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M 88 TG

今回見ていくのはbeyerdynamicのVocal mic M 88 TG、あのPhil Collins氏のお気に入りのマイクです(厳密にはM 88なのですが、本国のhttps://global.beyerdynamic.com/m-88-tg.htmlにアクセスすると)M 88と記載されてます。

グリルカラーの違いでしょうか?Specの観点からはM 88とM 88 TGの違いは見当たりませんでした。

Product Overview of M 88 TG

M 88は1962年にリリースされたマイクでダイナミックマイクにもかかわらず、20kHzまで伸びた高域でスタジオでも重宝されたようです。Mike OldfieldがTubelar Bellsを作り上げたUKのThe Manerというスタジオにも複数本導入されていたそうです。

さて、スペックと参りましょうか。

M 88 TGはHypercardioidのHandheld Vocal Micですから比較の意味でもSHURE BETA 58のSpecも記載します。

Spec of M 88 TG

Transducer type
Dynamic
Operating principle
Pressure gradient
Polar pattern
Hypercardioid
Frequency response
30 - 20,000 Hz
Rear attenuation at 1 kHz
> 23 dB at 120°
Open circuit voltage
2.9 mV/Pa (-51 dBV)
Magnetic field suppression
> 20 dB at 50 Hz
Nominal impedance
200 Ω
Load impedance
>= 1000 Ω
Diaphragm
Hostaphan®
Casing
Brass
Connection
XLR, 3-pin, male
Dimensions:
Length
181 mm
Shaft diameter
25.5 mm
Head diameter
48.5 mm
Weight
320 g
beyerdynamic, M 88 TG  周波数応答曲線

Spec of BETA 58

Cartridge Type
Dynamic (moving coil)
Frequency Response
50 to 16,000 Hz
Polar Pattern
Supercardioid
Output Impedance
150 Ω
Sensitivity (at 1kHz, open circuit voltage)
-51 dBV/Pa (2.8 mV) (1 Pascal=94 dB SPL)
Weight
Net: 278 g (0.62 lbs)
Connector
Three-pin professional audio (XLR), male
SHURE BETA 58 周波数応答曲線


感度はほぼ同じですがM 88 TGのほうが、ワイドレンジと言えるでしょうか。

周波数応答曲線を見比べてみても違いはあります。


どちらも高域はブーストされています。BETA 58は6.1kHzあたりにdipがあるのに対して、M 88 TGは緩やかに高域全体が持ち上がっているように見られます(5kHzあたりに僅かにdipはありますが)。BETA 58は4.5kHzと9kHzあたりにPeakがあるという表現が正確かもしれません。

低域側は近接効果の記載もありますが、ある程度近づけて使用したときは、低域のロールオフの違いでBETA 58は200Hz弱あたりに低域のpeakがありますが、M 88 TGは90Hzあたりにpeakがあります。

この辺りは音の違いに大きく影響を与えそうです。

代理店ページにも記載がありますが、

M 88 を使用していた有名なアーティストの中でもフィル・コリンズが使用していたことは多くの人に知られています。
フィル・コリンズはM 88をあまりにも好むばかりか自分の手荷物に入れてある公演から次の公演へ持ち運び移動していたという伝説があります。

とのこと。かなり愛着を持っていたのでしょう。

Phil Collinsの1981年リリースの1st solo albumに収録されているIn the air tonight(邦題 : 夜の囁き)のVocalはM 88で収録されたそうです。前述の通り、コンデンサーマイクが使用されることが多い印象のVocalですが、M 88の性能を物語る一説ですね。

完全な余談でした。

Sound Impression of M 88 TG

さて、今回はPfのChoに使用してみました。何度かご一緒したことのある方で、マイクから少し距離を取ってハーモニーを歌われるのを覚えていたのと、楽譜を見ながらの演奏ですのであまりClose-mikingにはならないだろうと思い近接効果はそこまで大事にならないだろうとの判断です。

いつもはSM58を配置することが多い場所ですが、Spec的には充分にreplacementできるとの判断です。

ハウリングチェックの際に感じたのが距離による低域の変化量がすごい、ということです。Hypercardioidと言う事と、やはりSHUREに慣れていると若干戸惑います。逆にこの近接効果の変化がちゃんと掴めればマイキングのみならず、アカペラなどハンドヘルド使用の際には大きくプラスになると思います。

レスポンスもよく、伸びている高域のお陰でスッキリとしたパートとして収録できました。

ドイツのマイクということもあって、ヨーロピアンな芳醇さを持っている印象でした。

さて、M 88 TGと来ればもう一つ試さないといけないソースがありますね。そうです。Kick drumです。

もともとはVocal micとして開発されているようですが、旧Verの頃からKick用のマイクとしても使用されてきました。

S&R magazineのLive Reviewなどでも欧州のバンドがたまにKickにM 88を使用していた写真があったのを覚えています。

さて、これを試したのは我らがHome、Annex Recordingです。

いつもD112やD12 VRを配置するあたりにマイキングし、Gainを取っていきます。まずマイク自体で歪んでいるような気配は皆無でなかなか使いやすそうな音です。音質はしっとりとしたGentleな印象ですが、控えめ、と言う事はありません。ただ少し腰高というかそう言う印象を受けます。低域が無いと言うわけではなく、通常のKick向け、マイクと比べると低域-中低域のpeak pointがちょっと上にあるといえば伝わりますでしょうか。

その意味では20インチのbass drumsやTom、cajonとかも向いていると思います。

Bass drumの回線は少なからずEQするでしょうからその中でちゃんと音が作れる印象です。他のbeyerdynamicのマイクと同じく中域の解像度が高く、帯域的にもBass amp、Saxにも良いと思います。

Afterwords

Phil Collins氏が愛用していたことは

からもわかります。

M 88 TGは他のArtistのLive映像でも観ることができます。

完全な余談ですが、beyerdynamicは当初スピーカーのメーカーとして設立されました。その後、世界初のダイナミックタイプのヘッドフォンを開発し、その後マイクを開発、販売を開始します。当時の本社はベルリンにあり、同じくベルリンに本社を置くNeumannとは良好な関係にあったそうで、僕の記憶がただしければ、当時beyerdynamicはダイナミックマイクを、Neumannはコンデンサーマイクを作るという紳士協定があったそうです。ドイツらしい(?)ほっこっりする話ですね。

beyerdynamic,M 88 TG 画像

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