Steinberg
RND Portico plug-in Bundle(5043 Compressor/5033 EQ)
古くはVL1,VP1に始まりVCM(=Virtual Circuitry Modeling)テクノロジにより多くの傑作を産み出してきたK's Lab.Steinberg nシリーズなどでもおなじみです。
その技術を高く評価した、これまた音響回路設計の天才デザイナー Rupert Neve氏が彼の現在の製品RND(=Rupert Neve Designs)のPorticoシリーズをVCMでPlug-in化することに賛同。RND x Steinberg x K's Labにより誕生したのがRND Portico 5043 Compressor,RND Portico 5033 EQです。
早速その詳細を見ていきましょう。
Product Overview of RND Portico plug-in Bundle
当たり前ですが、RND Portico plug-inはどちらもVST/AU plug-inです。VST3,VST2.4に対応しています。個人的にはRTASにも対応させて欲しかったのですが、まぁそうはいかないでしょうね。後述しますがfxpansionのVST to RTAS Adapter2.1でwrapped plug-inとしてPT上でも使用可能です(Winのみ)。
スペックです。
RND Portico 5033 EQ
- Low frequency band
- 30 Hz - 300 Hz, +/- 12dB
- Low-mid frequency band
- 50 Hz - 400 Hz, +/- 12dB, filter width (Q) 0.7 - 5
- Mid-frequency band
- 300 Hz - 2.5 kHz, +/- 12dB, filter width (Q) 0.7 - 5
- High-mid frequency band
- 1.8 kHz - 16 kHz, +/- 12dB, filter width (Q) 0.7 - 5
- High-frequency band
- 2.5 kHz - 25 kHz, +/- 12dB
バイパスに加えLF/HF,LMF,MF,HMFそれぞれにIN/OUTが可能
RND Portico 5043 Compressor
- Threshold
- -50 dB - 0 dB
- Ratio
- 1.1:1 - Limit (8:1 以上)
- Attack
- 20ms - 75ms
- Release
- 100ms - 2.5s
- Gain
- -6dB - +20 dB
Sound Impression of RND Portico plug-in Bundle
実機と比べるのが面白いのでしょうが、Vintageでは無いので「如何によく再現できているか」というよりは「Plug-inとしてどれだけ使えるのか」と言う部分で見ていければと思います。正直いってしますとハードが無いからというのもあるのですが...。
どこかの記事で見たのですが,RND Portico plug-inとRNDのハードを測定した結果驚くほど一致していたと。
そのせいかもあってRNDのライセンスがとれた,ということもあったようです。ですので非常に似ているのでしょう。
アナログ回路のモデリングですのでインサートしただけで音に変化が出ます。純粋な意味でのバイパスはDAW側で行うことになるでしょう。
RND Portico 5033 EQ
いわゆる5バンドのEQです。今回はKick,Sn,Dsに対して使用してみました。
まずKickです。録音の時にはさほど処理していない感じのソースで試してみます。
90Hzあたりをブースト,高域もブーストして色々周波数を操作してみたのですが,どちらも気持ち良いですね。印象としてはNEVEというよりはAMEKに近い感じがします。
次にSnです。
300Hzあたり1.2kHzあたり,5kHzあたりを中心にいじってみましたが結構対照的なスネアの音が作れます。原音をお聞かせできないのでナンセンスですが言うなれば「タス!」という感じから「カン!」という感じまで。
さて,Dsの2Mixに対してです。
これは面白かったですね。
まず低域(60Hz)位をブーストしてボトムの太さを足しました。次に高域を派手にブーストしてシンバルをやや前に。そうするとハイハットがうるさくなってきたので5kHzをQを狭くして強めにカット。1.2kHzあたりをうっすらブーストしてスネアの質感を調整,などが可能です。
バイパスで比べてみるとコンプをかけた感じとも異なる(まぁ,当たり前ですが)なかなかナイスな感じのDsの出来上がりです。
個人的には,LF/HFはPeakingへの切り替えも可能だと嬉しいなー,という印象です。欲をいえばFilterも欲しかったですね。
非常に音楽的で,ブーストが楽しいEQ,という印象です。
RND Portico 5043 Compressor
さてコンプに移りましょう。
同じくキックからです。まずおもいっきり潰してみました。Ratioは4-5くらいでTHRESHOLD=-50dBでアタック,リリース共に最速という状態です。当たり前ですが,見事なまでに潰れます。
そこからいつものThresholdを上げ,3-5dBほどのGRにしてみました。バイパスと聴き比べるとなるほど音がちょっと豊かになりしまった感じの音になります。
スネアです。
ちょっと深めに掛け,胴の鳴りなどを引っ張りだしてみました。
アタックを最速にしても20mSecなので正直どうかな,と思っていたのですが,思いの外しっかりとアタックコントロールが可能です。
さて,一番印象が良かったがDsへのいわゆるバスコンプレッションです。
浅くかけても良い感じにまとめてくれ,深くかけてもアグレッシブな感じのドラムになります。
RND Portico 5033 EQ + Portico 5043 Compressor
さて,合わせ技です。打楽器系は前述のとおりですが,ベースのライン録音時に掛け取りしてみました。今回はEQ→Compの順番です。DIはCountryman Type85を使用しました。
DAWはCubase,InterfaceはSteinberg UR824です。CubaseはInput Mixerがあるので掛け録りが可能ですね。まぁRND Portico Plug-inがPro Toolsでは動かない,というのもあるのですが...。
Input Mixerに立ち上げ,インサートします。
GainをとってEQで低域と中域をブーストします。100Hzあたりをうっすら,と900Hzあたりやや派手にブーストしました。それにをコンプで叩いて行きます。今回のRatioは2.5:1あたり,Attack=30mSec位だったと思います。GRがMaxで6dBになるくらいでしょうか。
演奏家を含めバンドメンバーが「おーいい音だ!」と。
気に入ってくれたようで早速録音です。
いつもアナログアウトボードを使用して録音しているのですが,今回のPlug-inによるかけ録りもやりやすいですね。何より台数の制限を受けないのがありがたいです。
Afterwords
今回は試せませんでしたが,BassやVocal,アコギなどにも非常に有効なプラグインだと思います。うーん,やはりRTASのVerも作って欲しいですね..。
試聴も可能ですのでお気軽にご来店くださいませ。