DPA Microphones
4090/4091

今回もDPAのマイクですが,今回は4099ではありません。今回は4090,4091という無指向性マイクです。

HibinoのI藤さんとST4006Aの話になった時に「O谷さん,4090,4091もなかなかやばいっすよ。(4006も)無指向ですが,キャラ違います。価格以上の音するマイクですよ」と勧められ,気になっていたのですが,10月-11月の怒涛の現場シーズンにドサクサに紛れて使用してみることにしました。

運良く4090,4091が2本ずつ使用出来ました(I藤さん,いつもありがとうございます)

Product Overview of 4090/4091

まず4090と4091の大きな違いは感度と最大音圧レベルです。

両者スペックです。

4090

感度
高感度モデル
指向特性
無指向性
カートリッジ
プリポラライズド・コンデンサー型
周波数レンジ(±2dB)
20Hz ... 20kHz
感度(±3dB)
-34 dB re 1V/Pa
等価雑音レベル(Aウェイト)
23 dB SPL
全高調波ひずみ(THD)
1%以下(123 dB SPL)
ダイナミックレンジ(代表値)
100 dB
最大音圧レベル
134 dB SPL
出力インピーダンス
40Ω以下
ケーブル引き伸ばし可能距離
最大300m
電源
ファンタムDC48V/1.0mA
コネクター
XLR3ピン、オス型
寸法、質量
φ19(先端φ6.7)×全長122mm、38g
付属品
マイクロホン・ホルダー(UA0639)×1 ウインドスクリーン(DUA0573)×1

4091

感度
低感度モデル
指向特性
無指向性
カートリッジ
プリポラライズド・コンデンサー型
周波数レンジ(±2dB)
20Hz ... 20kHz
感度(±3dB)
-44.5 dB re 1V/Pa
等価雑音レベル(Aウェイト)
26 dB SPL
全高調波ひずみ(THD)
1%以下(123 dB SPL)
ダイナミックレンジ(代表値)
97 dB
最大音圧レベル
144dB SPL
出力インピーダンス
40Ω以下
ケーブル引き伸ばし可能距離
最大300m
電源
ファンタムDC48V/1.0mA
コネクター
XLR3ピン、オス型
寸法、質量
φ19(先端φ6.7)×全長122mm、38g
付属品
マイクロホン・ホルダー(UA0639)×1 ウインドスクリーン(DUA0573)×1

です。

こちらのほうが両者の違いは分かりやすいかもしれません。

型番40904091
高感度モデル低感度モデル
指向特性無指向性
カートリッジプリポラライズド・コンデンサー型
周波数レンジ(±2dB)20Hz ... 20kHz
感度(±3dB)-34 dB re 1V/Pa-44.5 dB re 1V/Pa
等価雑音レベル(Aウェイト)23 dB SPL26 dB SPL
全高調波ひずみ(THD)1%以下(123 dB SPL)
ダイナミックレンジ(代表値)100 dB97 dB
最大音圧レベル134 dB SPL144dB SPL
出力インピーダンス40Ω以下
ケーブル引き伸ばし可能距離最大300m
電源ファンタムDC48V/1.0mA
コネクターXLR3ピン、オス型
寸法、質量φ19(先端φ6.7)×全長122mm、38g
付属品マイクロホン・ホルダー(UA0639)×1
ウインドスクリーン(DUA0573)×1

(Hibino 4090、4091 無指向性マイクロホン - DPA Microphones - ヒビノインターサウンド株式会社より転載)
d:voteシリーズ4099HI4099LOの違いのようなものです。

デモ機が届いて空けて実物を見た時の印象ですが「軽っ!!!」というものでした。38グラムとのことなので当たり前ですがもう少し重量があるものかと思っていました。

ホルダーとウィンドスクリーンが付属しています。

Sound Impression of 4090/4091

さて,いろいろ試したので分けてみていきましょう。前述のとおり,「LiveやRecの現場で試した」のでC451との比較などはありません。僕の印象が中心となりますがご了承ください。

As Overhead Microphones for Drums

野外LiveのSRの際に使用してみました。出演者は錚々たる面子で,マイクの性能を推し量る良いチャンスです。

僕はDsのOverheadはNear CoincidentのORTF Stereoもどきのマイキングにすることが多いのですが,今回はSpacedのA-Bにしてみました。マイクとマイクの間は1.2mくらいでしょうか。もう少しあったかもしれません。

Faderを上げてまず感じたのは,Dsという楽器全体がうまく収録できている,ということでした。指向性を持つマイクではなかなか体験できない音像というんでしょうか。軸外の音も均等に拾いますから,軸上の楽器がフォーカスされるということがありません。
ワイドレンジにKickからCymbalまで集音できています。もちろんKickは距離があるので少し遠い感じになってしまいますが,試しにKickを少し足して見たところ充分にDsが成立しています。ドラマーのチューニングが良かったのは当たり前ですが,マルチマイキングでDsを再現するのとは異なった音像です。Jazzであればおそらくこの3本,いや4091だけでもOKだったかもしれません。

別のタイミングで録音でも試してみました。

同じくDsのOverhead使用しました。Drummerに音を確認してもらったのですが,Overheadの印象が非常に良い,と評価を頂きました。

叩いている時に聞いている音の印象に非常に近い,と。

彼とは以前やはり無指向性のマイクを試したことがあったのですが,その時のことも思い出したそうで,「前試した,あのヤバイやつもいいけどこっちも凄いね!」とのコメントを頂きました。(ちなみにその時の様子はEarthworks QTC50mp 製品レビューを御覧ください。)

For choir

同じステージの別の時間に合唱団の演奏が有るとのことで今度は4090をステレオで使用しました。

ステージでの基本的な配置を確認し邪魔にならない場所(とは言っても会場中央になりましたが...)にStereo Barを使用して設置です。この時はORTFに近いマイキングです。合唱なので出演者が2列3列になるので180cmくらいの高さに設置しました。

ここでも感じたのが,やはり音像です。単一指向性2本で収録するとおそらくもう少し分離した感じというかCenter Sourceがフォーカスされた感じになったでしょう。

Low-Cutを程よく入れて無理ない感じにスピーカーから音が出てきました。

違和感の無い音像が好印象で,かつメーカーの音がしない,というんでしょうか。非常に無個性な印象を受けます。本来マイクというのはこうあるべきかもしれません。


Liveで無指向性という,しかも比較的Hi Gainが必要とされるソースに使用するという一見無謀な試みですが出てきた音/音像は「試してみてよかった!」と思えるものでした。もちろんLine Arrayだからできたというのも大きいと思います。

For Guitar Amplifier

別のタイミングで4091をGuitarAmpに使用してみました。

録音では良くコンデンサーマイク+ダイナミックマイクの2本で収録するのですが,chの兼ね合いもありLiveはなんだかんだSM57,みたいなところがありました。

今回それまでGt2本だったのですが,Guitaristが1人になったのと,本人から「可能であれば2本で狙ってほしい」と要請をもらいせっかくなので4091にしてみました。

当たり前ですが,ダイナミックに比べてワイドレンジになります。高域はシルキーに伸び,低域もなかなか聴けないLow-endが聞こえます。さすがにここまではいらない,とLow-Cutを入れましたが高域はそのまま,耳に痛くない高域を使うことにしました。

SM57と4091の比率が4:6くらいでしょうか,ダイナミックマイク特有の程よいパワフルさとコンデンサーマイク特有の伸びた高域が印象的なギターサウンドです。


Liveでのギターサウンドに気を良くした僕はその後控えていたRecordingでも試してみました。

無指向性マイクは近接効果が発生しないのでオンマイクにするときには切り替えて使用していたのですが,今回スモールダイヤフラムの無指向性マイクで試すのは初めてです。

Liveの時と同じような印象ですが,Monitorでより細かく聞いていくといつものマイクとの違いがなんとなく見えてきます。

クライアントも好印象なのでそのまま録音を進めることにしました。存在感ある音のお陰で特にOverdubbingを重ねることなくGt Trackは完成です。

Afterwords

重量,サイズからはぱっと見,不安を感じるのですが,「山椒は小粒でもぴりりと辛い」といいますが,性能を辛さで表すと,むしろ激辛です。

又ほしいマイクが増えてしまいました。

無指向性ということで単一指向性とは異なったマイキングスキルが必要となりますが,ぜひとも試していただきたいマイクです。

録音のみならず,Liveでも大きな収穫が有ると思います。

DPA Microphones,4090 画像DPA Microphones,4091 画像

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