KLARK-TEKNIK
EQP-KT

COVID-19がいまいち収まり切らない昨今ですが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。「製品レビュー書いてないなー」と最終更新を調べると4/17...。決してサボっていた訳ではありません。

2020年も下半期に入ってのレビューはEQP-KT、Rec業界に燦然と輝くEQの名機、PulTec EQ EQP-1Aのコピーモデルです(INKN君、ありがとうございます)。Vintegeが結構なお値段するのに対してこちらは、「大丈夫か?」と疑ってしまいたくなるほどの価格です。

早速見ていきましょう。

Product Overview of EQP-KT

EQP-1AのコピーモデルはEQP-KTの他にもTUBE-TECH PE1C,Wes Audio LC-EQP,Wes Audio _PROMETHEUS(レビューはWes Audio _PROMETHEUS試してみました。)、RETRO Instruments Retro 2A3,IGS Audio RB 500 MERubber Bandsなどいくつか存在します。Wes Audio LC-EQPあたりと比べることができればモダンコピー対決みたいな感じで面白かったのですがタイミングもあり叶いませんでした。EQP-KT単体の製品レビューとなりますがご容赦ください。

さて特徴、Specと参りましょうか。

Audio Input

Type
XLR, 1/4" TRS, transformer balanced
Impedance
>600 Ω, balanced and unbalanced
Max. input level
+21 dBu
Optimum input level
+4 dBu

Audio Output

Type
XLR, 1/4" TRS, transformer balanced
Min. output load impedance
600 Ω
Impedance
<300 Ω, balanced and unbalanced
Max. output level
+21 dBu

System Specifications

Frequency response
20 Hz to 20 kHz, ±1 dB
Distortion (THD+N)
<0.1% @ 1 kHz, +4 dBu
Dynamic range(20 Hz to 20 kHz unweighted)
>101 dB, typical
S/N ratio
80 dB @ +4 dBu In
Circuit
Class-A
Vacuum tubes
12AX7, 12AU7

Filters

Low Frequency
Cut / Boost Section
Boost
0 to 12 dB, shelving
Cut
0 to -24 dB, shelving
LF boost / cut
20, 30, 60, 100, 200 ,400, 800 Hz, selectable

High Frequency Boost Section

Boost
0 to 12 dB, shelving
0 to +10 dB (Broad)
HF boost
3, 4, 5, 8, 10, 12, 16 kHz, selectable
Bandwidth
Q = 1 to 10 (sharp to broad), selectable

High Frequency Cut Section

Cut
0 to -20 dB, shelving
HF cut
3, 4, 5, 10, 20 kHz, selectable

Power Supply

Mains voltage
100 ... 240 VAC, 50/60 Hz
Power consumption
15 W
Fuse
T1AH 250V
Mains connection
Standard IEC receptacle C14

Physical

Dimensions (H x W x D)
88 x 483 x 167 mm
Weight
3.0 kg

オリジナルと比べると周波数のチョイスなどにメーカーの考えが出てきていますね。

勝手な推測ですが、EQP-KTはEQP-1Aのコピーモデル、というよりはEQP-1Aを参考にしたHybrid modelといえるのではないかと思います。というのもMIDAS製のトランスが使用されているなど頑張ってオリジナルを復刻するというよりEQP-1Aのテイストを持つモダン Tube EQという印象を受けます。特に周波数もLow/High Fsがオリジナルに加えて多く追加されているなど、幅広い楽器に使用する前提かなという印象を受けました。EQP-1Aのリリース当時は20Hzや20kHzを再生できるシステムも少なかったでしょうから事実上そこまでは必要なかったのでしょう。

実際の音に行く前にPulTecEQについて少し触れておきましょう。と言っても、

Pultec社(=Pulse Techniques社)はOllie Summerland氏とGene Shank氏が1950年代に..

的な話ではなくPultec EQの肩特性と呼ばれる特性について少し言及しておきます。

Plug-inでPultec EQのコピーモデルが使えるようになって久しいですが、その昔、はじめて見たときには、「周波数を固定してCut/Boost?フラットになるんじゃないの?」と思っていました。現行のいわゆるモダンパラメトリックEQはGMLの創設者、George Massenburg氏の発明が源流だと言っていいと思いますが、その作動原理は、2chで周波数を同じくし、Cut/Boostは逆の設定を行いシリアルで接続するとバイパスと同じ音になる、ということだったように記憶しています(少なくとも数学的には)。そういったEQを多くいじってきた僕にとっては、予備知識無しに見たPultecEQはもはやQuestion mark generatorでした。

別のタイミングで調べていたときにPultec EQの肩特性という記事を見つけ、ほーほー、と。

それ以来積極的に使用しています。もちろんPultecに限らずEQは万能ではありませんし、Modern P.EQのような融通は持ち合わせていませんからPultecの特性がうまくはまらないときもあると思います。特に補正目的で使うとうまく行かないことが多い印象です。積極的な音作りのツール、というEQでしょう。正確なところは調べていませんが、ひょっとしたらGeorge Massenburg氏は「補正目的で使えるEQ」ということでParametric EQを発明したのかもしれません。

肩特性に話を戻しましょう。周波数カーブを測定した図など掲載できればよかったのですが、Web上に素晴らしい記事が散見されるので詳細を知りたい方はそちらをご覧になってください。

挙動ですが、Boostだけ、Cutだけを行うとシェルビングカーブの挙動を示します。ではCutとBoostを両方行うとどうなるか?
ざっくりいうと、Boostが優先されますが、PeakingでCutしたようなカーブになります。すなわち1バンドでBoost/Cutしたにも関わらず、Modern Para EQで2バンドを使用して処理したようなカーブが得られます。またdipポイントの周波数はBoostとCutのバランスで絶妙に変わってきます。まさに耳だけが頼りなEQです。

Sound Impression of EQP-KT

さて、長々書いてきましたがやっと音に参りましょう。Wes Audio_PROMETHEUSの時と同様にKick、Snare、Ds Ambience、Bass、Vocalに掛けてみての印象です。_PROMETHEUSのときのソースとは異なりますが、Mixing前の録音後の状態のソースを利用しました。

ProToolsで新規AUXトラックを作成し、そちらにソースを送ります。オリジナルとの試聴もしたいのでいわゆるパラレルの状態です。AUXのoutputをEQP-KTに接続したI/OのPortに設定、EQP-KTのOutをAUX trackに立ち上げ、レベルを微調整して準備完了です。

この設定にすることでProcessing BypassのみならずHardware Bypassとも比較可能です。特にPultecEQは回路を通すだけでLevelが1dBほど上がる、という特性もあり、Plug-inでも再現しているものが多いようですが、人間は音量が大きくなると、音が良くなったように感じがちですのでその部分も考慮しての設定です。

さて、まずはKickです。僕は録音時にはKickには2本のマイクを使用することが多いので今回はそれぞれ1本づつ、2本Mixした状態の3種類試してみました。通常のMixingでは2本をMixしたAUX trackでEQ/Dyn処理することがほとんどです。

まず通しただけの状態では大きな音質差は感じませんでした。一旦Cut/Boostを0に設定し、EQをONにします。ここでもやはり音質差変化は感じられません。

さて、LF BOOST/CUTの周波数を30Hzに設定し、ゆっくりと、Boostを上げていきます。Kickに重量感が増していきます。一旦6くらいにして、Cutも行います。100Hzあたりがおとなしくなり始め、Cutの程度でDipのポイントも変化しているようです。HF BOOST/CUTを12kHzに設定してつまみを回していきます。同時に二つのノブがいじれるので同じ設定になるまでの時間がPlug-inとは圧倒的に違いますね。

さて、Snareに行きましょう。

SnareはKickに比べてバリエーションが多いDrumになりますね。今回は中域に芯がある気持ちの良いスネアの音でした。この状態でも充分な印象ですが、どこまで音をいじれるかという観点でインサートしてみました。LFを100HzにしてBoostするとやはり重心が下がっていきます。これはこれでありな音です。色々つまみを回してみましたが、大幅に音色を変えることができる印象です。

さて、Bassに移りましょう。このBassはDI経由でのLine収録です。収録時にかる~くEQ+Dynしておいた以外はそのままの状態です。つまみを回すとグイグイ音が変わっていきます。

LF=100Hz,Boost=7,Cut=3-4くらい、HF=3kHz,Boost=6,Cut=8,HI CUT=4KHzにしたところで「!」となりました。Mixingで同じ設定をためそう、と思わず写真を撮ったくらいです。

Vocalでも試してみました。16kHzを少しビーストしてやるだけで程よい抜けが感じられます。

Ds Ambienceですが、今回はDrummerの後ろの低い位置に設置してあったのですが、それに試してみました。LF=30HzをBoostすると、スピーカーに悪そうな低域が持ち上がってきます。

ハードウェアのある意味欠点である、現在有る台数分しか使えないが非常にもどかしく感じます。

Afterwords

印象ベースになりますが、Wes Audio _PROMETHEUSを試してみた時との違いについて少々触れたいと思います。

_PROMETHEUSのほうがもう少しダンピング感、もっちり感のようなものがあった印象です。EQP-KTは少しあっさりしているのかな、という印象です。そういう意味でも既述のEQP-1Aのテイストを持つモダン Tube EQという表現はまんざら外れていないでしょう。

使いこなしに多少の慣れが必要な機材ではありますが、機材は使いこなしてなんぼ、という観点では積極的につまみを回して音作りしていただける機材だと思います。GraphicalなPlug-inと異なり耳だけが勝負になる分、良いトレーニングにもなるでしょう。

実際に真空管12AX7, 12AU7が使用されていますので12AX7/ECC83互換管,12AU7/ECC82互換管から、好みに応じて質感を変更することも可能です。真空管機材はこういったチューニングができるのも楽しみの一つですね。

ただ、ノブはもう少し重たいほうが個人的には好みでした。

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checker:Takumi Otani

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