DPA Microphones
4011A

今回はコンデンサーマイクを見ていきたいと思います。

僕の大好きなマイクブランドの一つであるDPAのStudio Condenser Microphone d:dicate 4000 seriesの単一指向性モデル、4011Aです。

Product Overview of 4011A

DPAが聞いたら気を悪くするかもしれませんが、スタジオマイクの帝王の一つのブランドであるDPA(B&K)ですが、AKG、NEUMANN、Telefunkenと比べて一般の認知度はやや低いかもしれません。
一般の方がRecording Sudioの設備を見ることは稀でしょうし、最近はd:vote sereisd:facto II などのリリースもあり演奏家にも親しみのある存在にはなってきましたが、古くはRec Engineer、Producerのお気に入りのブランド、という部分が大きかったのではないかと思います。

さて、話をd:dicate 4000 4011Aに戻しましょう。d:dicate seriesは基本的にマイクカプセル+プリアンプユニットという構成で型番が構成されており、

マイクカプセルは

のバリエーションがあり、プリアンプは

と5種類のバリエーションがあります。

4011Aは、MMC4011+MMP-Aの組み合わせということになります。

Specです。

指向特性
単一指向性
カートリッジ
プリポラライズド・コンデンサー、φ19mm
周波数レンジ(±2dB)
40Hz~20kHz
感度(±2dB)
-40 dB re 1V/Pa
等価雑音レベル(Aウェイト)
18 dB
全高調波歪み(THD)
1 %以下(139 dB SPL)
ダイナミックレンジ(代表値)
118 dB
最大音圧レベル
159 dB SPL
アッテネータースイッチ
0 dB, -20 dB
インピーダンス
200Ω以下
ケーブル引き伸ばし可能距離
最大100m
電源
ファンタムDC48 V/2.8 mA
コネクター
XLR3ピン(オス)
寸法、質量
全長169mm、160g
付属品
ウインドスクリーン(UA0896)
マイクホルダー(UA0639)

別段特筆すべきような項目は無いように感じますが、ケーブル引き伸ばし可能距離というのは中々ですね。他のメーカーがこの項目を公表していないので比較できないのが正直なところです。

指向特性のグラフが均一で美しいです。軸外特性も、流石に完全に一致とまでは参りませんが均一な印象です。

Sound Impression of 4011A

さて、実際の音に参りましょうか。

今回2種類のテストに用いました。1つは普通にLive/Recの際に使用するというもの、もう一つはSpeakerの音を収録したい、というお客さんからの相談でデモした印象です。

後者の方から参りましょうか。

ONSITE AUDIOというAudio系の動画チャンネルを運営なさっている「しけもく」さん(10年以上前からの知り合いで、彼がマニアックなのは知っていたのですが)から、「いま、こういう事(=Speakerの音をリアルで聴くように収録する)をやっていて、それに適したマイクが欲しい」と相談をいただき、彼の希望と僕のオススメの7ペアほどのマイクを弊社Annex Recで試す、というデモを行いました。DPA 4011Aの対抗馬としてはDPA 4006A(3506A)、earthworks QTC40mp, QTC50mpと、錚々たるメンツです。Play Roomに設置されたマイクの総額は300万ほどになろうか、という状況でした。基本はSmall Diaphragmで揃えたのですが、4011Aだけ単一指向性です。デモの詳細は今後、更新されるであろうONSITE AUDIOさんのchannelに譲りますが、メーカーのカラー、音色って存在するんだなというのを改めて実感できた時間でした。

その時の試聴/収録はSpaced methodで行ったのですが、どれも優秀なマイクでびっくりです。Speakerからの再生音をマイクで収録して、Control RoomのNearfilield Monitorで再生する訳ですが、マイクの存在感を消し去ってくれるマイクなどもありました。今回デモしたマイクはしけもくさんのリクエストがほとんどだったのですが、流石にChannel運営をなさっているだけのことはあり、ハズレのないリクエストです。

4011Aに関して、4006Aと比べたときの印象ですが、単一指向性ということもあり、空間の広がりが狭くなりました。指向係数などを考慮すべきだったのかもしれませんが、マイクスタンドの位置を固定したのでこれは致し方ありません。ネガティブな発言に聴こえますが、全面の音を収録する、という単一指向性がちゃんと機能しているということです。時間の関係で試せませんでしたが、マイキングをX-Y methodやORTF method、NOS methodにすれば印象は変わったでしょう。
音質はというとしなやかで艶のある印象、周波数特性が非常にflatなので無味乾燥しているのかな、という僕の印象を覆し、Playbackを聴いたときには、思わず「おー」と声が出ました。

DPA(旧B&K)がRec StudioやHallでOff Mikingで使用されている理由がよくわかりました。やっぱり理由があるだけの音がします。

もう一つのテストですが、ちょうどLive収録的なMulti Track 一発録りの現場に持ち込んで試してみました。

いつもはAKG C451 Bを使用しているH/H, Rideに4011Aを使用しました。周波数特性が異なりますから当たり前ですがいつもと異なる印象です。ほんの少しですが、AKG C451 Bの方が派手な、質感的にはやんちゃな印象です。DPAは紳士的な印象, 質実剛健というです。

一番驚いたのは、Rideの回線の音を、すこーしdarkな感じにしたい、という話になり、マイキングを少し変更、角度を3-5°くらいでしょうか、動かしたのですが、Playbackを聴いたときに全員がその違いを認識出来ました。

マイキングが重要とは常々思っていましたがここまでシビアな違いを描き出してくれた4011Aには脱帽です。

後日、音を確認しようとDAWに展開してみました。録音環境はHAでGain調整しか行わなかったので、音質はHAとMicのみの影響を受けます。Mixがてら、音質を確認したのですが、自然だけど存在感のある音像/音質です。スタジオ定番の理由の一端が判った気がしました。

Afterwords

4090に加えて艶を感じることができるのがd:dicate seriesかな、という印象です。

DPAのマイクはVO4099を始め幾つかのマイクをレビューしてきました。4090の時もすごいな、と思いましたが、今回4011Aを試してステレオで欲しくなりました...。

良い製品を試すのも大概にしないとお金いくらあっても足りないですね:-)。

DPA Microphones,4011A 画像

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checker:Takumi Otani

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