Peluso Microphone Lab
P-414
今回見ていくのはPeluso Microphone Lab P-414、コンデンサーマイクです。Pelusoのマイクは結構気になっていたのですが、すぐに買う、といった類いの金額でも無いのでなかなか、触れる機会がありませんでした。
ちょうどお客さんから「P-414が気になっているのだがどうだろうか」、という旨のご相談をいただき、「なら試しましょう!」と今回の運びとなりました。
早速見ていきましょう
Product Overview of P-414
まず、Specと参りましょう。
Spec of P-414
- Capsule Type
- Condenser Pressure Gradient w/ 34mm capsule
- Frequency Range
- 20Hz ... 20KHz
- Polar Pattern
- Hyper-cardioid, Cardioid, Omni, Figure of 8
- Sensitivity
- 12mv/pa
- Impedance
- 200 ohms
- SPL
- 162 dB w/ 20 dB pad
- Equivalent Noise
- 12 dB(A)
- Power Requirements
- Phantom - 48v +/- 4v
- Current Consumption
- > 4.0 MA
- Size
- 114/188mm H x 51mm W x 38mm D
- Weight
- 490g
P-414はAKG C414EB(初期モデル/Brass cupsule)をベースに開発されたということですので、いわゆる Vintage Replicaということになると思います。それを現行品と比べるのも気が引けますが、参考になる部分もあると思いますので現行のC414-SLX/XLIIのSpecも記載します。
Spec of C414 XLS-Y4/C414 XLII-Y4
- 形式
- コンデンサー型
- 指向特性
- 無指向性/ワイドカーディオイド/カーディオイド/ハイパーカーディオイド/双指向性とそれぞれの中間
- 周波数特性
- 20Hz~20kHz
- 開回路感度
- -33dBV re 1V/Pa(±0.5dB)
- 最大音圧レベル
- 140dB SPL(パッドOFF、THD 0.5%)
- 等価雑音レベル
- 6dB SPL(Aウェイト)
- パッド
- 0/-6/-12/-18dB
- ローカットフィルター
- Flat/40Hz(12dB/oct)/80Hz(12dB/oct)/160Hz(6dB/oct)
- インピーダンス
- 200Ω以下
- 電源
- ファンタム DC48V/約4.5mA
- コネクター
- XLR 3ピン
- 寸法・質量
- 幅50×高160×奥行38mm、300g
- 付属品
- サスペンション付ホルダー(H 85)
- ポップスクリーン(PF 80)
- ウインドスクリーン(W 414 X)
- 特性データシート
- 布製ポーチ
- キャリングハードケース
P-414を持ったときの印象からもっと重たいのかと思いましたがさほどでもありませんでした。1.5倍以上の重量感を感じたのですが、僕の気のせいのようです。
指向性切り替えがC414は9種類、P-414は4種類です。
完全に余談というか、もはや僕の趣味ですが、C414の長い歴史を紹介しておきましょう。
C414はC12をご先祖に持つマイクで、
- C12
- 1953 - 1963
- C12A
- 1962
この時点で製品の形状はなんとなく今の形に
杉山勇司さんも愛用のマイクとか - C12B
- Pad:-20dB/0
- C412
- 1960年代後半
指向性切り替え:3種類(Cardioid/Omni/Fig-8)
Pad:-10dB/0 - C414 comb
- 1971
指向性切り替え:4種類(Cardioid/Omni/Fig-8/Hypercardioid)
Pad:-10dB/0 - C414EB(early)
- 1976
ここで現行のC414とほとんど同じ形に
指向性切り替え:4種類(Cardioid/Omni/Fig-8/Hypercardioid)
Pad:-20dB/-10dB/0
HPF:0/75/150 Hz - C414EB(later)
- マウントリングが真鍮製からナイロン製に
- C414EB-P48
- 1980
指向性切り替え:4種類(Omni/Cardioid/Hypercardioid/Fig-8)
Pad:-20dB/-10dB/0
HPF:0/75/150 Hz
+48Vのみで駆動 - C414B-ULS
- 1986
指向性切り替え:4種類(Cardioid/Hypercardioid/Omni/Fig-8)
Pad:-20dB/-10dB/0
HPF:0/75/150 Hz - C414B-TL
- Transformer Less
指向性切り替え:4種類(Cardioid/Hypercardioid/Omni/Fig-8)
Pad:-20dB/-10dB/0
HPF:0/75/150 Hz - C414B-TLII
- 1993
- C414B-XLS/C414B-XLII
- 2004 - 2009
指向性切り替え:5種類(Omni/Wide-Cardioid/Cardioid/Hypercardioid/Fig-8) - C414-XLS/C414-XLII
- 2009 -
C414Bの5つの指向性に更に中間の設定が4つ追加され9つに。
という系譜のマイクです。C12から数えると約70年、C414 combから数えても50年以上の歴史を持つマイクです。
僕がこの業界(Sound Engineering)に興味を持つようになったのは20年以上前ですが、その時にはたしかに現行品はC414B-TLIIだったように記憶しています。またY! Auctionsでよく、C414B-ULSを見かけました。たまにC414EBも出品されていたような記憶があります。
Sound Impression of P-414
既述の通り、P-414はC414EB(early)のカプセルをモデルに作られているようでが残念ながらC414EBが手元に無いのでそれと比較はできません。
デモ/レビューの目的はP-414が如何にC414EB(early)を忠実に再現できているか。
ではありませんので、そのへんは気にせず音に参りましょう。
今回はクドウさん(ex.the sea falls asleep)がご自身の声に合うマイク、ということで予てからいろいろ試してらっしゃったらしいのですが、P-414が気になっている、ということでANNEXに遊びに来てくれました。
デモ機を少し長く借りることができたので、クドウさんがいらっしゃるタイミングの前に動作確認
として楽器に対しても使用してみての印象です。
さて、C414は様々な楽器に使用可能なマイクです。上記進化の過程でHPFが搭載され、Att.も搭載され、最大音圧はC414-XLSの場合、No PADの場合、140dB SPL、PAD=-18dBの場合158dB SPL、P-414に至っては-20dB PAD使用時には162dB SPLもの音圧に耐えることができます。
僕がC414を使用することが多いのが、Tom, E.Gt Amp, Ds O/H 当たりでしょうか。以前どこかに書いたかもしれませんが、C414は無個性なのがその個性、と言われるだけの事はあり、どんなソースに対しても破綻することなく使用可能です。その昔S&R MagazineでBill Schnee氏のセミナーが掲載されていましたが、Dsに対してO/H, Tomすべて414だった記憶があります。
1世代前の414、C414B-XLSとP-414を同じようなマイキングにし、HAやその他、ケーブルなどを同じものに揃えてDAWに録音しました。
感度とそれぞれのPADの値が異なる為、Meterの振れ方を同じにしようとするとHAのGAIN設定は同じにはなりません。HAのGAINがClick式だったため、HAの設定を同じにしてDAW側でLevelを合わせる方向にしてみました。
Levelが大きい方がよく聞こえてしまうのでLevelを揃えて再生です。
ぱっと聞いた感じ、大きな差は無いように感じます。しかし注意深く聴くとP-414のほうがすこーしだけ(英語でいう"Slightly") スモーキーに感じます。
さて、クドウさんがいらしてVocalに使用してみました。単純にVocalだけの録音です。アカペラでフレーズを頂き録音、という感じです。やはり感度が異なるので同じGAIN設定にはなりませんでした。
上と同じくDAWでLevelを合わせて聞いてみます。やはりC414シリーズということもあり極端な差はでませんでしたたが、P-414のほうがやや深みというか味のようなものを感じます。誤解を恐れずいうとC414の無個性な感じとは一線を画す感じ、これがVintageの味、というものなのでしょうか。EQ/Dynなどで絶対に出せない質感、といっても良いと思います。周波数特性だけでなく位相特性なども相まってのP-414の音色
といってよいでしょう。
アコギやPf,E Gtなどにもじっくり試せればよかったのですが、状況的にそうもいきませんでした。ご了承下さい。
僕の予想ですが、
- Acoustic Gt.
- Electric Gt
- Tom
- Overhead of Ds
- Pf
- Choir
あたりにはとても良い結果を生むと思います。
JazzやClassic Rockなどの質感にはとてもマッチしそうです。
C414のリプレイスメントというよりはP-414で録音段階で詰めておきたい質感の調整
が可能な感じです。いわゆるマイクアレンジの際に有力な候補
という感じでしょうか。「無難だからC414」というチョイスをするタイプの方には少し違うかもしれませんが(とはいえC414シリーズのマイクなので問題ないと思いますが)P-414でしか録れない音が有るからP414、というチョイスになると思います。
Afterwords
現行のC414の代わりに買う、というと高く感じまますが、C414-EB(early)の状態の良いものが手に入る
、と考えるととても有力な選択肢になると思います。
こうなってくるとPelusoがリリースしている、他の製品なども気になってきますね...。タイミングが合えばまたレビューしていきますのでお楽しみに。
date:
checker:Takumi Otani
Peluso Microphone Lab,P-414
ショップページへ