WesAudio
ngTubeEQ

今回見ていくのはWesAudio ngTubeEQです。ここ数年のProduct reviewのspanからすると新製品、といっても良い製品でしょう:-)。

Wes Audioのng(next generation)シリーズはPlug-inでHardwareをControlするという製品です。ng500シリーズやng****というmodel(ngLEVELER,ngBusComp,ng76,ngTubeEQ)は、DigitalとAnalogのいいとこ取りの,いわゆるHybrid(="異種混合の")な製品です。

そこに更に真空管を搭載したEQ、早速見ていきましょう!!(O野さん、いつもありがとうございます!!)

Product Overview of ngTubeEQ

いったんSpecと参りましょうか。

Frequency response Normal (green)
5Hz ... 100kHz (-0.5dB)
Frequency response Tube (red)
20Hz ... 25kHz (0.5dB)
Dynamic range
122dB
THD+N Normal (green)
0.0025% (+4dBu), 0.009% (+18dBu)
THD+N Tube (red)
0.04% (+4dBu), 0.016% (+18dBu)
Noise
-93dBu (A-weight)
Crosstalk
-120dB (40Hz), -100dB (20kHz)
Max input level
+28dBu
Max output level
+27dBu
Input impedance
44k ohms
Common mode rejection ratio
70dB
Output impedance Normal (green)
100 ohms
Output impedance Tube (red)
150 ohms
Power consumption (MAX)
45W
Dimensions
135 × 483 × 252mm
weight
8.8 kg

なかなかガチが数値が並んでいますね。

機能を細かく見ていきましょう。ngTubeEQはInducto(=コイル)ベースによる4 band passive full parametric EQです。LF, LMF, HMF, HFのそれぞれの周波数は

LF[Hz]
22, 33, 60, 100, 150, 220, 300, 410, 500, 730, 860, 1k [Hz] (selectable 12 points) / Shelving or Peaking
LMF[Hz]
90, 120, 180, 290, 430, 620, 1k, 1.2k, 1.9k, 2.7k, 3.9k, 4.8k [Hz] (selectable 12 points) / Shelving or Peaking
HMF[Hz]
260, 380, 550, 970, 1.2k, 1.7k, 2.6k, 3.8k, 5.5k, 7.6k, 9k, 11k [Hz] (selectable 12 points) / Shelving or Peaking
HF[Hz]
600, 800, 1.2k, 1.8k, 2.8k, 4.1k, 6k, 8.2k, 10k, 13k, 18k, 28k [Hz] (selectable 12 points) / Shelving or Peaking

となっています。

後述のPlug-inでAutomationも可能ですが、FsをSweepするのはやめておいたほうが良いかもしれません。

Mid bandsもShelving設定可能なのは本機の特徴の一つでしょう。4 bandsすべてをShlvingにして階段のようなEQカーブを作ることも可能です(サウンドは悲惨なものになると思いますが...)。

Knobはtouch senseになっており、触ると値が中央のdisplayに表示されます。shingle knob pushで各bandは単独でbypassが可能です(地味に嬉しい機能です)。ちなみにdouble pushでその都度、CutとBoostが入れ替わり(FsとQは変更されません)、Push & Holdで初期化されます。

またTHD knobを長押しすると Solo band modeになり各バンドそれぞれの影響のある帯域を試聴可能です。Plug-inには比較的搭載されている機能ですがHardwareでも実現されているのは、ありがたいですね。

Gainは±5dB(0.083dB step)と±15dB (0.25dB step)が切り替え可能です(Fine Modeといってよいかと思います。)。

更にQは値の他に、Constant Q と Propotional Qが切り替え可能で, 4 bandsのすべてがShelving/Peakingの切り替えが可能です。

加えて、12, 24dB/oct.(switchable)のHPF(12, 21, 35, 60, 100, 175, 300Hz)/LPF(50, 37, 27, 20, 14, 11, 8 kHz)のactive filterを搭載しています。

ng500でもおなじみのTHD switchingがここではknobでコントロールできるようになっています。

更に、サウンドの好みに合わせて、2種類の出力設定から選べます

Green
音響的な影響を最小限に抑え、よりクリーンでパンチのあるサウンドを実現する電子バランス。
RED
真空管増幅段とトランス・バランス出力の組み合わせ。このセットアップには "IRON PAD"機能が搭載されており、 passive attenuation sectionが安定した出力レベルを維持する一方で、真空管アンプ・セクションとトランス・セクションを積極的にドライブするためにユニットの出力を上げることができます。

この辺の詳細は取り扱い説明書などの記載のBlock diagramのほうが判り易いと思います。

EQ以外にもTubeのサチュレーションなどを活用し質感を変更させることが可能です。

ngTubeEQ自体は、Dual mono, Stereo, Mid/Sideに対応していますが、簡単に切り替え可能で、channel毎にMuteが可能です*1

Dual MonoとM/Sはそれぞれ単独のMUTEが可能です。Stereo ModeではControlはPanelの左側のみ、つまりLeft chで type="text/javascript"可能になり、Right chは自動的に追随します。

また、異なるセッティングを3つ保持しておき比較可能です。また、内部プリセットメモリーに最大100個のプリセットを保存することができます。ハードウェア上でMenuボタン長押しでアクセス可能です。

GCon Manager

ngTubeEQはng(nEXT gENERATION)シリーズの製品と言うことで、Control softwareに触れないわけにはいきません。Wes Audio _TITANのレビューのときにも少し登場しましたが、GConプロトコルに対応した製品を管理するためのソフトで本体のfirmwareのupdateやControl Plug-inのinstall/uninstallなどもGCon Managerから行えます。

「Plug-inでコントロールしない!!」という人(居ないと思いますが)もFarmware updateのためにぜひともインストールしてください。


*1:2024/7/2現在、Firmwareのバグで、Muteにした後、あるknobを回すと音が出てしまう症状が確認されています。代理店に拠れば鋭意修正中途のこと。新製品ですから仕方ありません。Firm upに期待です。

Sound Impression of ngTubeEQ

EQ for FOH Speaker tuning

今回Demo機が届いたタイミングがLive houseのOpeの直前だったので、一番贅沢な方法でまず試してみました。すなわちFOH speakerのtuningです。

おそらく設計者としても想定してない使用方法ですし、この価格のRecording equipmentをわざわざここに使用しなくても良いと思います。

ただ、2 mixが通過する部分に対してtotalに使用するという観点からはそこまでおかしな使用方法ではないと言えます。

会場のシステムのMixer outにseriealで接続しました。取扱説明書によればBypassはHardware Bypassに近い状態になるのでInsert接続の必要はないかなと考えた次第です。

ちなみにですが、会場にはvoltampere GPC-TQが導入されていますので120V環境での試用です。

Front panel 中央やや下の電源ボタンを押すと素敵なIgnition sequenceのあと、起動が完了します。基本的に最後の電源OFFの直前の状態を覚えてくれているようです。

Control softは使用せずに調整を行いましたが特に困るようなことはありません。いつもは会場のDigital MixerでEQしていますが、今回はそこはBypassです。最初ngTubeEQをバイパスせずにGain ±0dB の状態で音を出して見ましたが「?」な印象は皆無で、「通すだけで音が変わる」というようなことはありません。所謂「One Two」を行うわけですが、言ってしまえば4 Band Full Parametric EQなので深いことを考えずにTuningすることにしました。ModeはStereoです。LFからHFまでの周波数が絶妙にずれていることもあり、連続可変でないこともあり、LMFの周波数設定値がLFのそれを下回ったりするなどしましたが、最終的には周波数はLF < LMF <HMF < HFに落ち着きました。ModeはGreenです。

リハの進行状況で若干EQを変更しましたが結構すんなり落ち着いてくれて安心です。

余談ですが、会場到着後、仮設置し、ゴソゴソやっているとLive houseのオーナーがいらして「おーっ?!なんかすごく高そうな機材だねー^^? 音聴く前に、一応値段訊いといて良い?」と笑いながらいらっしゃいました。値段をお伝えすると流石に驚いてらしゃいましたが、本番終わりのときには「コレいくらだっけ...?」と若干真剣な眼差しで質問をいただきました。
「これ(=ngTubeEQ)をFOHのEQに導入するのは流石に贅沢では(汗?」と引き止めましたが、気に入っていただけた部分があるのでしょう。

Total EQ

さて、場所を移して本来の(?)試用と参りましょう。今回も電圧は120VACです。Pre-Mastering前の2mixを通しての試聴です。DataでBefore/Afterができればよいのですが、流石にそれはできません。操作感、音質の印象となりますが、ご容赦ください。

通常Pre-masteringのprocecssで、僕はM/S方式でEQ処理を行うので今回もMid/side modeにして試してみました。実は上記バグはこのタイミングで発見しました。

Plug-inですと重ね掛けができたり、そもそも5バンド以上搭載しているEQもありますが、ここはHardware、最低の使用で最大の結果を出すべく試行錯誤です。EQなんて、HWに限らず、plug-inでもやたらかければ良い、というものではありません。むしろ多少の制限が工夫を生み出すこともあると思います。

さて、かかり具合ですが、しっかりしなやかに効いていますが、多少極端にかけても変に破綻することは少ない印象です。

RED Mode試してみました。なるほど! 真空管を通る事により質感が変化します。

今回はGreen modeのほうが曲にあっていたので、そちらを採用ですが、RED Mode、大変気に入りました!!

Tube section/Iron PADはOutput knobの後段に配置されていますので真空管回路にドライブした状態の信号を入力可能です。つまりOutput knobを+15dBにし、Iron Padを-15dB設定することによりLevelの状態はキープされ、真空管テイストが付加されます。

まぁ+15dBにせずともよいので調整幅があると言えます。

Eq for Kick, Bass & Vocal

さて、Dual modeがあるということは別々の処理ができるということです。となるとMixingの各ChにInsertしたくなりますね。ここではKick, Bass & Vocalに使用してみました。

お借りできたデモ機は1台なので順番に試聴です。Mixingということで録音時にある程度の処理はされている、という前提なのはご理解ください。音を作るための処理、という方向でのEqualisingです。

効き方の印象は先程同じくしなやかです。

BassとVocalにRed mode試してみました。Full DriveしたときのVocalの変化も非常に好きですが、今回もやはりGreen modeのほうが曲に合っていそうです。ただE.Bassは「これはコレでありだよなー」という印象です。特にKickとの関係性がうまくハマったので、別Ver.の完成!とまでとは参りませんが、決して悪くありません。Mixingのリテイクがかかると怖いのでngTubeEQはmix masterには使用しませんでしたが非常に楽しい時間を過ごせました。非常に大きく音作り(質感変更)に貢献してくれそうです。

MixでもPre-Masteringでも使用可能な万能EQという印象です。

Afterwords

さて、Firmupで改善されると期待して要望を書いておきましょう。

Iron modeが独立して使えるとかなりアツいのですが...。とくにDual Modeで...。

M/Sでもかなり有効だと思います。例えばですが、Mid sourceをIron ModeにしてかなりHotな状態にする、そのまた逆も興味深いです。

knobを色々回していけるアナログの楽しさと、Recallablityの融合といってよいでしょう。ngTubeEQに限らず、I/Oの近くにRemote Control可能なHardwareを配置でき、Monitor speakerのSweet spotから動かずにアナログの恩恵を享受できる製品ですね。

決して安いとは言えない価格ですが、しなやかなサウンドが得られる製品です。ngTubeEQに限らないのですがWes Audioの製品はしなやかなで強靭な音がするので僕の好みに合っています。

Red Hot Chili PeppersのライブPAでWesAudioが使用されています!といったことからも優れた製品であることは明らかです。

WesAudio, ngTubeEQ 画像

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WesAudio, ngTubeEQ
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