Samar Audio Design
VL37
今回見ていくのはリボンマイクです。新製品案内が来て,何故か見た目が気に入って試してみたくなりました。実際には音もよく,使えるマイクです。さっそく見ていきましょう
Product Overview of VL37
デモ機のスケジュールがなかなか合わず,O野さんにお願いしてねじ込んで貸してもらいました(いつもありがとうございます)。
さて、届いたデモ機は木箱に入っており高級感があります。
先にSpecと参りましょう。
- 周波数特性
- 20Hz - 25kHz(以上)
- 指向性
- 双指向性
- Ribbon Dementions
- 2"x0.250"x1.5 micron
- Sensitivity
- 2mV/Pa
- Output Impedance
- 250 Ohm
- 寸法
- 高さ163mm、直径33mm
- 重量
- 230g
目を引くのは周波数特性でしょうか。リボンマイクで25kHz以上!、最初みたときは15kHzの間違いかと思ったほどです。また、数値は明確にされていませんがSPL値も高くGt AmpやDsにも使用可能とのこと。
あと、マッチングペアが発売されていない理由にどの個体もマッチングペアとして使用できる精度だとか。すばらしいですね。さすがに購入の時期をかえてしまうと使用環境の癖みたいなものがつきますからマッチングは難しいでしょうが、同時期に買って使用していく分にはマッチングペアとして安心して使用できそうです。
あとマイクホルダーもこだわりの製品だとかで、設計者のDr.マーク・フークスマンは、博士号を持つ音響と回路設計の専門家であり、著名なクラシック・ピアニストでもあるとか。確かにこの時点でいろいろ隠されていそうですね。
Sound Impression of VL37
さて,今回デモ機を借りるにあたって,O野さんから「アコギはぜひ試してください!!」と念押しされたのでまずはアコギです。しかも「ガッツリEQしてください!」とのことでした。
マイクのチェックだと本体の音をチェックするのに「EQはしないでください」と言われるならわかりますが,逆だったので思わず確認してしまいました。
比較対象としてAKG C414XLSを立て,一応指向性をFigure-8に,ステレオバーを用い可能な限り近づけて,チェックです。
Levelを揃えてSoloで聞いてみてまず驚いたのがNO-EQの状態でも十分成立しているということです。リボンマイクはやはり高域が落ち込んでいくもの,というイメージがあったので,だいぶ覆されました。もちろんコンデンサーマイクの様にフラットという印象ではありませんが,パッシブリボンマイク,としてとらえた時には充分といえるでしょう。
更にEQを施して(12kHzあたりから上をShelvingでBoost)みたのですが,C414が楽器のありのままの音を出してくれるのに対して,VL37はいらないところを処理したかのような,大げさに言ってしまうとこの時点でそのまま使えるような感じの音です。
EQ臭さもなく,非常に好印象です。
リボンマイクの特徴のひずみ感のないスムーズな高域も健在で,Gtを弾いてくれたktrも,「これは良い!」との印象です。
次にDsです。流石にKickに突っ込むのは気が引けたので,Room Mic的に使用することにしました。比較のマイクをCAD TRION7000に変更してのトライです。
TRION7000がパーカッシブな印象,3kHz当たりのピークを感じる印象ですが,VL37はそれがありません。周波数特性が違うから当たり前だ,ということかもしれませんが,VL37は全体がなめらかに収録できている印象です。
僕はTRION7000よくE.Gtの収録に使用しますが,TRION7000がその辺りの周波数が得意で,VL37はもっとワイドレンジに収録できているというと少しは伝わりやすいかもしれません。
今回時間の関係でE Gtは試せなかったのですが,どこかでぜひとも収録してみたいです。Heavyに歪んだGtから軽妙なカッティングまで綺麗に収録できると思います。
20160122 追記
さて,前回試せなかったE.Gtの収録のチャンスを得ました!(O野さん本当にありがとうございます!)
クライアントに断って実際の収録で試してみました。結論からいうとすごく良いです。
ほとんどの場合,E.Gtの収録にはCAD TRION7000 + AKG C414B-XLSを使用するのですが,それと比べて遜色がない,というかむしろ良いです。同じリボンマイクで見た時に価格差があるので,同じ土俵に上げるのはTRION 7000が気の毒ですが,VL37の伸びのある高域とリボンマイクというダイナミクスのを忠実に捉えることができる,という特性もあって,くっきりした気持ちの良い音が収録できました。
クランチ系のカッティングが非常にしっかりと,耳の痛くない音で収録できました(もちろん多少はEQしていますが)。
あと,今回印象が良かったのがハンドクラップです。経験ある方もいらっしゃると思いますが,ハンドクラップをコンデンサーマイクで収録するとピークばかりでなかなかそれっぽい音にならないことが多いのですが,リボンだからなのかVL37だからなのか扱いやすいハンドクラップが収録できました。
Afterwords
そこまで多くのリボンマイクを試してきたというわけではないのですが,記憶と比べてみても非常に好印象です。癖の少ないリボンマイクで何にでも使える,という表現が僕の中ではしっくり来ます。リボンマイクを検討中の方にぜひ試していただきたいマイクです。
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