ASTON Microphones
Spirit
さて、発売されて久しいですが、今回はコンデンサーマイクを取り上げていきましょう。
美しい外見をもつAston Micrphones、Spiritです。なかなか試すがタイミングなかったのですが今回タイミングピッタリと。
早速見ていきましょう。
Product Overview of Spirit
まずはスペックと参りましょうか。
- 形式
- コンデンサー型
- 指向特性
- 単一指向性、双指向性、無指向性
- 周波数特性
- 20Hz ... 20kHz (±3dB)
- 音圧感度
- -32.5dB (0dB=1V/Pa 1kHz)
- 最大入力音圧レベル(SPL)
- 138dB (THD 0.5%)
- S/N比
- 80dB A-Weighted (rel. 94dB SPL)
- 出力インピーダンス
- 200Ω
- 等価雑音レベル
- 14dB A-Weighted
- パッドスイッチ
- -20dB/-10dB/0dB
- ローカット
- 80Hz
- 電源
- ファンタム電源48V(±4V)
- 寸法(ヘッド径×全長
- 54mm×175mm
- 質量
- 625g
コンデンサーマイクとしての基本性能は充分にクリアしています。サスペンションが付属していないという理由があるにせよこの価格で手に入るというのはうれしいですね。
サスペンション,ホルダーは付属しませんが本体に5/8inch(SHURE規格)のネジに対応しています。別売りですが,あのInVison USMでおなじみのRycoteがRYCOTE CUSTOMという専用サスペンションを作っています。
見た目も美しく,欧州中世の町並みを思い起こさせる(?)外見にはメーカーのこだわりとセンスを感じます。
指向性を切り替えると周波数特性の曲線に結構変化が出ます。300Hz ... 1.5kHzはあまり変化がありませんが,完全なフラットな曲線(直線というべきでしょうか)とくらべて,無指向性の場合には140Hzあたりに+4dBほどのピークを持つようにうっすら持ち上がり5kHzあたりが-2dB,10kHzあたりが+8dB程というカーブになります。
双指向性の場合には1.5kHzあたりから6.5kHz(約+6dB)にかけて上昇し,9.5kHzあたりに少し落ち込みはあるものの13kHzでやはり+5dBほどとなっています。
単一指向性の場合には2.8kHzに+3dBほどのピークと10kHzあたりに+4.5dBほどのピークがあります。
指向性の切り替えが出来るマイクに関しては少なからず周波数特性曲線が変化しますが,Spiritでオムニから双指向性に切り替えたときには結構変化を感じると思います。
Sound Impression of Spirit
さて,実際の音に参りましょう。
まずVocalに試してみました。オケの2MixにVocalのOverdubbingです。Singerは小柄で元気な女性です。
マイクホルターはENHANCED Audio M600を使用しました。最初は単一指向でGain Check,モニターのバランス取りなどを進めていたのですが,頂いたオケにはシンセなどが結構はいっておりその中で女性ボーカルの存在感を引き立たせたかったので指向性は双指向性にしました。高域のPeakを期待しての選択です。思惑は見事に的中し,余計なEQを掛けること無く収録は進んでいきます。似たような効果はEQでも得られるのでしょうがEQだとPhase Shiftを引き起こしますので,マイクアレンジである程度詰めることが出来るのはうれしいですね。
収録曲のなかで1曲落ち着いた感じの曲があり,そのときには単一指向性にしました。高域のピークが和らぐのでややしっとりとした感じになりました。マイクを交換したような変化,というわけではありませんが手軽で良いですね。ボーカリストも気に入ってくれました。
歌のレスポンス,リバーブとの馴染みもよく好印象でセッションは完了です。
別のタイミングでDs録音の際のRoomマイクに使用してみました。床から30cmくらいの高さに設置しての収録です。
いつもは別のマイクを使うのですが,せっかくなのでどうかな,と。派手さはありませんが,しっかりと実音を拾ってくれるマイクといった印象です。
別のタイミングでもVocalに使用してみました。そのときにはVocalの声質との相性的にハマらなかったのでその時は不採用となりました。
2本揃えてピアノなどの収録にもとても向いていると思います。
20180429追記
印象が良かったのでANNEX Recording Sutidoに採用しました。
最初のセッションはquenaです。フォルクローレにおいてzampoñaとともに主旋律を担当することが多い楽器です。
Quena+Gut GtのNearにSpiritを使用しました。ちょっと高めから口元からのAiryな音を狙うイメージでマイキングしました。
そこから少し離したところにFarで別のマイクを,quena全体を拾うイメージでマイキングです。
軽く録音した後チェックしてもらったのですが,文句なしの一発OK!
セッションは順調に進んでいきますが,2本マイク立てといてよかった,ということがありました。quenaの音色に詳しい方しかわからないかもしれませんが,エア音を多く出す奏法があるのですが,そのエアの音をspiritがしっかり拾ってくれていたおかげで,その部分が気になっていた奏者さんが「あ,それでいけるなら全然OKす!」と。
高域が耳に痛くないけどしっかり抜けてくる!と絶賛していただきました。
指向性はガットギターとの兼ね合いも考えて双指向性にしました。
Afterwords
指向性の切り替えで若干の音質を変更可能なユニークなマイクだと思います。しっかりした個性を持っているマイク,という印象です。
歌以外にもカホンやアコギなどを録音することがある方には非常にお勧めできます。
date:
checker:Takumi Otani
ASTON Microphones,Spirit
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