Vanguard Audio Labs
V44S Gen2
今回見ていくのはステレオマイク V44Sです。Grammy-Winning Producer & EngineerのBill Schnee氏が笑顔で同社の真空管マイクV13を手にしているwebsiteをご覧になった方もいらっしゃるかと思います。
今回代理店の方と話していて、「デモ機ありますよー」とのご提案をいただき、一番最初にリリースされたV44Sの後継機にて現行品、V44S Gen2を借りて試してみました(Y瀬さん、ありがとうございます!!)。
さっそく観ていきましょう。
Product Overview of V44S Gen2
Vanguard Audio Labというマイクメーカーですが、あまり有名では無いかもしれません。AKGやNeumann、SHUREなどに比べると知名度は低いと思いますし、B&K(DPA)やMicrotech Gefell、SCHOEPS Mikrofoneのように録音業界では定番機だけどSR系ではあまり使用されない、という印象でもありません。比較的新しいブランドなのでしょう。詳細は不明ですが、創業は2010頃のようです。
さて話題をV44S Gen2に戻しましょう。まずはSpecと参りましょうか。
- 形式
- FETコンデンサー
- カプセル・サイズ
- 34mm(デュアルカプセル)
- ダイアフラム・サイズ
- 26.4mm
- ダイアフラム厚
- 3µm
- 回路
- ソリッド・ステート, 電子バランス出力
- 出力インピーダンス
- 200Ω
- 最大SPL
- appx. 135dB
- 周波数特性
- 20Hz ... 20kHz
- 等価ノイズ・レベル
- ≤14dBA (A-weighted)
- S/N比
- ≥80dB (Ref. 1Pa A-weighted)
- 感度
- TBA
- 指向性
- 無指向性/単一指向性/双指向性 (Top/Bottom個別に設定可能)
- 角度設定
- 0° ... 120°(15° Step)
- 出力コネクタ
- Neutrik Male XLR 5ピン
- 仕上げ
- 光沢ニッケル/高光沢ピノ・ノワール塗装
- 重量(マイク)
- 680g
- 重量(ケース収納時)
- 4.37kg
- 寸法(マイク)
- 径52mm、長さ270mm
- 寸法(ケース)
- 430mmL x 320mmW x 153mmH
- 電源
- ファンタム電源48V
- 付属品
- スプリッターボックス
VLSMラージショックマウント
マイクケーブル(XLR 5pin = XLR 5pin)
マイク収納ボックス(木製)
アルミキャリングケース (ロック搭載)
15°刻みで角度の変更が可能で、Top MicもBottom Micも指向性は独立して切り替え可能ですのでXY設定から、Mid-Side収録も容易です。
出力はXLR5pinで5pinのケーブルも付属します。XLR5pin = XLR3pin × 2のケーブルが付属するかと思いきや、5pinの入力をTop/Topφ/Bottomに変換して出力してくれるスプリッターボックスも付属します。
V44SはVanguard Audio Labsの最初の製品でそれをモノラル仕様にしたのが、V4(現行品はV4 Gen2)とのことです。最初の製品がステレオマイク、とはなかなかユニークなブランドという印象です。
届いたデモ機を見るとしっかりしたケースに入っており、木箱もテンションが上ります。
カプセルが34mmと少し大きいですね。通常Large diaphragmは1インチのことが多い印象ですが、弊社コンデンサーマイク(large Diaphragm)のページを見てみるとUnited Studio Technologiesのコンデンサーマイク,TELEFUNKEN Elektroakustikのコンデンサーマイクは1インチより大きいサイズのようです。
スプリッターボックスのpin assignmentですが
INPUT | OUTPUT | ||||
MID | V44S | SIDE | BOTTOM | TOP | TOP Φ |
---|---|---|---|---|---|
2 | 1 | N/C | 2 | N/C | N/C |
3 | 2 | N/C | 3 | N/C | N/C |
1 | 3 | 1 | 1 | 1 | 1 |
N/C | 4 | 2 | N/C | 2 | 3 |
N/C | 5 | 3 | N/C | 3 | 2 |
となっています。TOP Φの端子はtransformer isolatedです。
この配線から判断するとM/S方式の録音の際には、Top Mic= Fig-8でSide、Bottom Mic=CardioidでMidとしての使用がメーカーの想定のようです。
Sound Impression of V44S Gen2
さて、実際の音に参りましょうか。
今回はDsのOverheadとVocalに試してみました。まずはDsのOverheadですが、いつもはSmall DiaphragmのマイクをStero barに取り付けてORTFもどきで使用することが多いです。さて、角度を何度にしようかなと思い15°stepなのでORTFの設定に近い105°にしようかと思いましたが、Centerが50.25°になります。45°と60°の間になり目測になりそうなのでCenterが60°になる120°に設定しました。
高さは2m強くらいでしょうか。他のマイキングも完了させ、Gainを設定していきました。HAはいつものHAを使用しました。あれやこれやを変えるとどれが要因かわからなくなりますからね。
さて、当たり前ですが、いつもと違った音がします。明るく、クリアで音像が大きい印象です。好印象だったので採用です。そのまま録音することにしました。
Playback checkのときに、Drummerも「(Overheadの音、)なんかブライトですね!」と好印象な様子です。
さて、sessionは順調に進み、Vocalにも使用してみることにしました。ステレオマイクを使用してVocalというモノラルソースを録るという状態です。HallでClassical MusicのAriaを録音する、とかですとステレオマイクで録音ということは充分起こり得るのだと思いますが、Studioではなかなか行われないと思います。ただ、V44Sが評判でV4が開発された、という経緯から考えるとモノラルで使用しても充分に良い結果を生んでくれるのでは?と勝手に推測しトライしてみました。
M/S方式でAmbient成分収録しといてもいいかも、とかも考えたのですが、曲調的に違いそうだったのやめました。
Vocal録音の際のHAはPhoenix Audio Ascent Two EQにしました。その後MC77でCompressionしてAD converterという流れです。
Ascent Two EQに関してはそちらのレビューをご覧いただくとして、ここでの音質は、芯のあるしっかりした音、という印象です。Ascent Two EQのHAの音質やEQの影響も決して小さくはないと思いますが、今回の録音にはしっかりハマっています。
VocalとE.Gtを交互に録音していたのですが、E.Gtの録音時に「ここの音、なんか遠い感じが良いよね。」みたいな話になり、これは使えるのでは?とV44Sに入っていたAmbient成分をクライアントに聴いてもらうと「あ、こんな感じです! これで行きましょう! あと(=Mixing時)でReverbかけるよりこの音で録っちゃったほうがいい気がします!」と即採用です。
今回はたまたまですが、今後E. Gtの録音時にambinet mic用意しておこうかな、と思うくらい好印象でした。
いわゆるオンマイキング
ではないので少し距離を感じますがそれでいて芯が失われていない音で曲に非常にマッチしていました。
Afterwords
Pf.のステレオ収録にも非常にマッチしそうですし、Ambient maicとしても使用可能なポテンシャルです。
スタジオの機材リストに追加される日もそう遠くない気がします。
V44Sの3pinがGNDになっているのが意外です。スプリッターボックスを使用する分には問題ありませんが、XLR 5pin = XLR 3pin ×2のケーブルを流用するときにはご注意ください。多くの変換ケーブルは以下のようになっています。
XLR 5pin | Left XLR | Right XLR |
---|---|---|
1 | 1 | 1 |
2 | 2 | N/C |
3 | 3 | N/C |
4 | N/C | 2 |
5 | N/C | 3 |
V44Sに対応させるには
XLR 5pin | Left XLR | Right XLR |
---|---|---|
1 | 2 | N/C |
2 | 3 | N/C |
3 | 1 | 1 |
4 | N/C | 2 |
5 | N/C | 3 |
と結線する必要があります。

date:
checker:Takumi Otani
Vanguard Audio Labs,V44S Gen2
ショップページへ