキャンセルが起こる原理とほぼ同様です。
電源関係のレビューの何処かにも書きましたが電源にノイズが乗るとイイことは一つもありません。ただ,程度問題で機材は動くの問題になりづらい部分ではあります。電源を根本的に対策しようとすると「My電柱」みたいなことになるのかもしれませんし,スタジオ,という拠点の観点からは決して悪くありませんが,どうせなら持ち運べたほうがイイに決まっています。
そういう意味でもAnnx RecordingのC/Rに導入されているKOJO TECHNOLOGY Aray6 MKIIはラックマウントしてある,ということからもポータビリティがあり助かっています。
iPurifier ACは更に可搬性が高いですね。ポケットに入ります。また複数個使用することにより効果の向上が見込めるそうです。
KOJO TECHNOLOGY Aray6 MKIIやiPurifier DCの様にシリアルに接続するするのであれば効果はありそうだな,と素人ながらわかるのですが,パラレルだとやはり「?」な部分が残ります。ただ,ACでの挙動ということもありパラレルでも効果は期待できそう、という気もします。また、空いているコンセントに指すだけ,の手軽さは歓迎ですね。
一般家庭様コンセントだと,2極のコンセントが多いかと思います。iPurifier ACは3pinになりますが、変換アダプタを用いて差してもノイズ除去機能は動作するそうです。ただし、アースが検知できないと、極性判別機能は動作せず、またコモンモードノイズは除去できませんのでご注意ください。
こういった方々のためにiPurifier AC用アースケーブルなるケーブルも販売されております。アースループの可能性もありますので試してみてご判断ください。
Sound Impression of iPurifier AC
さて,実際の音,いや効果に参りましょうか。Annex C/RでKOJO TECHNOLOGY Aray6 MKIIと性能比較しようかとも思ったのですが、微妙にこれらのカテゴリが違っているので止めました。大きなカテゴライズなら同じところに入るのかもしれませんが、メーカーの表示によれば、KOJO TECHNOLOGY Aray6 MKIIは安定化クリーン電源
, iPurifier ACはAC電源アクティブノイズキャンセラー
とのことです。作動もシリアル,パラレルで違いがあるのでちょっと違うかなと。
iPurifier ACを挿したコンセントに近い部分が一番効果があり,遠くになるにつれ効果が薄れていくとのことです。
お借りできたiPurifier AC早速ギターアンプでチェックです。すぐ下のコンセントに挿したり抜いたりしながら比較です。残念なことに違います。まぁ商用電源ですから少なからず汚染はされているだろうとは思っていましたがその通りです。救いがあったのが変化は比較的小さかったということでしょうか。
iPurifier ACを挿すと音質は若干太めの方向に変わり,高域の耳に痛い部分が緩和します。ちなみにアース検知,極性判断は正常,という結果がでました。
さて,一般家屋(=自宅)でも試してみました。マンションですので職場環境よりノイズが乗っているだろうとの予想です。うっかり2極-3極変換を忘れたので自宅のGPC-TQの空いているアウトレットに挿してみました。Pro Toolsのファイルを開き,Reference を再生してみて,抜き挿しです。劇的な変化はありませんがよく聞くと違います。音量が上がり中低域辺りが滑らかになります。何度か抜き挿ししましたが同様の変化ですので間違いないと思います。
高域の解像度も上がりシンバルの音にハリが感じられます。よくできたMixingに対してのMastering Before/Afterというとイメージが近いかもしれません。
高級なEQで処理した感じというか...。PCのコンセントが近いのも影響があるのかもしれません。PCはかなりの汚染源ということなのでしょう。
GPC-TQの回線にAD/DAなども入っていますから総合して改善されたのでしょう。
ちなみに自宅は2極型のコンセントですのでearthはearth端子からearthをとって本体のバナナ端子に接続にしたり,GPC-TQ本体のアース端子に接続しスイッチをいじったりしました。結果,更に静寂感が得られ全体的な解像度が向上しました。Try & Errorは大事ですね。
物事全般的にそうだと思いますが,最初の70%よりも最後の10%のほうが大きなエネルギーを使うというか,こと音の調整に関してはそういった印象があります。
今回iPurifier ACを試して更に前進できた気がします。
そういえば,別のタイミングでKOJO TECHNOLOGY Aray6 MKIIの後の回線にiPurifier ACに挿してみました。幸いにして音は殆ど変化がありませんでした。
Afterwords
スタジオでも恩恵はあると思いますが,専用電源が分離されていない一般家庭のほうが効果は高い(=わかりやすい)と思います。冷蔵庫や電子レンジ,洗濯機,加湿器などは安全ブレーカーを経由して最終的に同じ主幹のブレーカーに接続されているからです。
また,商用電源というものは少なからず汚染されています。真空管アンプなどはこういった汚染が原因でノイズになったりすることも少なくありません。
そんな大げさな,という方もいらっしゃるかもしれませんが,Mxingは深夜が一番音がいいという事実があります。工場などが稼働を停止し電力消費並びに電源の汚染が減少するからです。
Live House等でも有効なアイテムでは無いかと思います。
テクノロジーの発展によりBedroom Recordingということが可能な状況だからこそ録音時の電源環境が後々影響しそうな時代です。
物にもよりますが,エフェクターとほぼ同価格帯の商品ですし,デジタル機器は電源のノイズで誤作動する,という話も聞いたことがあります。
当たり前に使える電源だからこその落とし穴,ですね。電源環境にストレスを感じている方,自宅作業の多いアーティストの方におすすめできるアイテムです。
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checker:Takumi Otani
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