Vertigo Sound
VSC-2
今回の製品レビューはCompressorです。しかも(?)Hardware!かつ高価な製品です。
プラグインとしてもリリースされている製品です(販売元は異なります)。
価格からもだいぶ期待が持てますね!さっそく見ていきましょう。
Product Overview of VSC-2
前評判で「かなりいいらしい!」「Plugin-Alliance(Brainworx)が乗り気でプラグイン化した」などを聞いていて興味津々でした。
シンプルながらもDual mono/Stereo Compressorとしてのパラメータはすべて備えています。
作動はVCAタイプでdbxやSSLと同じ形式です。専用設計された4つのVCA回路を使用しているとか。
簡単なスペックが本国メーカーサイトにありましたので引用しておきます。
- Stereo / Dual Mono switchable
- Jensen Balanced In. That 1646 or Burr Brown Balanced Out
- Dynamic Range: 115 dB
- Frequency response: 10 Hz ... 70 kHz (- 3 db)
- Max. Output Level: + 25 dBu / 600 Ohm balanced floating
- Signal to Noise Ratio at + 6 dBu = 97 db (20..20 kHz, unweighted, RMS)
- Noise: – 91 dBu (20 Hz – 22 khz – unweighted, RMS) @ 0 db Unity Gain
- Crosstalk between channels: > 100 dB at any frequency
- Power consumption: max 8 Watts
値段もそうですが,Specも完全に業務機ですね。駆動電圧は115VACとのことですが,今回のチェックで100VACで駆動させた時も特に作動に異常はありませんでした。
パネルをもう少し詳細に見てきましょう。
左から中央に掛けてChA/Bが上下に同じレイアウトで配列されています。
- Threshold[dB]
- Lo...Hiが連続可変です。数値の記載がないのがもどかしいですが,耳とメーターを信用しろ,ということかもしれません。
- Ratio
- Soft/2/4/8/10/Brickから選択できます。Soft Modeの詳細は後述します。
- Attack[mSec]
- 0.1/0.3/1/3/10/30から選択できます。
- Release[sec]
- 0.1/0.3/0.6/0.9/1.2から選択できます。
- Make Up[dB]
- 0...+22までが連続可変です。
右には各chのバイパススイッチ,GR MeterとSt/Monoの切り替え,SC Filter(off/60Hz/90Hz)が配備されています。
背面は潔く,コネクター類はIECのインレットとXLRのInput/Outputのみです。
さて,前述のSoft Modeですが最初は「Soft kneeのことなのかな」と思いましたが違うようです。メーカーサイトのCompression Curvesを見ると一目瞭然なのですが,Ratioが入力信号にしたがって可変するカーブです。
ダイナミックレンジの広いソースを纏めるのに理にかなった方法論な気がします。
Sound Impression of VSC-2
さて,今回バンドの録音とPAのの現場でそれぞれチェックできたのでその時の印象を元にレビューします。
Compression of Kick
僕は録音の時にはComp/EQをある程度掛け録りしまうのですが,今回はいつもKickに使っているCompをVSC-2に変えてみました。ここでは117VACでのチェックです。
Dual monoのモードにしていつもどおり設定していきます。Ratio/Attack/Releaseが選択式ですので選択肢には限りがありますが,あまり設定に困るようなことはありませんでした。ゆっくりThresholdを下げていくと反応速度の早いGRメーターが反応を始めます。
SC-Filterがあるのはやはり良いですね。Bypassと聴き比べたのですが,音が締まりぐっと前に出てくる印象です。いつものCompと音質傾向は若干違いながらも違和感なく使用できます。
VSC-2のほうがやはりモダンな音,という印象を受けます。
Compression of Bass
Bassにも使用してみました。ここでも117VACでのチェックです。Lineの回線とMicの回線をDual Monoでの使用です。設定はほとんど同じになりました。
Kickの時に感じた低音のどっしりとした印象はBassの時にも健在です。高域のヌケが悪い,ということではなく,最低域までしっかり伸びている,という印象でしょうか。
そこまで深く掛けていない,というのもあるのかもしれませんが,コンプ臭さは皆無です。この辺は高級機に共通の特徴といっていいのかもしれません。
Compression of 2Mix
バンド出演のPA依頼がありましたのでそーっと持ち込んでTotal Compとして使用してみました。ここでは会場電圧の関係で100VACです。
Console->EQ->VSC-2->X-overという流れです。
関係者も「なんすか?これ?高そうですね」と近寄ってきます。折角なので声を出してもらってbypassと聴き比べると「うおーマジか!」と良さがわかってくれたようです
Output Meterに相当するものが無いのでちょっと不便かな?と思っていたのですが,ConsoleのメーターとVSC-2のGR/Make-upを総合すればだいたい予想できますので思ったほど不便ではありませんでした。
この時はSoft Modeで使用し,GRが2-4くらいになるようにThresholdを設定し,Make-Upを3dBあたり(と思われるところ)に設定しました
Compだけの影響では無いと思いますが,まとまりのある音に貢献してくれていることは疑いようがありません。
Afterwords
スケジュールの関係で,Mixでしっかり試す,という事ができなかったのですが,ご了承ください。
単独ソースの印象も非常に良いですが,Bus CompressorとしてMix Masterに挟みたくなるCompだと思います。
パッと掛けて,しっかりかかってくれる頼もしい相棒と言えるでしょう。
懐具合が悔やまれる価格が,欠点と言えば欠点でしょうか。ただ,良い機材は高価なのは仕方ありません。
ちょっと余談ですが,代理店のページに「VCAのデザインは70-80年代のVCAをベースとした最上なコンプレッサーからの影響を受けており」なる記載がありますが,このコンプとは一体何なのでしょう。気になりますね。
パネルレイアウトというかパラメーターの数値のデザインはapi 2500に近い気がします。実際のところどうなんでしょう
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