GRACE design
m802
今回のレビューはHAです。僕が一番興味がある機材でもあるHAは今まで多くレビューに登場してきました。今回はGRACE design m802です。同社にはm801という8ch HAがありますが,イメージはこれにリモート機能を追加したもの,という製品といっていいでしょうか。早速見て行きましょう
Product Overview of m802
GRACE designの高級感あふれるシルバー 2Uのボディです。いわゆるDigital Contolということですので本体にはGAINノブと+48V,PhaseなどのいわゆるHAとしての機能が1つしか見当たりません。そのかわり,視認性のよさそうなディスプレイで8ch分の状態が確認できます。
今回スペックは長くなるのでm802 SPECをご覧いただくとして,m802のオプション等も紹介しておきたいと思います。まずはADコンバーター ADATとAES/EBUの二種類が用意されており,24bit 192kHzまで対応します。オプションタイツの後付け可能ということは将来このスロットがThuderboltに対応したりする日が来るのでしょうか?それはそれで楽しみですね。
で,もう一つのoptionがDPAの130Vマイクインプット・オプションです。2ch単位での取り付けとなります。
リモートコントローラーのm802RCUで64chのコントロールが可能です。つまりm802 8台分です。ProTools HDからのコントロールも可能ですから便利です。Graceのような色付けの少ないHAの場合Hallでのクラシック収録も考えられると思いますが,Micレベル出の長距離回線よりはLineレベルでの長距離回線の方がS/Nの観点から有利です。ADオプションを搭載していれば更にどちらか良い方を使うことができるので更にフレキシビリティは高くなります。
ただ普通はそこで犠牲になるのが操作性なわけですが,リモートコントローラーがあるのでその部分も犠牲にならずに済みます。
m802RCUにはm802と同じ情報が表示されるのでm802の状態,増幅率などを簡単に監視できます。
Sound Impression of m802
さて,実際の音です。
すっきりした感じの音でGRACEの音,という感じです。やや冷たくもある感じですが,位相の良さなども相まって使いやすそうな音を提供してくれます。先ほどm801 + リモート機能=m802みたいなことを書きましたが,実際にはHAはm801と大きく異なっています。厳密な試聴では無いので客観性の高い部分でスペックの周波数特性を一部抜粋します。
m802 | m801 | |
@ 40dB gain ± 0.2dB 50Ω source | 15Hz-300kHz | 18Hz-65KHz |
@ 40dB gain ± 3dB 50Ω source | 4.5Hz-1.0MHz | 4.5Hz-350KHz |
m801も非常に優秀なHAとですが,数値で見るとどうしても見劣りしますね,
F特で1MHz=1,000kHz=1,000,000Hzってなかなか見かけない数値です。degidesignのPREとAVALON DesignのHAのスペックでちらほら,というくらいでしょうか。
GRACEの音の傾向はSSLやAvalonのような「そのにある音を純粋に増幅しました。機材では特に音をいじっていません」という流れのHAだと思います。もちろん完全に数学的に増幅することは不可能でしょうし,SSLもAVALONも機材の音,というのは存在します。GRACEも然りです。ただ,NEVEの様にHAの音に期待をしてHAをセレクトする,という機材では無いのかな,と。まぁSSLはまたちょっと別としてもあまり色付けされたくないときに使用するHAだと思います。そう考えるとさすがにGRACEです。リモート機能など,自社の製品がどのような現場で使用され,どのような機能が必要かよくわかってますね。
ホールなどマルチマイクでの録音など位相が大きくきになる場合には非常に大きなメリットがあります。前述のとおりHAで大きく音が左右されないのでLive収録などにはもってこいかも知れません。
クラシックの録音という観点だと,もう少し中域があってもいいのかもしれませんが,好みもあると思いますし,もしGRACEにそれを伝えたら「そういうのはケーブルとか電源とかで何とかしてくれ」と言われそうな気もしますね(笑)。
Afterwords
金額で見ると高い部類に入る機材だとは思いますが,8ch有るということを考えると底まで無茶な金額でも無いような気もします。
実際に使ってみるとリモート機能は非常に便利で設定が終われば,ポンと視界の外においておけるというメリット等最高です。体の位置を動かすことなく可能ですから。
多チャンネルHAを検討中の皆さん,是非選択肢に入れてください。