Focusrite
ISA430 mkII
Product overview of ISA430 mkII
今回は高級機の代名詞のひとつFocsriteです。その中でも最高峰に位置するISA rangeのISA430 mkII、Producer Packと呼ばれているchannel stripです。FocusriteはあのRupert Neve氏が設立した会社で、コンソールやアウトボードを多数生産しています。今はNeve氏は関わっていませんがISA rangeはNeve氏の設計の設計がベースになっています。
同社の製品はBlue range,Red range,Green range,Plutinum range,ISA rangeとそれぞれ、Mastering向け、Recording向けと用途が決まっていました。
ISA rangeだとISA110,ISA130など伝説の機材が多数あります。そんな中channel stripとしてISA430があるわけです。Sir George Martin氏が笑顔と共にISA430 mkIIを持っていたのをご記憶の方もいらっしゃるかもしれません。
Panel
さてフロントパネルから見ていきましょう。
左側にはVUメーターが配置され、そのすぐ右上段にHAのセクションがあります。インプットソースはMic/Line/Instから選ぶことが出来ます。GainとTrimですね。Mic入力の際にはGAIN STAGEは二種類を選択することが可能です。0-30dB(10dBステップ)と30-60d(10dBステップ)です。
TRIMノブは20dBの増幅が可能です。
Line入力時はGAIN STAGEは-20 ... +10dB(10dBステップ)となりTRIMはやはり連続可変で20dB増幅可能です。
Innst入力の際はGAINは無関係でTRIMノブのみで0-+40dBの増幅が可能です。
またMic入力時はインピーダンスを4種類の中から選ぶことが可能です。この4種類は Low/ISA110/Med/Highの4つですが,
- Low = 600 Ohms
- ISA110 = 1400 Ohms
- Mid = 2400 Ohms
- High = 6800 Ohms
となっています。
UVメーターですが、普通は0VU=+4dBuで固定されていたり、GR(=Gain Reduction)にしかならなかったりするのですが、コレをボタンひとつで0VU=+18dBuに変更することが可能です。今回試したのはISA430mkII Analogだったのですが、Digital I/Oを搭載した機種もあり、Digitalへの対応が伺えます。
その右にはFilterのセクションです。HPFとLPFがそれぞれ可変(HPF:20-1.6kHz,LPF:400-22kHz)で用意されています。更にその右です。ここはあの伝説のISA110のEQにシェルビングが追加されたバージョンとなっています。4バンドフルパラメトリックEQです。正確にはLFとHFはそれぞれ8ポイントセレクト(LF=20,33,56,95,160,270,460,655Hz/HF=1.5,2.2,3.3,4.7,6.8,10,15,18kHz),LMFとHMFがそれぞれ40Hz-1.2kHz,600Hz-18kHzまで連続可変のフルパラメトリックEQです。
その下にはGateとCompressor(もちろんPre/Post EQ切替可能)、さらにはDe-Esserがあり一番右にはLED Peakメーターもあります。ここはオリジナルISA130の回路に更に磨きをかけた回路となっています。
ありがたいのが各機能をバイパスする機能が付いていること。これは大きいですね。Filter/EQのセクションはS/CでDynに送ることが可能です。
Rear Panel
リアパネルですが、普通のchannel Stripと比べてI/Oが非常に多くあります。
「普通の」というと語弊があるのかもしれませんが、良くあるタイプだと、[Mic in][Line in][Output]だけだったりします。
ISA430のリアパネルからは、
「ISA430はいい機材だと思うけど、他のEQとかも使いたいでしょ?I/Oたくさん用意しておいたから好きに使ってよ」
というRupert Neve氏の思いやりと優しさが感じられます。
Mic in,Line in, inst in,
HA out,Main out
に加え Dynamic Link,Gate/Compのそれぞれtrigger in
さらには2系統のInsertまでも!
至れり尽くせりです。
Sound Impression of ISA430 mkII
さてさて肝心なのは機能ではなくその音です。様々なソースを入力して試してみました。
まずはKick/Bassからです。なかなか予想していた音とは違います。予想外れもいいところです。こんな音なのかなぁ...と思ってEQなどをいじってはみるもののなかなか理想の音にたどり着けません。とりあえずあきらめてBassに移ってみました。ここでもその印象はあまり変わらずです。
Comp/Dynどちらもしっかりかかるのですが、???と言った印象。一瞬42万円の機材の音か?と思いました。
しっくりこないままPianoに移りました。
ここでやっとISA430の本領発揮、といった音がします。おそらく低域はあまり得意ではないのかもしれません。もちろんジャンルにもよると思いますが。
Pfで軽くEQでHiを伸ばすと、カツーンと綺麗に伸び上品な感じが出てきます。200HzあたりをQを広めにちょっとBoostしてやるとふくよかな高級感が出てきます。ISA110,ISA215が名機と呼ばれている理由が良くわかります。Dynamicsでうまく抑えてやるとナイスなポジションに収まってくれます。
ここでなんとなくISA430に向く楽器の傾向が見えた僕はその裏付けをとるべく試していきました。なるほどどれもロングサステインで高域がきちんと出ている楽器に向く傾向があるようです。SSLやAMEKとも比べたのですが、まったく別のかかり方をします。非常によい勉強になりました。
SRの現場のJAZZのホールでのコンサートに持ち出して使用したことがありますが、このときも参りましたね。Pfに使用したのですが、やはり「アナログっていいな」と思いました。ギラギラすることなく綺麗にの伸びる高域、しっかりと、かつ嫌味のない中域、ConsoleはYAMAHA M7CLだったのですが、内部のEQは完全にバイパスして使っていました。
スネアにもよく使用しますが,コンプでおもいっきり叩いた感じのサウンドも作れるので便利です。コンプの種類もVintageを選ぶことが可能です。
(20110922追記)
インピーダンス切り替えの部分の音質の変化を一切書いていないことに気が付き(汗)改めてチェックしてました。
値は前述のとおりですが,最近は他ハイインピーダンスをもつMicInputが少なくないのでさほど「インピーダンス高いなー」という印象もありません。ただやはり切り替えて行くと音は異なります。
高くしていくに連れ,音の重心が上がり抜けの良い感じになりますが,一歩間違えると浮き足立った感じにもなりかねません。実際LowとHightではその値に11倍もの差ありますから当然といえば当然です。
この音質の変化はEQやコンプでは作れないので,非常に重宝すると思います。僕はいつもISA110から切り替えて見て収まりの良いところ,説得力のあるところを利用しています。
Aferwords
おいそれと買うことが出来る機材ではないのは重々承知の上で、書いているのですが、機会があれば是非試して見ていただきたい機材のひとつです。「ちょっと違うなー」というときに試すとすんなり決まる説得力を持つ機材のひとつだといえます。
僕は数ある音響機器の中でもChannel Stripがお得感があって好きですね(実際には高いからそうでもないのですが...)。
そういえばAnnex Recordingには多数Channel Stripがありますが、それは間違いなく僕の影響でしょう。