Solid State Logic (SSL)
Pure Drive QUAD
ここ最近、周回遅れ気味製品ばかり取り上げている感のある製品レビューですが、今回も遅れ気味のレビューです。2023年に突如としてReleaseされたOutboard HAのSolid State Logic Pure Drive QUADを見ていきましょう。
Product Overview of Pure Drive QUAD
パネルから見ていきましょう
フロントパネルには4つの同じレイアウトが並びます。各chは[GAIN],[TRIM],[HPF]のknobと[+48V],[LINE],[Z Ω],[DRIVE]ボタンが並びます。各機能、可変幅を見ていきましょう
- GAIN
- Push Insert available
- Mic
- +5 ... +65dB (in 6dB steps)
- Line
- 0 ... +30dB (in 3dB steps)
- Hi-Z
- +11 ... +41dB (in 3dB steps)
- TRIM
- -15 ... +15dB (31 steps) / Push Phase invert
- HPF
- 18dB/oct. OUT ... 300 Hz(31 steps/1 step=10Hz)
- +48V
- 48Vファンタム電源を供給します。+48V OFF時にはしばらく点滅します。
- LINE
- Line modeに切り替えます。リアパネルのTRSジャックまたは専用D-Subコネクタからの信号がHA回路に入力され、+48VとZΩボタンは無効になり、入力インピーダンスは22kΩに固定されます。
- ZΩ
- Mic inputの入力インピーダンスを切り替えます。Green = 12kΩ / Dim White = 1.2kΩ / Amber = 600Ω / Red = 400Ω
- DRIVE
- 3つの異なるマイクプリアンプモードを切り替えます。LINEでも有効です。
- Clean Mode : リニアで超低ノイズ、ディストーション・プリアンプで、音源を明瞭かつ細部まで完璧に増幅します。
- Classic Drive : 入力信号を豊かにするために、主に奇数倍音を使用して高調波歪みを導入します。ハーモニック・ディストーションはレベル/ゲインに依存します。
- Asymmetric Drive : Classic Driveモードの代替で、偶数倍音が奇数倍音よりも支配的になります。トランジェントの厚みが増し、ソフトになります。高調波歪みはレベル/ゲインに依存します。非対称ドライブ・モードにするには、DRIVEボタンを1秒ほど長押しします。
Insertを有効にするにはGAINノブを、Phaseを反転させるにはTRIMノブを押します。ノブの上のインジケーターが光ります。InsertはADC回路へ送る信号を切替えます。
左にはHi-Z input、右にはMeterや[StandBy]ボタンなどが並びます。
背面ですが、入力のCombo端子が右に配置され、電源スイッチは左に配置されています。Inputの左に移るとOUTPUTS/INSERT SENDSという記載のXLR maleコネクターが4つ配置されています。これは HA outputs / ADC Insert Sends
と解釈していただければ問題ないかと思います。
Insert ReturnはOutputの上部のDB25(TASCAM pin assign)の1-4で行います。DB25の5-8はLine inputに使用されています。Line InputはCombo jackのTRSとパラレルです。同時使用は控えるよう取説にも記載があります。ご注意ください。
outputsの左にはADCのoutが並んでいきます。AES/EBU(=AES3)とADAT(=S/MUX)です。ADCは192kHz/32bitをサポートします。
さらにUSB type C経由でPC/Macに音声を送ることが可能です。Audio I/Fとして機能します。ただしPC/MacからのUSB Return(=DAW output)はDigital(AES3 or ADAT)のみですのですのでご注意ください。通常AES3、ADATはPure DriveのADCとして機能していますが、この(USB I/F)場合、このAESとADATの端子を出力として使用しますので、ADC機能をフルには使用できません。これらを切り替えるには
- [CLK]ボタンを押しながら電源を投入し、Setting Modeに入ります。
- ch2の[+48V]ボタンを押してAES出力のsourceをADC or USBを切り替えます。
- ch2の[LINE]ボタンで、ADAT出力のsourceをADC or USBを切り替えます。
- 設定を保存するため、通常モードになるまで[StandBy]ボタンをおして、setting modeを抜けます。
Setting Modeにおいて、[+48V]が暗い白色発光の場合が、AESがInternal ADC out、赤色発光の場合がUSB Returnを表しています。ADATは[LINE]が、暗い白色発光の場合にはInternal ADC out、明るい白色発光の場合がUSB Returnです。
TC Electronic BMC-2のようなDigital Input搭載のStudio Monitor Controlerがあれば対応可能でしょう。
MacはCoreAudioをDriverとして機能しますが、Windowsの場合にはDriverが必要です。
また、Macの場合には他のAudio I/Fを使用している場合にAggregate Soundcard機能を使用して使用することも可能ですのでそれも良いでしょう。
Pure Drive Quadの場合には最大12 in(Analog 4+Digital 8) + Digital 12 out(4 AES + 8 ADAT)が使用可能ですがSampling Fsの設定によりADATはS/MUXとして機能するためDigital Outの数は変動します。 こちらに関してはPure Dirve OCTOの場合にも同様で最大入出力数は16 in(Analog 8 + Digital 8) + Digital 16 outになります。
通常状態でもto DAWとADCは出力されていますのでDefault ModeではAnalog out,Digital out, USB outのSpliterとしても使用可能です。
Setting mode
Setting Modeに触れたのでせっかくですがら他のsettingにも言及します。
既述のとおり、Setting Modeに入るには[CLK]ボタンを押しながら電源を投入します。[StandBy]ボタンを押すことで設定を保存し通常のOperation Modeに移行できます。
一旦機能を表にまとめてみました。フロントパネルを見ながらですと判りやすいかもです。
Knobs/Buttons | Ch1 | Ch2 | Ch3 | Ch4 |
---|---|---|---|---|
TRIM | Relay Feedback | AutoPower ON | - | Auto StandBy |
[+48] | Button発光の明るさを減光 | AES OutのADC out ↔ DAW outの切り替え | - | - |
[LINE] | Button発光の明るさを増光 | ADAT OutのADC out ↔ DAW outの切り替え | - | - |
[Z Ω] | Meterの明るさを減光 | Safe Mode | Peak Hold | Auto Standbyの時間減 |
[DRIVE] | Meterの明るさを増光 | - | Meter Release | Auto Standbyの時間増 |
Relay Sequenceは起動シーケンスおよび通常の操作に影響します。フェイズインジケーターの明暗が有効/無効を表します。
Peak Holdは
- Dim White
- OFF
- Green
- 1 sec
- Orange
- 3 sec (Default)
- Red
- 10 sec
です。Meter Releaseは
- Green
- Slow
- Orange
- Standard (Default)
- Red
- Fast
です。
あと困ったときの最終手段Factory Reset
にも触れておきましょう。
ユニットの電源を入れる際に、Channel 1の+48VボタンとChannel 4のDRIVEボタンを同時に押し続け、すべてのZΩボタンが赤く点滅するまで待ちます。
その後、押し続けていたボタンをリリースし、ユニットは自動的に工場出荷時の設定で再起動します。
Pure Drive OCTOはSetting ModeのCh対応が異なります。詳細は取扱説明書を御覧ください。
PUREDRIVEシリーズとして8chのPure Drive OCTOと4chのPure Drive QUADがリリースされています。細かい差を除けばチャンネル数の違いが一番大きな違いです。あとはHPFが固定か可変かくらいでしょうか。
XLogic Superanalogue channleがXL9000KのHAを、E-signature channelがSL4000EのHAを搭載していたように(?)、Pure DriveはOriginのHA回路が使用されています。
Mic inなどのSpecも一部記載します。
Mic In to Insert Send/Output
- Output Z
- 70Ω
- Gain Matching
- ±0.1 dB
- Noise Floor (Unweighted)
- < -95 dBu
(17 dB gain, unweighted, 20 Hz - 20kHz, 150R termination) - Equivalent Input Noise)
- -125.0 dBu
(65 dB gain, A-weighted, 20 Hz - 20kHz, 150R termination) - Frequency Response
- 20 … 20k Hz(&pmt;0.2 dB)
- THD+N Ratio
- 0.0025%
- Crosstalk
- <-105 dB
- Maximum Input Level
- > 21.5 dBu
こちらも充分な数値が並んでいますね。
Sound Impression of Pure Drive QUAD
まず、Pure Drive OCTOをLive RecのHAとして使用したdataを入手しましたので印象を記載します。
以前使用されていたHAとはそれなりの価格差が有りますので単純に比較するのも気の毒ですが全般的に音の密度感が上昇しました。Clean Modeでの録音ですがワイドレンジなSSLのサウンドにもっちりした成分が少し加わる印象と言って良いかと思います。
さて、他人の褌で相撲を取ったままなのもいかがなものかと思いましたので、Drummerを呼んでチェックしてみることにしました。
電源をいれるとTHE BUS+とくらべ多少シンプルながら、テンションの上がるIgnition sequesnceが走り、起動が完了します。
Kickと、Room2本、といった感じのマイキングにして前述のDrive Modeのチェックです。CleanモードでGainを決定し、同じフレーズを叩いてもらいました。厳密なパラレル録音ではないのですが、傾向を掴むには充分です。ImpedanceはNormal(1.2kΩ)でのcheckです。
マイキング、Gainなどは変更せず、純粋にDrive Modeだけの変更です。Rec formartは96kHz/32Bit Floatです。
一通り録音したあとplaybackを切り替えながら試聴です。印象ベースですが、
- Clean Mode
- その名の通り、Cleanな録音が可能なModeです。SSLを使い慣れている人も、そうでない人も違和感なく使用できる優秀なHAという印象です。
- Asymmetric Drive
- Clean Modeに比べて少しComression感のある音になる印象です。しかも優秀な高級機器を通った感じの音に変わり、音が前に出てきます。Meterの振れ方は同じ印象ですが音がクッキリします。整えられた感じの音、といっても良いと思います。高次倍音の影響なのでしょう。非常に好印象です。
Large format consoleを通したような倍音感の付加、という表現も遠からず、な印象です。 - Classic Drive
- こちらはAsymmetric Driveに比べて音がHotになる印象です。充分にHeatupした真空管を少しSatulationさせた感じでAsymmetric Driveより更に音が前に出てきます。真空管コンプレッサーをしっかりかけた倍音感の付加、といってもよいかと思いますが、実際にはDynは通っていないのでDynamic Rangeは充分に確保されています。これもとても良いです。
Clean Modeに切り替えると、とたんにあっさり感じます。
せっかくなので、StudioにあるSSL XRackのXR621と比べてみよう、という話になり試してみました。同じマイキングのまま回線をXR621に差し替えて録音、試聴です。印象としてはPure Drive QUADのClean Modeの音が非常に近いがXR621の方がより純粋にFlat
を追求している印象です。PureDrive QUADの方がModernで使いやすいように感じました。Flatに録音して後でPlug-inでキャラ付けするのか録音時に処理してしまうのか、の選択肢になりますが、EQやCompのかけ取り、更にはMic ArrangeやHA choiceだって後戻りはできないのでMixing時の選択肢がある程度減らせるというのは良いことだと思います。
ハーモニック・ディストーションはレベル/ゲインに依存
とのことなので、Classic DriveもAsymmetric DriveもGAINをBoostしてTRIMでLevelを制御するという方法で更に高次倍音の制御の可能です。
Classic Drive、Asymmentric Driveともに音に迫力が出るのであらゆるchにおいてDriveを押したくなりますが、まずはCenter lineの楽器から試していくのが良いでしょう。すべての楽器が前に出てくるとそれはそれで、奥行きがなくなります。
Dsを叩いてくれたInknくんもPure Driveを非常に気に入ったらしく、機能をみっちり確認していました。
手っ取り早く違いを聞きたい、という方はSSL UK Pure Driveから、それぞれ
- Clean Mode
- Classic Drive
- Asymmetric Drive
で、収録されたDs trackがダウンロード可能です。
よく伺うLive HouseのRec systemにも Pure Drive OCTOが導入されていますのでDrive Modeの切り替えは積極的に行っていきたいと感じました。
別のタイミングでVocalの録音に使用してみました。先にPure Driveシリーズの音質を確認できていた、ということもあり、いきなりVocal Recの現場に投入です。僕はVocal RecにSolid State Logic XLogic E-signature Channelを使用することが多いので違和感なく録音が開始できます。数回に分けてのRec sessionだったのですがクライアントも違和感を覚えることなく録音は進んでいきました。
Afterwords
SSLはAlpha seriesからVHD™といった形でDriveを手掛けていますが、Plug-insでSaturation系が増えてきている昨今、さすがの着眼点だなと感じます。トランスを切り替えたり、HAを交換する方向の変化は得られないと思いますが、質感のコントロール、特にHarmonicが増えることよる存在感の制御が早い段階でできるのは良いですね。
録音時にAnalog Domainでその処理をある程度完了させておく、という方向で録音を行っている僕としてはとても嬉しい機能です。「コンプの掛け録りは怖くてできない」という声もチラホラ聞いたことがありますが、Driveも慣れるまでは見極めが大変そうです。
こればっかりはある程度、経験がモノを言いそうですが、3種類を選ぶだけなのでそこまでハードルは高くないでしょう。
SSLの密度感,存在感のある音質にさらにヴァリエーションを加えることができる製品です。
date:
checker:Takumi Otani
Solid State Logic (SSL),Pure Drive QUAD
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