Earthworks
QTC50mp
ずーっと気になっていたマイクです。僕の仕事内容がPAが主だった時期には気にもしていなかったのですが,録音が主になってくるとやはり気になります。earthworks。
ただ,無指向性ってどうなんだろう。扱いづらそうだなぁという印象で特に試すこともなかったのですが,先日ちょっとしたことで無指向性を試してみて「あぁ,使いようによるけどいいじゃない!」と。こうなると現金なもので試してみたくなります。お客さんに頼まれたデモの件もあって借りて試してみました。
Product Overview of QTC50mp
高級感ある木箱に入っています。マイクホルダーも付属です。5/8"に対応しています。
スペックです。
- 周波数特性
- 3Hz ... 50kHz +1/-3dB
- 指向特性
- 無指向性
- 感度
- 30mV/Pa(-30.5 dBV/Pa)
- 電源
- 48V Phantom, 10mA
- 最大許容音圧
- 142dB SPL
- コネクター
- XLR(PIN 2+)
- 負荷インピーダンス
- 600Ω
- 雑音
- 22dB SPL(A weighted)
ここで注目したいのは感度でしょうか,AKG C451Bの感度が9mV/Pa=-41dBV re 1V/Paですから10dBもの差があります。
代理店ページにも
特にレベルの低い音源のレコーディング用に開発された無指向性マイクロフォンです。...
とありますから感度が高いのは当然といえば当然かも知れません。ただそのぶんクリップなどが起きやすくなるわけですが,最大音圧許容が142 dB SPLですから,まず大丈夫でしょう。
Sound Impression of QTC50mp
さて,ホールでピアノやオーケストラ相手に試せればよかったのですが,さすがにタイミング的に無理だったのでDsのOverheadに使用してみました。というか2本だけでドラムを収録してみました。HAのチェックも兼ねていただので純粋にQTC50mpを試した
という訳では無いのですが,参考になるかと思います。ちまみにO/Hはいつもは単一指向性のマイクで狙っています。Dsを叩いてくれたのはMusicSchoolの講師です
今回HAで試したのは
- AVALON DESIGN M2mkII
- Focusrite ISA824
- MILLENNIA HV-3D-8
ちなみにRecorderはAVID ProToolsといきたいところですが,せっかくステレオなのでKORG MR-2000Sにダイレクトに録音しましたFormatはもちろんDIFF 5.6MHzです。
セットアップがめんどくさかったのではなく,高解像度の方が色々わかりやすいだろうな,という単純な理由です。
ダウンコンバーとしてのDSDとPCMの違いなども楽しめます(?)し。
感度が高いのでいつもの感じでGain upするとあっという間にクリップです。1分ほど録音して次のHAへ...を繰り返します。
マイクの場所は完全に固定です。ダイアフラムの間隔は70-80cmくらいでしょうか。ドラマーの頭上やや後ろ,高さ1.8-2m位だったと思います。ステレオバーにはGRACE Design SB-66を使用しました。
録り終わってドラマーと試聴したのですが,その時の感想は大げさに言うと「マルチマイキングが馬鹿馬鹿しく思えてくる。」というモノ。もちろんジャンルを大きく選ぶというのは間違いないのですが,JazzなどのDsであればもう全然OK!という印象です。
ドラマーも「こう叩いた,っていうのがきちんと収録されている。一番ストレスがない音。僕がた叩いているときに聞いてる音に極めて近い。」と。
ただし、後でタムだけを...、みたいな処理はできないので"Dsを演奏できる"ドラマーでないときついのかもしれません。
二人で「高いだけはあるのねぇ。」というある意味残念な,ある意味救いのある結論になりました。
アコースティックな録音には最適なマイクの一つでしょう。
20210416追記
10年の時を経て、QTC50 mpをとあるデモにて試すことになりました。QTC50mp, QTC40mp,DAP ST4006Aなど高級マイクの饗宴とでもいいましょうか。
デモの内容としてはお客さんがQTC40mpをご愛用していたようなのですが、ちょっとだけ色がつく気がする、ということでじゃぁ色々試しましょうよ。ということになりました。
マイクのデモの詳細は割愛しますが、QTC50mpとQTC40mpの違いを印象ベースで記載します。
事前の印象というか、一度聞いたことのある印象ではQTC40はほんのすこーしだけ低域がふくよかになる印象がありました。今回QTC50と比べることによりearthworksのキャラクターの中での両者の違いが見えてきました。
音源とマイクの位置を固定しての試聴ですので客観性は高いと思います。
結果としては、QTC40はやはり音が少し派手になる、QTC50はフラットで奥行き感の描写が優れている、という結論になりました。
JazzのOverheadであればQTC40mpのほうがよいでしょう。Acoustic Gtの収録であればQTC50/40をギターの音色や演奏の方向性に合わせて選んでよいと思います。Orchestraの収録であれば、QTC50mpを選びます
Classical MusicのPf収録ならQTC50、JazzやPopsのPfであればQTC40mpでしょうか。
QTC40もQTC50も無指向性マイクなので近接効果はほぼありません。近接効果を気にすること無くマイキングできるのは大きな魅力です。
Afterwords
タイミングがあえばMR-2000Sのdataを試聴していただくことも可能です。
暇な時にDown ConvertをかけてDSDとPCM,更にPCMでも192kHz,96kHz,48kHz,44.1kHzなどのサンプリングFsの違いなどもチェックできる音源にしておきたいです。お気軽にお問い合わせください。