KRYNA
Azteca AZM-W
今回見ていくのは拡散材です。ルームチューニングの観点で「吸音がいいのか反射がいいのか」というのは大きな分岐点になる印象があります。
どちらも有効なのですが,吸音は間違えて一部の周波数を吸い過ぎると,他が出てきてしまう
というスパイラルが待っていることがあるので注意が必要です。
Mixingなどでありがちな「聞こえないからFader上げると,他が聞こえなくなって...」というのと似たような印象でしょうか。
以前から吸音のみでルームチューニングを行うことに若干の疑問があった僕にとっては「!」な製品です。
早速見て行きましょう
Product Overview of Azteca
20cm x20cmの階段上の形をしています。素材は再生紙と木片だそうです。
4色用意されており,ゴールド,白色,黒色,ナチュラル(ベージュ)というラインナップです。ゴールド,白色,黒色の3色に関してはナチュラルに塗装をしてあるのですが,その塗料のせいでちょっと仕上がりに差が出ます。
顔の前において声を出してみたのですが,
- Azteca AZM-G
- 音がクッキリする印象。高域のレスポンスが良い。
- Azteca AZM-W
- ナチュラルで個人的にはしっくりきました。
- Azteca AZM-B
- 白色とほぼ同じですがやや高域の解像度が高いかなと感じます。
- Azteca AZM-N
- ナチュラルな仕上がりです。
という印象です。ただ狙ってそういう効果をもたせたわけでは無いのですが,結果的に「価格の順に効果が出るようになってしまった」とのことです。逆でなくてよかったです。
さて,拡散材ということですから基本的には「反射」の部類に入る製品だと思います。
デモ機を持ってきて下さったKRYNAのI戸さん(いつもありがとうございます)ともいろいろ話したのですが,
反射といっても一様反射でないところに拡散の効果がある。
定在波を「吸収」するのではなく,そのエネルギーを分散させるのが重要なのでは?
などと,技術的,かつ学術的な話になって行きました。
固定の仕方ですが,ピラミッドの部分が箱から外れますので外して画鋲で箱を固定,上からピラミッドをパコっと嵌めこむ,という感じになるとのことです。
Sound Impression of Azteca AZM-W
さて,その音に行きましょう。
まず弊社のリハーサルスタジオで試してみました。
モニターからCDを流し4つほど貼り付けて試聴です。一気に4つを取り外してみました。
なるほど,ある状態に比べて中域が減少し少しちりちりした音になります。
ただ,リハーサルスタジオなのでそれなりに遮音,吸音を施してありますから「一般家屋でどうか」ということではわかりかねます。
ですので自宅で試してみました。
壁などは特になにも調整していない部分にぽんとモニターとDAW用のPCが設置してありますので今回のチェックにはなかなか適しているのではないかと思います。
Aztecaのチェックと言うよりは自宅のモニター環境の調整の一部としてAztecaを用いたという方が正確だと思います。
低域(kickやベースの特定の音程)にピークがあるのを何とかしたかったのでAztecaも用いて拡散,吸音などを半日がかりでトライしてみました。
慣れの問題だ,という声も聞こえてきそうですがどうせであれば聞こえているものを信じたいですし,理想なのは"What you listen is what you are mixing."でありたいものです。
まず部屋の3辺を計り,モニタースピーカーの左右の間隔を調整します。以前解体して再設置の際にポンと置いたままだったので大きくずれていました(汗)。
これだけでだいぶ良くなりました。次に高さです。初期状態ではWooferの高さは108cmだったのですが計算に基づいて叩きだした数値は104cm,これは試してみましたが最初の方が良かったので元に戻しました。
さて,次に吸音に手を出してみました。拡散から手をつけても良かったのですが,一番時間が掛かりそうだったので効果がわかりやすい吸音からにしました。
これが意外と難航,まずスピーカーの背面においてみたのですが,音像がこじんまりし精気がなくなってきたので却下,スピーカー下のコーナーあたりも試したのですが,イマイチ。
スピーカーの間の床においてみたところ低域が遅れる印象なのでこれもNG,部屋の後方のポジションも試したのですがさほど効果が感じられなかったので一旦吸音は保留としました。
いよいよAztecaです。とりあえずスピーカーと同じ高さで一時反射を拡散させてみる,というポジションです。
ああ,まぁ変わるよねー,という印象。KRYNAのI戸さんがおっしゃっていた「『このへんは効くだろうなー』というのは外れちゃうんですよ...」というのを思い出し,そのまま高さを変更していくことに。
キタ――(゚∀゚)――!!と言えるポジション見つけました。今回はYくんと一緒にいろいろ試したのですが,高さを変更してくれたYくんも「ここがいいっすね!!」と。リスニングポジションにいた僕だけでなく,その時部屋の壁際にいた彼にもその効果が判ったようです。
今回の効果の印象ですが,
高域がきらびやかになり,キラキラする印象。音像が左右に広がりスピーカーの外からも音が聞こえるかのような音像。解像度も上がりマイナスな要因は見当たらない
というもです。決してセンターが抜けるという感じではありません。
左右に更に何かが加わるという感じでしょうか。ヘッドフォンだとわかる高域の感じがスピーカーだとちょっと失われる,しかし拡散でうまく調整が進めば同じようなところまで持っていくことが可能ではないか,という可能性を感じます。
高域のきらびやかな感じですが,EQでブーストしたのとは全く異なる感じです。
耳が痛いという感じではなく音に活気が出てくる感じです。
設置したり外したりしてたのですが,もうその印象は明らかでした。
ちなみにですがチェックに用いたソースは
- Queensryche / Another Rainy Bight(without you)
- Toto / Gipsy Train
- Toto / 2 Hearts
- Toto / The other side
- Alan Persons / Jigue
です。
で結局,吸音は僕の部屋には合わないという結論に達したので位置調整+拡散でチューニングは終了です。
20140901追記
DAW PCのDisplayの高さを下げ,傾きを少し変えたら室内の縦方向に定在波が発生しました。おそらく今まではDisplayがそれを防いでいたのでしょう。
吸音は避けたかったので今回もAztecaで対策することにしました。
飯をおごってやるから,と後輩をだまくらかし自宅に呼んでの作業です。
せっかくなので(?)定在波を体験してもらうことにしました。ここまで分かりやすい定在波も珍しいので興味津々のようです。
わかりやすくSine Waveを出しっぱなしにしての調整です。
部屋の前後間で発生しているようでしたので,後方の壁にAztecaを貼っていく方向で調整開始です。
スピーカー正面の,いわゆる一次反射あたりは効きそうだなー,と思ってまず2個を縦に少し間隔を空けて設置です。だいぶ和らぎました。
後方中央の対象側にも同様に仮設置してみたが,こちらはさほど効果がありません。さーて,いつもの迷宮に突入です(泣)。
小一時間くらい特に進展が無いまま,半ばやけになり,最初に設置した2個の上に,やはり間隔を空けて1つ設置しました。
1時間ぶりに成果のある設置です。更に良くなりました。
もう2個ほど用意してあったので左後方のコーナーに貼ってみました。更に改善が見られ,ちょうど数も使い切ったので作業完了です。
手伝ってくれたtyk君も,左右対称設置しても効かないのが不思議ですね,と。
みなさんもAzteca貼る時には先入観にとらわれずいろいろな位置試してみてください。高いところに当たりが潜んでいる,というのは共通しているようです。
Afterwords
拡散というものがこういう効果になるとは思っていませんでした。専門的な知識が無いのであくまで予想ですが,通常の反射(一様反射)が壁などで起きて位相を乱すのに対し,拡散は溜まっている音のエネルギーを一様に部屋に拡散してくれるので良い結果をもたらしたのでは無いかと思います。
設置のコツですが,「Try&Error」の感じですね。総じて言えるのは,自分の身長より高いところに設置したほうが良い結果を生むという感じでしょうか。あと2人要ると3倍くらいの速さで調整が進みます。
椅子やソファーがあるとそこで乱反射が起きるので,充分拡散されているのだと思います。むしろ床と天井,壁の上部といった部分のエネルギーを分散させてあげる事が重要なのかもしれません。
やり過ぎるとチャネリングのような部屋ができてしまうのでご注意を(笑)。4-6個くらいで試していくのがいいと思います。