Birdland Santastic Product Review
Preamble
Birdlandが満を持して発売したAcoustic Gt用マイクStantastic。気になっている方も多いのでは?ひょんなことから当店ミュージックスクールAcoustic Gtコースの講師岡田 英典氏(okayan)がそのモニターを務めていることが判明。お忙しい演奏活動の中、時間を割いてそのチェックに付き合ってくださいました。
収録場所はもちろん我々のホーム"Music Plant Annex Recording Studio"です。
最後に実際に使用しての感想などもいただけましたので是非そちらもご覧ください。
さらにさらに今回はProdct review新企画音声ファイルを用意しました。音質の差などを是非皆さん自身の耳で確認してみてください。尚、これらの音声ファイルの著作権は一部を除いてすべて岡田氏に帰属します。無断使用はご遠慮ください。
さてBirdland Santasticはどちらかというと機材というよりは楽器に近いものです。演奏家の出したい音、やりたいことをより正確に出力する必要があります。逆にエキセントリックな音が欲しいのであれば、ナチュラル指向の製品を使う必要はないと思います。特にAcuostic GtやPianoなどはマイクによる収録が難しい(「難しい」というよりは「バリエーションがある」)楽器のひとつですね(簡単なものなどある意味ありませんが)。
録音の現場ではコンデンサーマイクによる収録がメインですが、ライブともなるとそうもいかなくなります。ピエゾ,マグネティック等様々な様々なAcoustic Gtの音をラインに変換するものがあります(まぁマイクもそのひとつですが...)。その中の選択のひとつではあるのですが、岡田氏の言葉を借りれば、
手軽で使いやすい。(スタジオ機材を持ち運ぶような手間を考えれば)非常にコストパフォーマンスの高い製品だと思う。とのこと。詳細は後ほど...。
ギターを加工することなく搭載が可能なので、加工に抵抗がある人にもお勧めできる。
About Birdland Santastic
まずBirdland Santasticとは何かを見ていきましょう。ギター内部にコンデンサー・マイクを装着する事により、ナチュラルなサウンドを得られるということは勿論、一番の悩みだった「ハウリング」の問題をクリアしました。「ハウリング」が起きるメカニズムとして、ギター内部のネック・ブロックとエンド・ブロック間で生じる「定在波」が一番の原因でしたが、Santasticはその周波数帯を押さえるよう設計され見事に「ハウリング」から解放されました。また、バンドでの使用時に、よりハウリングしにくいよう「サウンドホール・カバー」も装備。全てを覆うのではなく1部を開ける形状にすることにより、よりナチュラルなサウンドが得られます。正確には"Santastic"とは一連のセットの出力部の名称です。
その"Santastic Set"の内容とは
- HIGHLANDER インターナルマイク
- Santastic
- Sound Hallカバー
- 中継ケーブル
入出力とコントロール部のみです。出力はBalanced outputもありますので非常に重宝します。Santastic1台でアンプとMixerへの信号出力が可能です。
インターナル・マイクへの電源供給と、ギター内部という特殊な音響を考慮し、ハウリングの原因となる「定在波」の周波数帯を軽減。コンデンサー・マイクの宿命だった「ハウリング」から解放されました。裏の足ゴムのネジをはずせばマジック・テープなどを使用してストラップにマウントする事も可能です。バランス、アンバランスの2系統の出力が出来ます。ギターに装着したところはこんな感じです。ちょっと分かりづらいかもしれません。画像1画像2画像3
Check
さて、簡単な打ち合わせをすませて、当店録音スタジオAnnex Recording Studioに移動です(といっても建物は隣ですけど)。いわゆる「弱音楽器」と呼ばれるAcoustic Gtを収録するのですからある程度吸音された環境が必要になります。そういった録音にも充分耐えうるだけの設備です。逆に「ハウリング」に関してはチェックできないのですが、今回のテーマは
他の製品(ピエゾ,マグネティックなど)と比べて音質面からSantasticをチェックするという観点に絞りました。ライブを行う環境というのはまちまちなので、もしここでハウリングに関する記述が出来たとしても、それがすべてに完全に当てはなるとは限らないからです。しかし音質はそんなことはないと思います。「好み」というものはあっても少なくとも傾向を掴む事などは可能です。
しかも今回は岡田氏の演奏のwav fileも試聴可能にしてあります。是非ご自身の耳で確認してください。
Equipment
まず岡田氏の楽器から。もちろんSantastic set、そしてご自身のAcoustic Gt,Northwood ZIR80-OM(top:シダー,S&B:ジリコーテ)です。McIntyre Acoustic Featherを搭載。
僕はAnnex Recの機材のFocusrite ISA430 mkII analog を使用しました。
Focusrite ISA430 mkII analogのプロダクトレビューにも書いたのですが、POST MIC OUT(post HA direct out)とMAIN OUTが当時に使えるので増幅しただけの音と、EQやFilterなどを施した音を同時に出力できます。比較のためにMicでの収録も行ってみました。ある意味ナンセンス(いわゆるスタジオ録音な訳ですから)な比較なのですが、あれば何かの役に立つだろうということでマイクも立てておきました。コレがあとで大きなサービスになることになるのですが...。
Check
Check方法はいたってシンプル、前述の岡田氏のAcoustic GtにはSantasticとピエゾピックアップが搭載されているとのことでしたので、基本的にそれら両者の比較です。ピエゾの出力はBOSS DI-1を経由しFocusrite ISA430 mkII analogへ、ISA430 mkII analogのPOST MIC OUTとMAIN OUTからApogee AD-8000へ入力し、ProToolsへ。一方SantasticはBalanced outputを搭載しているのでそこから直接Focusrite ISA430 mkII analogへ入力、そこからやはり2つの出力をAD-8000経由でProToolsへ。収録のForamtは48kHz/24bitです。
Santasticの出力つまみは最大にしてもらいましたが時にこちらで歪むようなことはありませんでした。
EQの設定に関しては完全に僕の主観ですが、「いらないところ」をちょっと抑えて、「欲しいな」、と思う部分をブーストしてあります。1回の演奏で4つのトラック(ピエゾダイレクト,ピエゾ EQ,Santasticダイレクト,SantasticEQ)が収録可能です。いろいろなスタイル,すなわちフィンガーピッキング、ピックストローク、タッピング奏法等、数種類の演奏/フレーズをそれぞれ演奏していただきました。
ではそのとき結果です。是非音声ファイルを聞いてみてください。
Sound
それぞれの44.1kHz/16Bit,Stereo Format:wave fileです。DLして御試聴ください。フィンガーピッキング
ここではいわゆる"フィンガーピッキング"ということで"Scarborough Fair"を弾いていただきました。ピエゾダイレクト(4.6M)/ピエゾEQ(4.6M)
Santasticダイレクト(4.6M/SantasticEQ(4.6M)
ピックストローク
ここではピックを用いたフレーズを弾いていただきました。ピエゾダイレクト(2.7M)/ピエゾEQ(2.7M)
Santasticダイレクト(2.7M)/SantasticEQ(2.7M)
タッピング奏法等
ここではいわゆる"タッピング奏法"のフレーズを弾いていただきました。ピエゾダイレクト(3.2M)/ピエゾEQ(3.2M)
Santasticダイレクト(3.2M)/SantasticEQ(3.2M)
ブルーグラス
ここではいわゆる"ブルーグラス"風のフレーズを弾いていただきました。ピエゾダイレクト(3.0M)/ピエゾEQ(3.0M)
Santasticダイレクト(3.0M)/SantasticEQ(3.0M)いかがでしたか?全般的に共通して言えるのは「ピエゾは高域の伸びがあり、Santasticは低域にふくよかさある。」ということでしょうか?
Interview with Okayan
さて、収録後、ここでは岡田氏にインタビューしてみました。参考にしていただけると思いますのでご覧ください。実際に使用してみて...
筆者(以下"T"):「モニターとして、実際に使用してみての感想など、教えていただけますか?」岡田氏(以下"O")「まず電池駆動なのでACアダプターがいらない。ある意味、諸刃の剣なのだけど、非常に手軽といえますね。」
T:「なるほど。音質面からの観点はどうですか?」
O:「ジャンルというか、スタイルにもよると思いますが、ピエゾのような違和感はない。私、自宅でMTRで簡単なデモを録音するときあるのですが、ポンとマイクをおいて録音した感じのイメージに近いというかそういう印象です。」
T:「ジャンルやスタイルと差とおっしゃいますと?」
O:「まず歌もののバックなのか私のようにインストなのか、あとギターを加工するのに抵抗を覚える人っているでしょう?そういう人には無加工で取り付けることが出来るSantasticは魅力じゃないかな?」
T:「歌モノとインストモノ、どちらの方がsantasticは適しているでしょう?」
O:「どちらもOKだと思いますが、あえてどちらというと歌モノだと思います。それは音質と云々ではなく、歌が主役だから多少(Gtの音を)加工すると思うんですよ。PAさんも無理のない範囲で出力すると言うか」
T:「インストモノだときついですか?」
O:「いや、ただやはり(音の)極端な加工は出来ませんし、環境にも影響されます。スピーカーに近いとつらいですね。従来のマイクに比べてハウリングはおきづらくなっているのだと思いますが、やはりおきるときはおきます。むしろスピーカーが私の後ろにあるような会場だと案外大丈夫だったりします。」
T:「ピエゾと比較しての観点だとどのような印象でしょうか?」
O:「昔はピエゾとマグネティックの両方を使って「音を作る」という感じでやっていたんですが、そこに違和感を感じたというか、タッピング奏法などにはよいのですが、最近は指引きが多いのでちょっと違うかな、という部分もありました。Santasticは低域というか、深みのある感じのある音がします。一番大きな違いは素直な反応ということかもしれません。音も含めて。」
T:「"素直"ですか?」
O:「もちろんスタジオで高級マイクを使ったのには勝てないのかもしれないけど、手元の"粗"がすごくでる感じかな?辛口と言ってもよいかもしれない。技術の向上にはとてもよいと思います。」
T:「下手にはきついですか(笑)」
O:「(笑) さすがにそこまでではないと思いますが、やはり、こういう製品に目が向く方ということは人前で演奏をしようと思う方だと思うんですね。そのときにSantasticを使うことによって今まで気づかなかった粗がかなり見えるようになると思います。」
T:「音質以外にも恩恵がある感じですね。」
O:「そうですね。あと生音に近いので弾いていて楽しいですよ。」
T:「あ、それはとても大事ですね。ではLiveの時のことを少し教えてください。どうしてもハウリングが起きるときはどのように対策なさっているのですか?」
O:「Santasticの先にNotch filterをはさんだりしています。Santasticに対して特別に、ということはありません。PAさんと相談するときもありますし。」
T:「先ほどの収録を試聴してどのような印象ですか?」
O:「まず僕はほとんどストロークをやらないので、実際にSantasticはストローク奏法にはあわないんじゃないかと思っていたのですが、今回収録を聞いてみて全然そんなことなかった。とてもまとまっていてよい音がしていました。」
T:「そうですね。アコギの低域の感じもちゃんと収録できていましたし。」
O:「そう、ピエゾってどうしても低域がなくなって、高域がパキパキというか、シャリシャリする部分ありますよね?それがないのでよいのではないかと思いました。」
T:「逆にタッピング奏法ではピエゾが有利でしたね。」
O:「そうですね。今回のを踏まえると、Santasticと何かを、自分のスタイルに合わせて組み合わせるのがベストかもしれないですね。」
T:「ちなみにモニターとしてBirdlandに出した改善要求って教えてもらえますか?」
O:「そうですね。ハウリングに対しては強いに越したことがないので、それを伝えてあります。あと最初にも言いましたが、電池駆動は、コンパクトでよいのですが、ACアダプターやPhantom電源にも対応できるようにして欲しいです。音が良いだけに残念です。電池が切れちゃうとせっかくの音の良さも何もないですから」
(※20080612追記:電源を外部から供給するモデルへの改造つくば店で受け付けております)
T:「最近店頭でも通販でもこういった製品が良く売れる印象があるのですが、やはり皆さんが自分の音にこだわりというか責任を持ち始めているのでしょうね」
O:「そうだと思います。ある程度の割り切りも必要ですけど、自分の楽器と真摯に向き合うのはよいことだと思います。」
演奏家として...
T:「今回のチェックとは直接関係無いのですが、1日どのくらい練習なさってますか?」O:「そうですね...。練習という感じだと3時間位かもしれませんが、会社から帰ってくると基本的に触っていますから"弾いている時間"というと6時間くらいは弾いているかもしれません。嫁さんと話すときもGt弾きながらのときありますし(笑)」
T:「(笑) 練習のメニューというのはあるのですか?」
O:「時に決めてないのですが、大体いつもやってるのは
- 指の運動、スケール練習みたいな感じですかね
- Regular tuningの曲の練習
- Open tuningの曲の練習
- 曲作り、アレンジ
- 再びRegular tuningの曲の練習
T:「やはり弾いているのが楽しいですか?」
O:「うん。そうですね。変な話あまりスペックなどは気にしません。というか分からないんですよ(苦笑)」
T:「そうなんですか?」
O:「"まったく"、というと嘘になりますが、同じ年月ギターを弾いてきた方と話をすると自分のその辺の知識のなさに驚愕しますよ(笑)。自分で気に入った音がすれば、あまり材質とかは気にしないんです。あとあまりきっちりと理論とかもやっていませんでしたし。」
T:「まあ理論は後からついてくる部分あるといいますから...」
O:「そう。もちろん知ってたに越したことはないと思うし、知ってることで広がる部分はあると思うんですが、僕は何とかなっちゃた。だから僕は理論は教えられないんですよ。(苦笑)」
T:「では最後に、オカヤンさんにとって、ギターやギターの演奏って何ですか?」
O:「あ、それ聞いちゃうんだ(苦笑)」
T:「答えづらいですか(笑)」
O:「うーん。それもあまり考えたことなくて...。うーん...。皆"恋人"とかかっこいいことというじゃない?「嫁さん」とか?でもそうだとすると何本も乗り換えるのまずいよなぁ、と(笑)。もちろん愛情みたいのはあるんだけど...。うーん...。一番近いのは「子育て」かな?」
T:「ほうほう」
O:「はじめはもう嬉しくて嬉しくてかわいいわけじゃない?で手がかかるようになって、小生意気言うようになって、頭にくることもあるけど捨てれない、みたいな。だから皆もギター弾くとき構えないでまず楽しくやりましょうよ、て思います。楽しくないと長続きしないしね。演奏したい曲がある、それを一緒に練習して弾けたらやっぱり嬉しいじゃない?その気持ちを一緒に分かち合えたらな、て思いますよ。講師としてもギタリストとしても。」
T:「長い時間、ありがとうございました。」
終始、ギターを抱えつつ穏やかな口調で、製品や音楽に対する考えを語っていただきました。その後昼食をご一緒させていただいたのですが、そのときもいろいろなお話(カンサスのフェスティバルのことやアメリカはでかい!!などなど)を伺うことが出来、とても楽しかったです。
Afterwords
いかがでしたか?音源連動企画。楽器ですからやはり音を聞いていただくのが一番かもしれないと思いやってみました。毎回こういうわけには行かないのですが(汗)、今後機会ががあればがんがんやって行きたいと思っています。
そうそう、せっかく(?)ですから岡田氏による"Scarborough Fair"(214MB)です(Sizeが大きいのでDLしてご覧になることをお勧めします。Quick TimeのDLはこちらから)。
EQ処理、ダイナミクス処理は一切していません。
他の曲もつくば店でたまに店頭でかかっていますのでご覧になりたい方は是非!!
ストリーミングでご覧になりたい方は下をご利用ください(6.4MB)。
※動画の音声は映像に映っているマイクによる収録です。
date:
Birdland Santastic setショップページはこちら
この記事の最終更新日はJul 24, 2024 Wednesday 23:06 JST ,
Product Review最終更新日はSep 30, 2024 Monday 20:02 JST です。
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