Roswell Pro Audio
Mini K47 KD
ハイペースな更新ができました。今回見ていくのはマイクで、Roswell Pro Audioという米国のメーカーです。その製品群のなかで今回はmini K sereisのMini K47 KDを見ていきます。
リリースからは少し時間が経っている製品ですが、国内レビューも少ないようですし、よい機会(デモ機をお借りできました。オタリテックのK本さんありがとうございます!)ですのでチェックしたいと思います。
About Reswell mini K sereis
Mini K47 KDの詳細に入る前に少しmini K seriesの紹介をしておきます。製品名にもmini
とある通り、筐体はH 150 mm × W 44 mmと小型で重量も多少の差はあるものの、300g代です(ちなみにNeumann U87Aiのサイズと重量はH 200mm x diameter 56mm,500gです)。
指向性はside addressのCardioidのみで、本体にPADなどはありません。Cutaway™非共振ショックマウントが付属します。
本日現在(1)、mini K sereisは5機種のline upから成ります。
それぞれの特徴は、
- Mini K47
- Midrange Detail
- Mini K87
- Warm and Neutral
- Mini K67x
- Harmonics and "Air"
- Mini K47 KD
- Huge Bottom
- Mini K47x
- Presence and Character
とのことで、数字の後ろにx
が付いているモデルはトランスの搭載を示しています。また鋭い方はお気づきだと思いますが、K##の数字はNeumannのlineupと同じです。それぞれのオリジナルのマイクを新解釈し、指向性切り替えなどの機能を限定し、筐体のダウンサイジングを実現することによりコストダウンを図ったのでしょう。その目論見はかなり成功していると言って良いと思います。
Product Overview of Mini K47 KD
さて、Mini K47 KD自体にフォーカスし、Specを見ていきましょう。
spec of Mini K47 KD
- カプセル
- 34mm、K47スタイル・シングル・バックプレート
- ダイアフラム
- 3ミクロンマイラー
- 指向性
- カーディオイド
- 周波数特性
- 20 ... 20,000 Hz
- 入力感度
- 3 mV/Pa
- インピーダンス
- 114Ω
- S/N比
- 8 dBA
- セルフノイズ
- 12 dBA
- 供給電圧
- DC 48 ±4 V
- 出力コネクター
- XLRバランス(トランスレス)
- 外形寸法、重量
- 150×44 mm、325 g(マイク本体のみ)
- 付属品
- 専用ケース、専用ショックマウント
モデルにあるKD
はKick Drumとのことで、それ以外にも高音圧の楽器に向いていそうです。
メーカーサイトにもタムやベースアンプ、ブラスセクションの録音にも有効とあります。
Max SPLの記載が無いのですが、KickやTomに使用可能なのであれば130 dB SPLは超えているでしょう(2)。
感度は3 mV/Pa=-50.5dBVです。
参考までにですが、ドラム周りに使用されるマイクの感度です。
- AKG C414-XLS
- -32.8dBV/Pa
- AKG D112(mkII)
- -55.0dBV/Pa
- audio-technica ATM25
- -54dBV/Pa
- DPA 4055
- -54dBV/Pa
- Ehrlund Microphones EHR-D
- -42.0dBV/Pa
- Neumann U 47 fet
- -41.9dBV/Pa
- SENNHEISER e 602 II
- -72.0dBV/Pa
- SHURE SM57
- -56.0dBV/Pa
ダイナミックマイクも含んでいますのでその感度が低いのは仕方ありません。とはいえK47 KDは高音圧仕様のマイクと言って良さそうです。mini K sereisの感度を比較してみると
- Mini K47 KD
- -50.5dBV/Pa
- Mini K47
- -37.1dBV/Pa
- Mini K87
- -37.1dBV/Pa
- Mini K67x
- -38.4dBV/Pa
- Mini K47x
- -38.4dBV/Pa
です。比較する前はK47 KDとそれ以外で10dBくらい違うのかな、と思っていましたが、それ以上ですね。
大音圧のソースに対しても問題なく使用できそうです。特にPADなどがなく、大丈夫なのかなぁと少し調べてみると(Roswellからしてみれば大きなお世話ですが)本国のK47 KD 公式ページに興味深い記載がありました。抜粋です。
KD回路設計
KDは、大口径コンデンサーに求められない2つの特性、すなわち、下流機器(プリアンプなど)をクリップさせずに高SPL音源に耐えることと、亜音速の低域を捉えることに対応するために、新しい回路を開発しました。
出力を下げるには、マイクの入力回路に大きなコンデンサーを追加すれば、確かにヘッドルームは増え、出力は下がります。しかし、大きな容量のパッドは歪みを与える可能性があり、このモデルが求める音とは異なります。
その代わりに、歪みを加えることなく出力レベルを下げるために、回路トポロジーを変更しました。内部電圧の調整により、人工的な減衰を伴わずにヘッドルームを上げることができました。また、低域のフィルタリングを低減するために部品の値を変更しました。
その結果、内部および外部配置の両方で、キックドラム用に特化したマイクが完成しました。
なるほど、内部回路で歪むことは余り気にしなくて良さそうです。
(1):May , 2023
(2):Neumann U 47 fetのMax SPLは137 dB SPL, U 87 Aiは 127 dB SPL(PADあり), AKG C414-XLSは140dB SPL(PADなし)
Sound Impression of Mini K47 KD
For Kick at Live
さて、音に参りましょうか。まずはmodel名にもあるKD、Kick Drumに試してみました。デモ機を借りれたタイミングでLive HouseでのOpeがあったので持ち込んで試してみました。弊社の音楽教室の講師が3名参加している5人編成のバンドのLiveのOpeです。
Liveでも最近はいろんなところでKickに2本の回線を使用するのを多く見かけるようになりました。いわゆるKick-in
,Kick-out
です。Kick-inでアタックを主にcaptureし、Kick-outでそれ以外の部分をcatch upするという手法の恩恵は録音で何度も享受していますので、今回もそのアプローチを取ることにしました。会場の備品としてAKG D112(mkI)がありますのでそれをいつもよりbatter headに近づけてセッティングし、K47 KDはfront head外側の中央に配置しました。
ドラムのsound checkに移り、D112の回線と比較してみると、当たり前ですが、D112の回線はアタックが拾えていますが、その分低域はやや薄く感じます。K47 KDの方は全体的にバランスよく、密度のあるもっちりした音です。EQで少し低域を持ち上げて、軽くコンプを掛けてみましたが非常にレスポンスも良く、リハで試した結果、今回はK47 KDの1本で進めることになりました。K47 KDの出力信号Levelはやや高めな印象でHAの増幅率は+4dB前後だったように記憶しています。
会場のDs kitが良い音であったことも付け加えておきます。
For Pf at Live recording
さて、ちょっと暴挙かもしれませんが、別のタイミングでPfに使用してみました。感度が低いとGainをboostする必要がありますのでS/Nが悪くなりますが、なんとかなるかなと思いましてPlus Oneの選択肢として持ち込みました。
数回Opeを担当したことあるPf+Vocalのユニットで、前回はPfのハンマーあたりを狙ってC451、弦のサステインを拾う目的でC414をPfの横側に配置しました。
今回もハンマーあたりのマイキングは踏襲しつつ、せっかくなので弦の中腹あたり上部と響板下にマイクを配置しました。同じタイミングでMini K67xもお借りできたので、どちらをどちらに配置するか悩みましたが、今回は2 daysで演奏曲目が異なっていたので悩みに悩んで、曲目に合わせて1日目にMini K67x, 2日目にMini K47 KDを使用しました。Pf bottomのマイクはbeyerdynamic M 90 PRO Xです。
曲中のPfのsoloのフレーズなどではこのPf topの回線のFaderを少し上げるといい感じに量感が付加される印象です。Pfのアタック成分はハンマー付近のマイクがしっかり拾ってくれているのでボディを足す、というイメージでしょうか。
Live RecordingだったのでそのDataを後日確認して改めて音質を確認してみました。
所謂「反射板にあたって客席に届く音」をキャプチャーしていますので、全体的にPfの音、という印象です。低域/高域のバランスもよく使いやすい音、という印象です。
感度、Gainの観点からも疑問はありません。Kickのみならず広く使っていけそうなマイクです。Pianoに関してのK67xとの印象の違いですが、K67xに比べてK47 KDのほうがツルンとした印象です。K67xのほうが中域に少し個性を感じます。同じシリーズですがdiaphragmも違いますしトランスの有無など差異はありますので音は違って当たり前です。K47 KDがtransformerlessというのは非常に納得ができる印象で以前レビューしたMojave Audio MA-50などと共通のオープンな印象を受けます。
For Ds at studio
スタジオでのtest rec sessionに持ち込んでみました。
まず、Kickのfront headあたりに配置し収録してみました。先日のLive houseの再検証というイメージです。別に疑わしい感じは無いのですが、聞き慣れた環境で聴いたら新たな発見があるかも、という期待からのチェックです。
今回も非常に印象がよく、No EQ/No Dynの時点ですでに合格点の音を叩き出してくれます。
場所を変えて、オフマイクにしてみましたが充分な低域の量感です。Dsのマルチマイキングは各パーツを切り取った状態ですが、その状態のマルチトラックにこのオフマイクの回線をプラスするとドラムキットとしての纏まりが出る感じです。所謂Glue(グルー)ですね。
この感じですとBass amp,Brassなどの収録もとても良いと思います。あとはタムなどでしょうか。
Afterwords
価格を考えるととんでもないCost performanceのマイクです。KD(=Kick Drum)とありますが、高音圧系でも歪まず、感度も他のmini Kシリーズと同じであればお買い得な製品だと思います。
最初の1本というとK47, K87の方が適しているのかもしれませんが、生楽器の録音が多い方にとっては強くおすすめできるマイクです。
date:
checker:Takumi Otani
Roswell Pro Audio,Mini K47 KD
ショップページへ