PMC (Professional Monitor Company)
PMC 6
今回見ていくのはスタジオモニタースピーカーです。以前twotwo.5をレビューしましたが,サイズ的にはtwotwoシリーズの後継機と行ってよいかと思いますが、モデル名にブランドの名称を冠しています。その意味ではニアフィールドのフラッグシップと言えるでしょう。
早速見ていきましょう。
Product Overview of PMC6
とりあえずSpecと参りましょうか。
spec of PMC 6
- タイプ
- ATL™搭載 アクティブ 2ウェイ・ニアフィールド・リファレンスモニター
- ドライブユニット
- LF PMC 150 mm(6″)studio 6 ドライバー
HF PMC 27 mm(1″)ソフトドームツイーター - ATL™有効長
- 1.8 m
- 周波数特性
- 39Hz - 25kHz (- 3dB @1mフルスペース、軸上)
- 感度
- +4dBu入力信号=98dB SPL @ 1m
- 最大音圧レベル
- 106dB @1m ※
- 最大瞬間音圧レベル
- 118dB @1m ※
- 指向性
- H +/-60度、V +50/-40度(-6dB off axis @10kHz)
- 入力
- XLRでアナログとデジタルのAES3を切り替え可能
- 寸法
- ポートレート H400 × W215 × D372 mm
ランドスケープ H215 × W400 × D372 mm - 重量
- 11.1 kg(1台)
※フルスペース測定から+3 dBとして算出されたハーフスペース値。12 dBクレストファクタの20 Hz~20 kHzピンクノイズ(IEC)、AES2-1984に定める2時間の検査時間
僕の感覚からするとNearfield、というには少し大きいような気もしますが、Midfieldか?と言われると、そう言うにはちょっと小さい気もします。
Specには記載がありませんが、HFとLFはそれぞれ200Wのアンプでドライブされているとのことです。
背面はシンプルでXLRのオスとメスが1つずつ、Ether Connectorが1つ、Optionスロットが1つあります。XLR inputは既述の通りAnalog Line Level入力とAES3の信号の兼用です。AES3はSingle Wire/Quad Speedにに対応していますから192kHzの入力が可能です。XLR outputはAES3のみです。
Ether connectorは制御のために使用します。PMCがSoundAlign™と名付けたweb interfaceで制御が可能でweb browserでspeaker内部のDSPにアクセスして制御します。詳細は代理店ページをご参照いただくとして、ファームアップやセッティングのsave/Load、EQ処理などが可能です。PMC 6は縦置きと横置きでDSPが異なる処理を行うそうですが、この判別を自動/縦/横の設定も可能です。
BrowserベースなのでOSのアップデートなどで対応するアプリが使えなくなった、などということがなく安心です。Speaker本体にもいくつか設定は残しておけるので複数のエンジニアが使用する時にMy settingを呼び出せば瞬時にsetting完了です(物理的な位置の移動などは別ですが)。
Option Slotはデモ機を試した5月現在はまだOption Boardのリリースはされていませんでしたが、おそらくDANTE™には対応させてくるだろ、との見解です。最近話題のイマーシブの流れから、おそらくマルチオーディオ伝送系がオプションとして搭載になるのではないかとの見解は代理店のK本さんと一致しました。あとはRavennaあたりでしょうか。
とするとMonitor Controller的な機能もほしいところです。200Wの出力アンプに、Full Scaleに近い信号を入力した状態での音量をニアフィールドスピーカーの位置でモニターするのは流石に怖いです。
前述のSoundAlign™がUpdateされればそれも可能になるでしょうか。この辺は専用のHardwareがあっても良い気もしますし、SoundAlign™が良くできているので、Monitor controller mode
といったモードが搭載されれば良いかもしば結構便利なのではと、思います。最低、DIM, MONO, Volumeが表示されていれば良いのでスマートフォンでも制御可能でしょう(Wi-FiでPMC-6と接続されている必要はありますが)。
About ATL™
PMCのスピーカーを語る上で外せないキーワードがありますが、それがATL™です。ATLとはAdvanced Transmission Line
です。
創設者の解説によれば
ATL™の役割は,システム全体にサブウーファーを追加したかのようなローエンド特性を拡張することです。ATL™はドライバー・ユニットのコーン紙の裏側で発生した音をエンクロージャーの外に出しているので,そのまま何もしない状態では逆相の音が出てしまい,位相干渉を起こして低域補強機能は成立しません。ATL™から出される周波数帯域は,機種によって多少違いますが,80 Hz以下の低音域が出るように設計されています。エンクロージャー内部は80 Hz以下の逆相成分と80 Hz以上の不要な周波数成分を吸収することができるPMC独自の特殊な吸音材を施しています。このような特殊な機構でATL™のポートからクリーンな正相の低音が出るようなっています。管楽器を想像してください。管楽器は形状変化によって出したい音階を自由に出せます。ATL™は,それを応用したような構造です。
Oliver Thomas / Head of R&D, PMC
とのこと。端的に言ってしまえばbass reflex portの一種ということになるのでしょうか。ただ、ATL™の長さは1/4波長に設定され、長くなればなるほど低い周波数まで再生可能です。PMC 6のATL™の長さは1.8mですから7.2mの波長の周波数ということになります。音速を340m/sと仮定すると340/7.2=47.22...Hzということになります。
PMCのモニターはサイズの割に低域が出る印象があるのですが、ATLもそのファクターの一つです。ただ、不要に増強された低域ではなくソースに入っていてWooferだけでは再生しきれない部分をカバーしてくれている印象です。同サイズのモニターでは再生しきれない5弦ベースのLow-Bの開放弦などもきちんと再生してくれるというと伝わりますでしょうか。
Sound Impression of PMC6
我らがHome Annex RecのC/Rに持ち込んで試聴です。耳の高さとの兼ね合いで横置きのほうが正解な気がしましたが、スペースの問題もあり姿勢を良くして試聴することにして縦置きで試聴です。
Referenceにしているソースを試聴です。何曲か聴いてみましたが文句なしの音です。MTR(Analog or Digital or ProTools)の質感もきちんと表現してくれている印象です。
ちょうど録音した状態のマルチトラックデータがありましたので聴いてみました。音像、解像度共に文句ありません。録音時に掛けたCompのかかり具合がちゃんと分かるというイメージです。
ぽんと置いた状態でこの解像度は驚きです。追い込んで行けばもっと良くなるでしょうからPMCシリーズのポテンシャル恐るべき、です。
先程縦置き/横置きで異なる処理(?)をしている
という趣旨の記載をしましたが、何を処理しているのかはシークレットとのことです。とは言え、何を行っているのか気になります。ですのでSoundAlign™を使用して強制的に横置きモードにしてみました。
数回切り替えて違いを確認したところ、縦置き状態で横置きモードで使用すると、音が少しつまらなく聞こえるというか、艶がなくなったように聞こえます。同席していたK本さんも同意見だったので気のせいではないでしょう。
後日、Dsのテスト録音をこのモニターで行ったのですが同席した方が、「この、モニター良いっすね...。好きだなー。」としみじみ仰っていました。
Dsのテストというよりマイクのチェックと言う部分が大きかったのですが、同じマイクでもマイキングの違いをきちんと表現してくれる解像度には改めて脱帽でした。
Afterwords
余り追い込んでチェックできなかったのですが、それでも充分に良いモニターだということがわかりました。サイズの観点からはコンパクトなスタジオだとPMCシリーズの本領は発揮しづらいかもしれませんが、音響設計がきちんと施されているスタジオであれば非常に良く,かつ正確に鳴ってくれるモニターだと思います。
date:
checker:Takumi Otani
PMC (Professional Monitor Company),PMC6
ショップページへ