AVALON DESIGN
V5 Silver
Product Overview of V5 Silver
サイズですが,AVALON DESIGNのFive seriesとでも言うべき,M5,U5と同じ2U高さのハーフラックサイズになっています。一瞬見ただけではM5に見えるかもしれません。
ノブが大きく2個あり,左側がBoost(=Step Gain/2dB)で右側がTONE(=Preset EQ/Filter)です。
入力切り替えがあり,
- Line(Reamp時に使用)
- Instrument Hi-Z(DIとして使用)
- Mic Hi-Z(=6,700Ω)
- Mic Lo-Z(=1,760 Ω)
- Mic Lo-Z [+48V]
が選択可能です。
Phaseとpadも装備されています。
PadはInputソース(Line/Inst/Mic)ごとに異なるAttenuatorとして作動し,減衰値はそれぞれ
- Line=-13dB
- Instrument=-10dB
- Mic=-15dB
です。
多機能な部分もあるので一旦Specを記載します。
- Audio Circuit Topology
- 100% discrete, high-voltage, Class A
- Gain
- Switched 2dB steps, -/+ 0.15dB
- Input Modes (4)
- Line, Instrument-DI, Microphone high-Z & low-Z
- LINE (transformer)
- Balanced 6,000 Ω, XLR/TRS, gain -3dB ... 36dB, 最大入力 47dB
- INSTRUMENT DI
- Unbalanced 10,000,000 Ω, TRS, gain 2dB ... 42dB, 最大入力: 36dB
- MICROPHONE HiZ (transformer)
- Balanced 6,700 Ω, XLR, gain 20dB ... 60dB, 最大入力: 23dB
- MICROPHONE LoZ (transformer)
- Balanced 1,760 Ω, XLR, gain 26dB ... 66dB, 最大入力: 19dB
- PAD (passive input attenuator)
- Line -13dB, Instrument -10dB & Microphone -15dB
- Phantom Power
- 48V regulated @10mA, blue=power ON, red=phantom ON
- Thru output
- Unbalanced, impedance buffered TRS
- Maximum line ouput level
- +30dB DC coupled, balanced 600 Ω, XLR/TRS
- Maximum isolated output level
- +12dB transformer balanced high Z output, TRS
- Headphone output
- 0.5w into 600 Ω, TRS
- Noise 20kHz, unweighted
- -100dBu minimum gain position
- Noise (EIN) 22Hz-22kHz
- -128dB @ 40dB gain (low Z microphone output)
- Distortion THD, IMD
- 0.05% at +10dB output
- Frequency response, -/+0.5dB
- 5Hz to 50kHz
- Frequency response, -3dB
- 2Hz to 500kHz (input band limited)
- VU Meter
- Professional moving coil VU, wide range -33dB ... 18dB
- Signal LED's
- Peak capture, blue=0dB, red=20dB
- High Cut Filter
- -3dB at 4kHz minimum phase design
- Polarity reverse (phase)
- All outputs relay switched (including isolated output)
- Tone Shape
- Ten "passive" voices for improved clarity, problem solving and musical enhancement
- AC power
- Internal toroidal AC supply, dual wattage, 115 or 230v selectable 50/60Hz, 35w max
- 寸法
- 8.5 x 3.5 x 12 in (216 x 88 x 305mm)
- 出荷時重量
- 5.4kg
DI inputのインピーダンスは10MΩですのでU5の3倍以上です。
I/Oに関してですが,Inst input以外は背面に集約されています。
- Input
- Mic input(XLR),Line input(XLR/TRS)
- Output
- Line output(XLR/TRS),THRU(TRS),ISOLATED Out(TS),Phone(TRS)
です。
THRUを除くOutputにはどの入力を選んでも出力されています。
TONEに関してですが,U5のTONEと同です。ただ,4つ追加されていまして
- HPF 50Hz@6dB/Oct
- HPF 90Hz@6dB/Oct
- Air Lift
- Air Lift+Low Cut(HPF 50Hz@6dB/Oct?)
です。
VUメーターが-20 ... +3じゃないのが新鮮です。写真からもわかっていただけますが,-30 ... +18です。デジタルの対応が感じられます。
LPFは4kHz固定です。
Sound Impression of V5 Silver
As Reamper, DI & Inst Preamp
今回Reampを行おうとなったのは,とあるバンドさんの録音の際に「Clickは使いたいけどなるだけ一体感のある演奏を収録したい。同じ空間で演奏しての一発撮りは不可能だろうか?」という相談を受け,「流石にAmpを鳴らすのはかんべんしてほしい。ただ,一つ妙案がある」と無駄にハードルを上げてしまいました。「BaとGtをラインで録音して後でリアンプしよう!」と提案したのです。
ベースのLine録音は珍しくありませんが,Gtに関しては若干の不安もあったでしょう。僕を信じて任せてくれたメンバーに感謝です。
流石にRockを録音するのにGtがある程度歪んでいないと上がるテンションも上がりません。TC ElectronicのTC1140 2台をDI/Preampとして使用し,DAW上でGt Amp Simulatorをかけて収録していきました。Simulatorの音も「とりあえずなら十分です!」といってもらって収録開始です。この日の収録は予定通り無事終了し後日Reampです。
メンバーさんも「リアンプって初めてなんですよ。どんな感じですか?」と興味津々,OutputをアサインしV5に接続し,Playback!
誰も弾いていないのにギター・アンプから音が出ています(当たりまえですけど)。バンドメンバーさん同じところをループさせ,音を作りこんでいけることに感動していました。マイキングを詰めるのも楽です。
V5はGainも搭載しているのでアンプのGainを上げることなく歪を増やしたりすることも可能です(アンプのGainを上げるとノイズが増加することがありますが,Iso Out以前で増幅しているのでV5で増幅すればそれはありません)。DAWとI/FのHeadroomに余裕があればそれでもよいでしょう。実際そのようにAutomationを書いてニュアンスを整えた部分もありました。
また,Gtを録音し直した曲もありますが,ここでもDI inputに入力しIso Outから出す,というPreamp的な使い方で,リコール性の高いGtのRecording Sessionが進んで行きました。
音もAvalon Designらしくクリーンな音質で何らストレスはありません。
As HA
別のタイミングでVocalの録音に使用してみました。VT-737SPのインプット・トランスを使用して開発されたV5専用のHA回路ということですから期待が持てます。
HAのすべての機能を試したわけではありませんのでそのへんはご了承ください。収録する声の質感をIntro/OutroとAメロ,サビで変えたかったので前者にはリボンマイクを使用したのですが,いつものHAをつかうのも芸が無い(?)なと思ったのと,何よりMIC Hi-Zがあるので調度良いのでは?と思いつき,返送しようと思っていたデモ機を急遽引っ張り出してきてセッティングです。
TONEのAir Lift+Low Cutも使いました(Air LiftとAir Lift+Low Cutは全体的なレベルが-6dBほどになります)。コンデンサーと2本立てて同時に収録しMix時に切り替える方法です。
クライアントが「なんで今回マイクのセッティング派手(=2本有る)なの?」と訊いてきたので音を聞いてもらい,事情を説明しました。細かい説明の前に音を聞いてもらって「あーなるほどね!」と僕が思っていた方向性と同じだったようです。
さて,V5に話を戻しましょう。
Avalon DesignのHAのは基本的にInput Zはやや高めです。それが高域の伸びた高級感ある音につながっているのだと思いますが,リボンマイクはOutput Zが低いので今回のMIC HI-Zモードは非常に有効でした。
本体の特性で高域は落ち込んではいるのですが,いつもより音に曇りを感じないというか,もちろんAir Liftの効果も大きいと思いますがHI-Zモードの影響は小さくないでしょう。Smokeyで曲想にマッチしたVocal収録が出来ました。
Placid Audio COPPERPHONEの時にも感じましたが、多少なりとも癖のある製品(今回はリボンマイク)は使いどころは狭いのですが、はまると強い、という部分があると思います。今回V5を試してHI-Z+Air Liftはもはやリボンマイクの為のモードだと思えてきました。
今回V5+リボンマイクを試してたことにより、DAWの台頭で「とりあえずフラットに録音しておいてPlug-insでいろいろ」という風潮に対してMicrophones Arrangement,Recording Technique
という言葉を思い出させてくれます。
Afterwords
Reamperだけ,DIだけだと今回のようなPreamp的な使い方ができないのでV5が非常にお買い得に思えてきました。今回MicのHAとしてはあまり突っ込んだチェックはできませんでしたが,バリエーションの一つとしてありだと思っています。
BOOSTノブ(=Gain)がクリック式でリコールが容易,TONE回路でとりあえずの音作りができる,ということからも重宝するはずです。
プリプロでの演奏が思いの外良く,本番用にそれを使いたい!ということもあり得ると思いますが,この時に一番問題になりがちなのはその音質です。
「AVALONを使えば大丈夫!」というものでは無いでしょうが,中途半端なHA/DIを使うと高級HAの音にはどうしても負けてしまいます。どうせ録るならいい音で録音しておいたほうが何かと便利なこのご時世です。本番の現場に持ち込んで「一旦Reampさせてみて考える」というのもありだと思います。
録音が手軽にでき,セルフプリプロなども可能な時代ですが「アンサンブルの確認」から更に突っ込んで「本番でも使える収録」を目指すときに協力なパートナーになってくれるでしょう。
絶対額としては安価とは言いづらいですが,機能を考慮すれば決して高くないのかな,と思います。
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