Smart Research
C2 Dual/Stereo Compressor
今回みていくのはDual mono/Stereo CompressorのSmart Research C2です。C2を初めて見たのは25年以上前でしょうか。
20数年間ずーっと気になっていた製品です。早速みていきましょう。
Product Overview of C2 Dual/Stereo Compressor
UKの製品群は比較的長寿命な印象があります(それぞれの個体の耐久性
という意味ではなく、同じモデルが長期間生産され続ける
という意味です)。生産完了になっても後継機種にその一部は引き継がれているというか、まるっと新しくなるということが少ない印象です。国民性なのでしょうか。
簡単にですが、Smart Research社について紹介しておきましょう。
About Smart Research Ltd
Smart Research Ltd.は、Alan Smart氏が創業した、イギリスを拠点とする会社で主に音響機器の設計と製造を行っている企業です。氏はLondonのWave Studioでassistant engineerとしてキャリアをスタートし、Digital Audio Systemsのエレクトロニクス・エンジニアとしても活動しました。その後、多くのスタジオやアーティストと協力し、プロのオーディオ業界で多岐にわたる経験を積んできました。
彼はSSL(Solid State Logic)のエンジニアとしても知られており、SSLのスタジオ設備のメンテナンスや拡張、さまざまなスタジオでのサービスを行ってきました。また、Eddy GrantのBlue Wave Studiosでのチーフエンジニアとしても活動し、さまざまなアーティストのプロジェクトに関与しました。
その後、フリーランスのエンジニアとして、Peter GabrielやSir Paul McCartneyなどのプロジェクトに携わり、さらにReal World Studioの設計や建設にも関与しました。彼は独自のカスタム電子ソリューションを開発し、SSLのカスタムメイド事業を展開するなど、オーディオ機器の領域で革新的な活動を行いました。
Smart Research社は、特に、analog effect processorやオーディオコンプレッサーなどのプロフェッショナルオーディオ機器を手がけています。この会社は、音楽制作やサウンドエンジニアリングの分野で高い評価を受けており、その製品はスタジオやライブサウンド環境で使用されています。
Smart Research Ltd.の最も有名な製品の一つは、C2
コンプレッサーです。C2コンプレッサーは、音楽制作におけるダイナミクスのコントロールや音の整形に使用される高品質なコンプレッサーとして知られています。
Smart Researchの看板商品でもあるC2
は20年以上にわたり同じ状態です。もちろん内部パーツのminor changeなどは行われているでしょうが、それでも型番が変わらない、ということはメーカーとしてC2
として販売して問題ない、ということでしょう。Long sellerの商品は良いから
販売され続けている、という側面は否定できません。UAの1176LNもRevisionを変えつつ長い歴史をもち、そのCloneを多く生み出していますし、SSLのG-CompressorもOn-boradでの搭載はもちろんRack版、X-Rack版、500 series、そしてこちらもコピーモデルが存在します。Neve 1073なども同様といって良いと思いまし、outboardに限らず、Microphoneでも同様のことが言えます。
さて、Smart Research C2は少なくとも外観の観点からはSSL G-compのコピーモデルといっても良いかもしれません。RatioやAttack、Releaseも全く同じとはいかずとも意識されている印象です。
今回取り上げたC2 Dual/Stereo Compressorには兄弟が存在します。C2 famiyと表現されていますが、
- C2M Stereo Compressor
- C2のStereo Vrsion。Dual mono使用は不可。
- C2R 2-Channel Expander
- C2,C2Mに対して2chのSlave拡張ユニット。Controlは非搭載。
- C1 Dual/Stereo Compressor
- C2からExt. S/CとCRUSH modeを削除した製品
です。
簡単にPanelをみていきましょう。
Dual /Stereo Compということから同じレイアウトのパネルが左右に配置されています。共通するControlを見ると、
- EXT S/C
- 外部Sidechainを有効化します
- IN
- 回路を有効化します
- THRESHOLD
- -20 … +20 dBm(連続可変)
- RATIO
- 1.5:1, 2:1, 3:1, 4:1, 10:1 and L(=Limit)
- ATTACK
- 0, 0.1, 0.3, 1, 3, 10, and 30 msec
- RELEASE
- 0.1, 0.3, 0.6, 1.2, and 2.4 sec
- MAKE-UP
- 0 … +20 dBm(連続可変)
更に左にStereo Mode駆動のボタンとCRUSH modeのボタンがありますが、 Attack, Releaseの[AUTO]のスイッチやkneeの切り替えスイッチはありません。
メーターはGain ReductionのみですのでLevelは後続機で確認する必要があります。
先程の通り、SSLのG-Compを意識していないというと嘘になるでしょう。もちろんその当時はXLogicはまだ無いので、SSL FX-G384あたりが意識されているのかもしれません。
背面はL/RのInputとOutputに加え、External Sidechain Input L/Rがあります。
メーカーサイトからの一部転載ですが、
- Power
- 100v … 240V AC selectable, 30 watts
- Noise Floor
- Below -104 dBm (flat 20Hz ... 20kHz)
- Distortion
- Below 0.005% (1K/+4 THD 20Hz ... 20kHz)
- Frequency Response
- Within 1/2dB from 20Hz ... 100kHz
- Depth in Rack
- 258mm
- Main Input
- Balanced, impedance 1K8 per leg
- Sidechain Input
- Balanced, impedance 10K per leg
- Output
- Discrete transistor. Above +26dBm into 600 ohm load
- Threshold
- Adjustable -20 … +20dBm
- Make-up Gain
- Adjustable 0 … +20dBm
さて、C2の大きな特徴の一つにCRUSH mode
が挙げられると思います。Normal modeとの違いを見ていきましょう。本国のwebsiteにNormal modeとCRUSH modeの挙動を表すグラフがありましたので掲載します。
Normal mode
CRUSH mode
Normal modeの挙動はよくあるCompressorのカーブという印象です。どちらかというとHard kneeというカーブである印象を受けます。
一方CRUSH modeのカーブは多少の違いはあれど、かなりのHi-ratioでかなりのSoft kneeカーブという印象です。数学的に表現すると連続で上に有界な単調増加関数
と言ってもよいかもしれません(Limitは少し違うかなというカーブですが)。
CRUSHは押しつぶす、砕く、圧搾する
という意味を持っています(因みにCRASHは衝突する
)が、その名の通りのカーブと言って良いでしょう。
誤解を恐れず表現するとCRUSH modeはかなりのsoft knee curveを持つLimiter
と表現しても良いかもしれません。
他にC2の性能を表すグラフがありましたので掲載します。
左(上)がS/Nのグラフ、右(下)は周波数特性です。
かなりQuietでCleanなDynamicsといって良いでしょう。
Sound Impression of C2 Dual/Stereo Compressor
さて、実際の音に参りましょう。やはりBus compressorとしての試用はしてみたいですね。あとはCRUSH modeの使い所の確認、せっかくのDual MonoなのでChannelにもinsertしてみたいと思います。
As a bus compressor
いつもSSL XLogic G series Stereo Compressorを使用している部分をC2にReplaceしてチェックです。
過去のsession Fileを引っ張り出してきて叩いて見ましたが、とりあえずのC2の印象としてはしなやかで、かつ、しっかりかかるコンプレッサー
という印象で、SSL G-CompともSSL The BUS+とも、api 2500とも違います。
CRUSH modeはoffでStereoはonです。どちらも3-4dBほど叩く感じにしてSSL G-Compを使用したMix MasterとC2を使用したMix MasterをPT上に並べて切り替えて聴いてみました。GRを大きくすれば個性は判り易いと思いますが、あまり極端な状態での試聴もナンセンスかと思いましたので。
どちらもBritish Dynamicsななせいか、基本は似ていますが、なかなか興味深い結果です。
一番大きな違いを感じるのは低域のPunchです。極端に違うと言うことはありませんが、BassやFloor Tom, Kickの印象が少し異なる印象です。
Total影響が出る部分なのでこの差は大きい様に感じます。
Using CRUSH mode
Total Comp状態でCRUSHボタンを押してみました。
GR値が大きくなり、荒々しく、まさしくCRUSH
してくれます!!奥行き感も少し圧縮される印象です。
飛び道具的使い方もできますが、少し変わった挙動のコンプとしても使っていける印象です。
Ds のRoom MicやHorn SectionのAmbientの回線などには有効な効果を生んでくれそうです。
単純に深くかかっている訳ではなさそうで、中高域に特徴が出る印象です。大人しめのミックスを派手にしてくれるというかそう言う印象を受けます。
これは一旦は押してみて比較する
が正しい気がします。
個人的にはCRUSHはEffectiveな目的のほうが向くかな、と思いましたが、設定次第では通常の2 mixに対しても使っていける印象です。
Afterwords
しなやかで頼れる優等生的なCompressorでありながら、CRUSH modeという強力な飛び道具を持っているという、なかなか替わりの効かない製品であると言えるかと思います。
国内代理店がないのが悔やまれる製品です。
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checker:Takumi Otani