ALLEN & HEATH
CQ series
ちょっとしたことからAllen&HeathのCQ-18Tを試すことになりました。昨年SQシリーズもいじったのですがレビューを書けるほど, いろいろ操作できたわけではなかったのですが, これもどこかでは取り上げたいですね。
さて, CQシリーズは, 執筆現在最小のALLEN & HEATHのデジタルミキサーのシリーズとなります。ちょっとしたことからみっちり試すことができました。早速見ていきましょう。
Product Overview of CQ series
CQシリーズは, 執筆現在
- CQ-12T
- CQ-18T
- CQ-20B
がラインナップされています。
出力は3機種とも共通で共通で1 Stereo (XLR)+6 Mono (1/2,3/4,5/6がそれぞれStereo coupling可能)です。
入力は
- CQ-12T
- 5 XLR + 5 XLR/Phone + 1 Stereo (phone)
- CQ-18T
- 8 XLR + 8 XLR/Phone + 1 Stereo (phone)
- CQ-20B
- 8 XLR + 8 XLR/Phone + 2 Stereo (phone)
です。Main output以外の端子形状はCQ-12TとCQ-18TはTRS-Phone, CQ-20BはXLRです。
CQ-18TとCQ-20BはWi-Fi Hot Spotになり, 専用アプリ CQ-MixPadでリモート制御可能です。また, 出演者個人向けに, CQ4YOUといったアプリもリリースされています。CQ-12TもCQ-MixPadでの制御は可能ですが, こちらはWi-Fi hot spot機能は搭載していませんのでWi-Fi RouterをRJ45 network portに接続する必要があります。
CQ-20BはTouch Panel Displayをはじめとする操作子を搭載していませんので基本的にCQ-MixPadでの制御が前提となります。
CQ-18TにはSoft Rotariesと呼ばれる3つのノブと3つのSoftkeysが搭載されており, ストレスの少ないoperationを可能にしています。
ちょっとごちゃごちゃしてきたので表でまとめてみます。Specも記載します。
CQ-12T | CQ-18T | CQ-20B | |
---|---|---|---|
Touch Display | 7inch Multi-Touch | - | |
Soft/Smart Rotaries | - | 3 | - |
Soft Keys | 3 | - | |
Touchscreen Rotary | 1 | - | |
Effect | 2 | 4 | |
すべてSend/Retuen or Insert切り替え可能。 | |||
Network制御 | Available | ||
Bluetooth | Available | ||
Wi-Fi hot spot | - | Available | |
SDHC card | 最大32GB | ||
SDHC card Rec (96kHz) | Max. 16ch | Max. 16ch1) | |
SDHC card Playback | Max. 16ch | Max. 16ch1) | Max. 16ch1) |
USB memory Rec | 48 / 96kHz, 24bit WAV | ||
Audio I/F | Multi channel Rec / Playback USB-B | ||
Input | 5 XLR (ch.1-5) 5 XLR/Phone (ch.6-10) 1 Stereo (phone) | 8 XLR (ch.1-8) 8 XLR/Phone (ch.9-16) 1 Stereo (phone) | 8 XLR (ch.1-8) 8 XLR/Phone (ch.15,16:Hi-Z対応) 2 Stereo (phone) |
HA | Fully Recallable | ||
Mic Gain Range | 0 … +60dB, 1dB Step | ||
Max. Mic input Level | +17dBu (XLR), +30dBu (TRS) | ||
Mic input Z | > 1.5kΩ (XLR), > 10kΩ (TRS) | ||
THD+N (Gain=0dB) | 0.002% -92dBu (20Hz ... 20kHz, USB サウンドカード, @0dBu 1kHz) | ||
THD+N (Gain=+30dB) | 0.004% -88dBu (20Hz … 20kHz, USB サウンドカード, @-30dBu 1kHz) | ||
Line Input Sensitivity | +4dBu (TRS phone) | ||
Line trim | ± 21dB | ||
Max. Line input Level | 24dBu | ||
Line input Z | > 10kΩ | ||
Output | 1 Stereo (XLR) 6 mono (Phone) | 1 Stereo (XLR) 6 mono (XLR) | |
1/2,3/4,5/6はそれぞれStereo couplable | |||
Outout Z | < 75 Ω | ||
Alt Outout | - | 1 Stereo | |
Max. output level | +22dBu | ||
dBFS Alignment | +18dBu = 0dBFS (XLR 出力で+22dBu) | ||
Meter Calibration | 0dB meter = -18dBFS (XLR出力時+4dBu) | ||
Sampling Rate | 96kHz | ||
Bit depth | 最大96 bitのXCVIコア・カスタム・ビット幅をアルゴリズムに使用 | ||
Latency | < 0.7mSec ローカル・マイク入力からメインL/R | ||
DCA | 4 | ||
Mute Group | 4 | ||
Footswitch Control | Available | ||
Headphone out | 1 | 2 | 1 |
Rack mount option | CQ12T-RK19 | CQ18T-RK19 | CQ20B-RK19 |
Soft Case | CQ12T-CASE | CQ18T-CASE | CQ20B-CASE |
Size (mm) W × D × H | 291 × 242 × 89 | 346 × 242 × 89 | 372 × 154 × 134 |
Weight | 2.4 kg | 3 kg | 2.6 kg |
1) UHS-Iスピードクラス10 (最大チャンネル用)
小さなボディになかなかの多機能ぶりです。SDHC cardを使用して本体のみでRecが完結できる
, というのはうれしいですね。もちろんAudio I/Fということで外部のDAWに出力可能です (MacはDriver Free, Win10/11用DriverはMaker siteからご利用ください)が, PCなどを用意することなく録音が可能であり, さらにLive RecであればBackupとしても活用可能でしょう。本体/RemoteでRecording target channelを選択可能です。
今回CQシリーズすべての製品をデモできたわけではありませんが, 内部のFirmwareは共通のようです。
本体のFirmwareの画面構成とCQ-MixPadの画面構成はほぼ共通の構成になっており, CQ-12T, CQ-18Tの本体でしか操作したことがない方でもCQ-20B+CQ-MixPadで違和感なく制御が可能なように考えられています。
以下「本体」は基本的にデモ機としてお借りできたCQ-18Tを指します。CQ-12TはLocal Inputの数が違いますし、CQ-20Bにはボタンなどの操作子はありませんのでCQ-MixPadでのタブに置き換えてご判断ください。CQ-MixPadをDownloadしてにらめっこしながらお読みいただけるとよいかと思います。
操作関連でFootswitchにも触れておきましょう。端子はTRS-phoneに対応していますので, BOSS FS-6のようなFootswitchと標準ステレオ-標準モノラルフォーン x2のケーブルを使用すればTipとRingにそれぞれに機能を割り当てて使用が可能です。TS-Phoneタイプのペダルを使用するときにはTipの割当のみが可能です。
Pages
電源を投入をすると, しばらくして起動が完了します。本体には[CONFIG], [PROCESSING], [FADER], [FX], [HOME]とボタンがありますがこれらは各ページへの移動と捉えていただければよいと思います。各ページにはそれぞれ
- CONFIG
- INPUTS
- OUTPUTS
- USB/SDHC/BT
- AMM
- CONTROL & NETWORK
- PROCESSING, FADER
- INPUTS 1-8
- INPUTS 9-16
- ST. INPUTS/FX
- OUTPUTS
- MGrp/DCA
- FX
- INPUTS
- CONTROL
- PEQ
- OUTPUTS
- HOME
- Home
- RECORD
- SCENE
- DATA
- SYSTEM
タブがあり, ページ内を移動が可能です。選ばれている状態ではボタンがBacklightで青色に光りますが, 欲を言えば各ページで異なる色になってくれると暗い会場での操作時に誤作動が少なくて助かりますね。Firmware updateで対応可能ならぜひ!と思いますが, そもそもBacklight LEDが単色でしか光らない可能性もありますね。
さて, 各ページの機能を簡単に説明すると
CONFIG
INPUTS
入力系の設定を行います。
Channel nameやIconなどの設定, Channel Colour (英国のConsole Brandですので"Color"ではなく, "Colour"と記載します)の設定が可能です。+48Vの印加やPhase invertの設定, Stereo Linkの設定も可能 (奇数ChがLeft)です。Gain Assistantも装備しています。
Input SourceをAnalogとUSB/SDHC Playbackの切り替えもここで行います。
Signal Processingは
- HA (Gain,HPF,Phase)
- GATE
- (Insert)
- PEQ (4 Band Full ParaEQ)
- Compressor
の順番です。EQとCompの順序変更はできません。
Gain Assistantについて簡単に触れておきます。Gainの設定は意外と奥が深く、増幅率を決めるだけではありますが、増幅率が不足すると音が細いままだったりLevelが不足します。過剰に増幅すると歪が発生したり最悪の場合、接続先の機材の破損を引き起こす可能性があります。
Gain Assistant
はAuto GainとAuto Setからなります。Auto setを有効して、マイクに適切に信号を入力すれば、Gain Assistantが適切なLevelになるまで増幅してくれます。Auto GainをONにしておけば過大信号が入力された場合には増幅率を変更してくれます。
OUTPUTS
出力系の設定を行います。ColourやName, またBusのEQをPEQ+FBA (=Feedback Assistant)とGEQを切り替えます。SendのPre/Post Faderの切り替えなども行えます。
GEQは1/3oct.ではなく1/2oct.の20 bandです。
CQ-20BのAlt outputはoutput patchableですが, CQ-12T, CQ-18TはI/OともにPatchの変更はできません。
Feedback Assistantについてですが、出力ごとに最大16個のフィルターでハウリングを自動的に除去します。事前に確認可能なハウリング周波数には固定で設置し、本番中は突発的なハウリングを自動検知するライブフィルターを使用することが可能です。
Input / OutputともにCh PresetがLibraryから呼び出し可能です。詳細は後述しますが、Quick
とComplete
と呼ばれるModeがあり、Quick modeが良くできています。シンプルながら変更可能なGUIが用意されています。1画面でEQ、DYNが設定可能です(詳細の変更はできません)。
CompleteもEQ,Dynの設定が行われており、こちらは所謂「よくあるMixer画面」です。すべてのPresetを試したわけではないのですがなかなかよくできています。
Inputに配備されているGain Assistantもそうですが、このあたりにもSound Engineeringに詳しくない人でもCQシリーズのフルパフォーマンスを引き出して欲しい
というメーカーの姿勢が見えてきます。
USB/SDHC/BT
Multi Track RecのSource Pointの設定などを行います。BTのPairing設定もこのページで行います。
AMM
AMM = Auto Mic Mixerの略で最近流行り (?)の会議用の対応ですね。トークショーなどにも有効でしょう。
CONTROL & NETWORK
DCA, Mute Groupのアサイン, Custom Layerのアサイン, Footswitchの機能の割り当て, Networkの設定を行います。
PROCESSING
このページ内のタブは単純にChannel Layerの切り替えで, PROCESSINGではChannel parameterの状況を簡易的に表示した画面が8ch分並びます。
ST.INは,"ST in"(=Local in),"USB","BT" FX1-4のReturnが操作可能です。FX RetunはGate/Compの操作はできません。
select状態にあるChのChannel Faderが画面の右に表示されます。音作りのタイミングではこの画面の方が行いやすい様に感じます。
該当場所を触ると各機能の詳細に入れます。また, 選択中のChの設定をUser presetにStore/Recallが可能です。
また, 各chの「HAを除くすべての処理状況」「HPF」「GATE」「PEQ」「Comp」をCopy/Paset/Resetが可能です (画面右上)。「HPF」「GATE」「PEQ」「Comp」のON/OFFのみの切り替えが可能なQuick Fireと呼ばれる機能もあります。
Effectへのsend, Output 1 - 6への出力もここで設定可能です。
FADER
ここはその名の通り, Faderの画面で, Solo, Mute, Panも制御可能です。Faderのみを表示するModeも用意されています。実際にMixingを行うのであればこの画面が適しているでしょう。Send on Faderはここで行えます。
CONFIG-CONTROL & NETWORKで設定したCustom layerはこの画面の左上部で切り替え可能です。
FX
INPUTS
各エフェクターに送られているLevelを確認, 設定可能です。いわゆるSends on画面です。
CONTROL
各エフェクターのパラメータ設定を行います。Shared (=Send/Return)とInsertの切り替えもこの画面です。エフェクトの呼び出しもこの画面の右上のフォルダーマークから行えます。
FXページ以外のページを開いている状態でFXボタンを押すと必ずこのCONTROLタブが開きます。エフェクトは最後に選んだものが開きます。
PEQ
Lo/Hi 2bandのEQです。
OUTPUTS
FX Return ChのSendなどの設定画面です。
HOME
HOME
起動時に開く画面です。Console LockやShut Dwon操作, HeadphoneのVol設定もここで行います。
HOMEの別タブにいても, HOMEボタンを押すとHOMEに移動します。FXのCONTROLはそうはなりません。つまり, どの画面に居てもHOME ボタンを2回押せば起動時の画面に移動します。
RECORD
USB MemoryへのStereo Rec/Playback, SDHC cardへのRec enableの設定を行います。
SCENE
SCENEのStore,Recallなどを行います。100 SCENEが登録可能です。
DATA
USB MemoryとのDataのやり取りを行うページです。
SYSTEM
本体温度の表示, FirmwareのUpdate, USB MemoryやSDHC cardのInitialize, MeterのColouringの設定が行えます。
ここでのMeterのColouringはPROCESSING,FADERのBar meterのColourではなくCONFIG-INPUTにおける表示です。LevelとColourを比較的自由度高く設定可能なので-50...0dBを赤色とかにすると結構びっくりします。CQ-MixPadでも設定可能ですので悪戯にはもってこい (?)です。
Feature of CQ Sereis
さて, CQ Sereisの最大の特徴の一つといってよいと思います。Quick ModeとComplete Modeというものが用意されています。Complete Modeとそれ以外といってもよいかもしれません。
起動すると終了時の画面選択に限らず必ずHomeが押された状態で起動します。画面中央に"Quick Start"と「押してくれ!」と言わんばかりの存在感で表示されます。押してQuick Startに移動するとAll Quick, All Comprete, Conference, Rock,...とConsoleの挙動のPresetが並んでいます。
CompleteはすべてのParameterにFull Accsessできるモードで僕にとっては一番しっくりきます。All QuickはEQやCompの細かい設定は行えず, PROCESSING画面でChannelをeditしようとaccessすると, Completeとは明らかに異なったGUIが表示されます。DAWのPlug-inのようなデザインでEQのParameterもHi, Mid, Loしかありません。
不便なようですが, 周波数の概念になじみがない人に4 Band Full parameteric EQはハードルが高いのも事実です。
CONFIG-INPUTSを見るとわかりやすいのですが, RockやPopsではすでにChannel nameが設定され, Iconなども設定されています。ChannelもいくつものPresetが用意されており, ある程度のところまでassistしてくれる印象です。
起動時のQuick Startは押さないと先に進めない, といったものでは無く, SCENEタブに移動してそちらを利用することも可能です。Maker推奨のテンプレート, 位に捉えていただいてよいかと思いますがそれにしてはよくできています。以下で見ていきましょう。
Channel Preset & Edit
CompleteのChannelのparameter Editは非常に慣れ親しんだGUIでDigital Mixerを操作したことのある方, DAWを使用している方であればさほど違和感なく使用が可能な印象ですが, Complete以外のChannel Editに関して少し触れておきましょう。QUICK Startで選ぶStart presetによるのですが, ここではRockを例にとりましょう。
Rock
を選ぶと
1.Kick
2.Snare
3.HHat
4.Tom1
5.Tom2
6.Tom3
7/8.OHead
9.Bass
10.Rhythm
11.Lead
12-13. (N/C)
14.Vox1
15.Vox2
16.Vox3
とCh Presetが配置されます。CONFIG.で確認可能です。
PROCESSINGに移り, selectしたchのIconをタップするとChannel Editに入れるわけですが, それぞれのChannel Presetごとに少し異なったGUIが表示されます。以下はCQ-MixPadのScreenshotですが本体displayのGUIもほぼ同様です。
Quick Channel Presetは
が用意されています。
Drums / Perc.やKeys / Synth, Wind / Brass, Tone ShaperはMorphong EQとでも言いましょうか, 初期設定されたEQの設定をSweepさせて好みの設定を選ぶ形式です。EQ Curveの変化も連続的に追従しますので音を出さずに見ていても面白いです。
Guitar,Bass,Vocalなどは初期設定から選ぶ形になります。中間値は選択できません。
Quick Channel Presetを選んだ場合にはHAのGain設定はCONFIG.画面のみから行えます。
Complete Channel Presetも多くのPresetが用意されています。
せっかくなのでComplete Modeの見慣れた
parameterのページも掲載します
Quick Channel can be converted to Complete Channel
Complete Start preset以外を選んだ際に, 必要なChannelのみをComplete Modeで細かく設定する, ということも可能です。その場合にはRecall Channel Presetを呼び出す必要がありますが、流石にALLEN & HEATH!!
それ以外の方法も用意されています。PROCESSING画面でchannelをselectした状態で、右上のハンバーガーメニューを開くと[Copy][Paste]などが並んでいますが、一番下に[Convert]なるボタンがあります。そうです。Quickで作った設定をそのままParameterをCompleteで変更できるようにすることができる機能です。
EQは良い塩梅なのだが, もう少しCompresserだけ深くしたい, とかGateのParameterだけ少し変更したい, ということはあるような気がします。
ほかにも, リハーサルは自分たちで行っていたが, Run ThroughからはProのEngineerが合流してくれる, という場合など, 「それまで積み上げてきたものを生かしたいけど, Engineerは使い慣れた4 band Full Parametric EQを操作したいし、CompもON/OFFだけはちょっと...」といった場合に[Convert to Complete Parameter]というコマンドがあればいいなと思いましたが、すでに用意されていました。脱帽です。
初心者の方もQuick Chで設定して、CONVERTしてEQでのポイントなどを確認するといった、研究の素材としても使えそうです。Proの方もざっくり方向性を決めてConvertして微調整はいつもの画面、ということも可能です。まさにQuick!という名称ですね。
多くのDigital MixerにChannel Preset (EQ,Gate,Dyn)が用意されていますが, 後発のメリットでしょうか, CQの方がスマートな印象で, まずSourceのカテゴリを選んでその中で最適そうな設定を呼びだす, というアプローチをとることにより, 選択肢の幅を良い意味で絞れます。徒に機能を削ることなくEngineerからAmatuerまで広いUser層がストレスなく使用できるように設計されています。SQにはこういった画面はありませんでしたが, さすがにあのクラス以上のConsoleになってくると不要な印象です。ただ, CQシリーズともなれば価格帯/サイズ/入出力数の観点からミキサーになれていない方も, むしろ個人のユーザーの方も広く対象になってくる印象です。
既述のSDHC cardを使用してのMulti Track recの際にRec SouceをPost Compressorに設定してChannel Presetを呼び出せば, ある意味, 下処理された録音が可能です (ここまで簡単ではないにせよ, 多少なり選択の幅を減らせるはずです)。
FXもかなり簡易的な設定のみが行える状態で, これはComplete Modeもそれ以外も変わりありません。
当初, Quick mode (=Complete mode以外)の有効性にだいぶ懐疑的だった僕ですが, 実機をいじってみてだいぶ印象が変わりました。ちゃんと機能を引き出せる方からすると, こういう初心者支援モードの搭載は否定的に受け止められがちな印象です (かくいう僕も某社のConsoleのPresetをみて「なんだこれ?」と思った記憶があります)が, CQのそれは前向きに受け取れられそうな気がします。
Firmwareの設計をまったく知らないので予想ですが, Quick Startの設定は内部の挙動を根本的に変えているというよりは, SCENEのROM設定のように感じられます。All QuickをRecallした後に, All CompleteをRecallして設定したSCENEを呼び出すと, All CompleteのSCENEの状態が完全再現されます。前述の通り, Channel presetを混在させることができますから, 当たり前といえば当たり前ですが, PCのSafe Bootみたいに切り替えが面倒なのかな, と思っていましたが意識せずにSCENEとして扱うことが可能です。
ここまで記載して感じたのが, Reference Manualをほとんど見ることなく理解/操作が可能であるということです。もちろん僕がそれなりの数のDigital Consopleをそれなりの頻度で操作してきた人間だからというのも大きいと思いますが, それでもよくできていると思います。むしろ, そういった人間がそれなりにストレス無く操作できると言う意味では非常によくできた設計だと言えます。機能が限定的だから当たり前だ, という声も聞こえてきそうですが, 正直ここまでのReview Entryを見ながら本体を操作してもらえれば全貌の把握/操作は可能ではないかと思います。
Sound Impression of CQ series
さて, 駆け足ながらCQの基本機能を解説してきました。ここからは実際の操作感, 音質などに移りたいと思いますが, 今回PAの現場で試した, とか, 録音してみた, というものではありませんのでその部分はご了承ください。ただ, 今後のその機会は多くなりそうな気がしますのでその際には追記いたします。
届いたデモ機の段ボールを開けると専用Case(CQ18T-CASE)に入ったCQ-18Tのお目見えです。取説は同梱されていなかった(Hibino Downloadからダウンロード可能です。)ので「とりあえず起動するか?」と接続して背面のPower SwitchをTurn ON, しばらくしてHOME-HOMEの画面が起動します。
接続することなく操作感を確認すべく, Pageを切り替えたりタブを移動したりしてしばらくいじってみたのですが, 取り合えず音出してみよう, とSCENEでAll CompleteをRecallし, SHURE SM58とHeadphoneを接続し声を出してみました。
用途にもよると思いますが, 声の場合HAは+27 ... +30dB Gainくらいになると思います。Gain Assistantも試してみたところ, +28dB Gainとなりました。
Preambleにも記載した通り昨年少しALLEN & HEATHのSQを納品でいじったことがあるのですが, そこでの音質はしっかりしていてすっきりとしているという印象でした。低域が薄いわけでもなく, Qu seriesともZED seriesとも異なる音質でした。
後日, そのLive houseのOperatorとも話したのですが, 「再設定したX-over/EQの設定もあると思うが, ALLEN & HEATH SQはすっきりしていて, Opeが大分やりやすくなった。」と評価していました。
CQもそれを引き継いでいるという印象です。同じ回路ではないと思いますが, 音質傾向は同じVector上にあると言ってよいと思います。
EQは4 Band full parametric EQで充分な効きです。Compresserの操作感, パラメーターも違和感はありません。パツパツのサウンドから緩やかにLevelを抑える処理まで無理なく対応可能だと思います。
EQにはRTAが搭載されており、GATE / COMPRESSORにもGRのHistoryが表示されます。
CQ-18TはSoft/Smart Rotariesを搭載していますからEQやCompressorの操作がPhysicalに行えます。Soft/Smart RotariesはEQの場合には選択バンドの"BW","Fs","Gain"に自動的にアサインされます。CQ-12Tの場合にはdisplay右のTouchscreen Rotaryを使用することになるのだと思いますが, Touch ScreenなのでSmartphone感覚でも操作は可能です。Touchscreen RotaryとSoft/Smart Rotariesが回転だけでなくPushにも対応していれば良かったなと思いました。例えばCompressorでPushすると, Hard Knee/Soft kneeの切り替え, Peak sensing/RMS sensingの切り替え, とかになるとより素早い設定が可能だと思います。まぁその分高価になっちゃうんでしょう。使用するCh数を考えればそこまでのことではないかもしれませんね。
Afterwords
欲を言えば, 部分的にAccessをLockする機能がほしいですね。soundcraftのUiシリーズのように, HA,HPF,EQ,Dynは変更できないけれど, Fader, FX Sendは操作できる, といった感じです。
機能としてはAll Completeで細々設定したいけど, 操作はミキサーに詳しくない人, みたいな納品時のジレンマに, UiのAccess制限機能は結構便利でした。Audio I/Fも搭載していることからちょっとした配信スタジオなどにはもってこいだと思いますが, 技術者がみんなすべての機材に詳しいわけではないでしょうから, 意外と需要多いと思います。代理店のHibinoさんに相談したら本国にRequestとして伝えます, とのことでした。
トータルとしてはコンパクトデジタルミキサーの新たな可能性を開拓したミキサーと言ってよいと思います。I/Oがもう少しほしいという方にはQuやSQということになるのだと思いますが, CQ-18Tであれば, Mic inが16ありますのでCost Performanceはかなり高いといえると思います。
固定設備にも, ちょっとしたPA, 録音にも適したMulti Purposeなミキサーと言える製品です。あとちょっと贅沢かもですが、Keyboard Mixerにも良いと思います。Quickで簡単に音作りが可能です。もちろん基本の音作りはSynthの内部で行うべきですが、+αを与えるにはぴったりだと思います。SCENEもあるので曲ごとに設定変更も可能です。
また、PA systemの入力拡張Mixerとしても非常に有効でしょう。



date:
checker:Takumi Otani
ALLEN & HEATH,CQ-12T
ショップページへ
ALLEN & HEATH,CQ-18T
ショップページへ
ALLEN & HEATH,CQ-20B
ショップページへ