Soundelux USA
U195
マイクのレビューが続いて恐縮ですが、今回はサイドアドレスコンデンサーマイクロフォン SOUNDELUX USAのU195をみていきたいと思います。
恥ずかしながらSOUNDELUX USAがBock氏のBock Audioの別ブランドと初めて知ったのですが、Bock氏が関係していると思うと俄然興味が湧いてきます。今回、国内代理店であるabendrot internationalのご厚意によりデモ機をお借りできました(S戸さんありがとうございます!)。
早速みていきましょう。
Product Overview of U195
とりあえずSpecと参りましょうか。
- カプセルサイズ
- 1inch デュアルシンメトリック バックプレートK67タイプ
- インピーダンス
- 200オーム トゥルートランスフォーマーバランス
- アンプ
- クラスA FET/トランスフォーマー、(スイッチンッグサプライ/オシレーターを不使用)
- アンプコントロール
- Fat/Norm、ローカット、パッド
- 周波数レンジ
- 20-16kHz, +/-2dB
- S/N
- 81dB "A"、72dB non-weighted
- Equivalent Noise
- 12dB ("A" weighted) / 23dB (unweighted)
- ダイナミックレンジ
- 111dB
- センシティビティ
- 8mv/Pa
- 製造
- Made in USA
感度がやや低めの設定でしょうか。ノイズセルフノイズは優秀な値を叩き出していますね。
面白い機能がFat/Norm
の切り替えスイッチです。Fatポジションは、10Hz-400Hzをブーストし、ヴィンテージカーディオイドTUBEコンデンサーマイクロフォン特有のローエンドを生み出してくれるとのこと。グラフを見ると低域に寄るに連れBoost量が増えている感じで、Eqとは違った効果が得られそうな印象です。Low CutもNorm(=Flat setting)の低域だけが下がるという感じではなく緩やかに低域に向けてRoll offしているカーブで、非常に緩やかなLow cut、という印象です。Fatとnorm+Low cutを比べると100Hzで10dB以上レベルに差があります。これは結構音作りに積極的に使っていけそうですね。
Fat/Norm,LowCut,Padのスイッチは少し凹んだ場所に設置されていますので精密ドライバー的なSomethingが用意してあったほうがいいでしょう。実際デモ機のスイッチにはボールペンで切り替えた跡が有りました(苦笑)。
最大音圧に関しては、126dB = 0.5% THD、127dB = 1% THDという情報がありますのでこのへんだと思って良いでしょう。
付属品はマイクマウントで、サスペンションなどは別途、となります。
Sound Impression of U195
実際の音に参りましょう。今回運良く録音の現場で試すことができました。使用したのはKick(outside), E.Gt, Vocalです。
まずドラムですが、マウントにはENHANCED Audio M600を使用しました。一応padを入れ、Fat/NormはもちろんFatにHAになどはいつもと同じものです。ちなみにここ(=Kick outside)にはよくMojave Audio MA-201 fetやASTON Microphones Spiritを使用しています。
他のマイキングも完了させ、C/RでGain Check、Equalizingなどを進めて行きます。EQで250HzあたりをCutしたときに見えてきた低域に一瞬言葉を失いました。
非常に太く、かといって鈍いわけではない明瞭な低域が聞こえてきます。EQで低域をBoostしたときのレスポンスも良好でFat Positionの名に恥じない音を出してくれます。決してヌケが悪いわけではなく、太くて滑らかという印象です。
このどっしりとしたKickに支えられるので、ベースも太めの音色でしっかり低域を出していってもマスキングされることはありません。
音決めはスムーズに進みました。
次はE.Gtです。流石に今回はNorm positionにしました。ここにはいつもはC414B-XLSとリボンマイクを使うことが多いのですが、今回はU195とリボンマイクです。大分キャラクターの違いが出そうです。電源ケーブルなどでアンプの音色を決め、マイクを通してどう聞こえるか、の段階になってU195の「抜けは決して悪くないんだけど中低域に密度を感じる」キャラが吉と出ました。
Crunch系のバッキング、Overdrive系のフレーズとすんなりと収録が進んでいきます。
最後にVocalです。
感度が低いかなと思っていたのですが、特に気になりませんでした。
高域がきらびやかに伸びるタイプのマイクではありませんが、前述のとおり抜けは悪くありません。レスポンスが鈍いということもありません。優秀なマイクという印象です。特にEQをかけることもなく、Purple Audio MC77でDyn処理をして問題なく収録は進んでいきます。
今回は試せませんでしたが、Pf, Bass,Tenor Sax, Bariton Sax,Tomなどにもハマると思います。
Afterwords
繰り返しになり恐縮ですが、きらびやかさはありませんが、中低域に密度と艶を感じるマイクです。ピークポイントが中低域に有るというわけではありません(取説に掲載のカーブを見るとむしろPeakは11.5kHz辺りにあります)。
フラットでノーマルなマイクか、と言われるとちょっと違うと思いますが、純水よりも軟水の方が飲みやすかったりするものですから、ちょっと癖が有るくらいが個性となっていいのかもしれません。
もちろんフラットでノーマルなマイクの存在意義を否定するするつもりは全くありませんし、非常に有用でしょう。
しかし、フラットなマイクでEQもろくにかけずに収録するとMixingでの作業は多くなります。可能な音の処理をしておくのが理想だと思いますが、そういう意味でも「楽器の音色にハマる」マイクの存在意義は大きいと思います。
市販のノーマルなマイクが「薄味だなー」と感じている方、一度試してみてください。
date:
checker:Takumi Otani
Soundelux USA,U195
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