AKG
C636

2024年も1/3が過ぎ、前回のレビューから実に9ヶ月ぶりになるレビューです。今回見ていくのはAKGのハンドヘルド コンデンサーマイク C636です。C535 EBの後継機種です。

C535 EBというと、AKGのハンドヘルドコンデンサーマイクの最上位機種です。その血脈を受け継ぐC636早速見ていきましょう!

Product Overview of C636

さも新製品を試しました、のように書き出しましたが、C636がリリースされたのは2018年の4月です。

ボーカル向けハンドマイク、ということでなかなか評価がし辛い(=声質やジャンルなどに多分に影響される)部分もあり、後回しにしていたら6年経っていました。

Specです。

Spec of C636

形式
コンデンサー型
指向特性
カーディオイド
周波数特性
20Hz … 20kHz
開回路感度
-45dB re 1V/Pa
最大音圧レベル
150dB SPL(THD 1%)
等価雑音レベル
20dB SPL(A-weighted)
High-pass filter
Flat/80Hz(12dB/oct)
インピーダンス
200Ω以下
電源
ファンタムDC48V±4V/4mA以下
端子
XLR(バランス)
寸法(φ×H)
52×186mm
質量
328g
付属品
マイクホルダー(SA61)、マイクポーチ

SM58の重量が 298 gですからC636のほうが少し重いですね。サイズ的にC636のほうが少し長めなので仕方有りません。

C535 EBの後継機種とのことですので、C535EBと比較しておきましょう。

C535 EBC636
形式コンデンサー型
指向特性カーディオイド
周波数特性20Hz … 20kHz
開回路感度-43dB re 1V/Pa-45dB re 1V/Pa
最大音圧レベル130dB SPL (THD 1%)150dB SPL (THD 1%)
等価雑音レベル21dB SPL(A-weighted)20dB SPL(A-weighted)
High-pass filterFlat
100Hz(12dB/oct)
500Hz(4dB/oct)
Flat
80Hz(12dB/oct)
インピーダンス200Ω以下
電源ファンタム DC9 … 52V/2.5mA以下ファンタム DC48V±4V/4mA以下
端子XLR(3P)
寸法(φ×H)47×187mm52×186mm
質量260g328g
付属品マイクホルダー(SA61)、マイクポーチ

外観と質量はともかく、極端な差は無いように感じます。最大音圧レベルの大幅な上昇(+20dB SPL)、ENL *1の低下などC535 EBを色々モダンにUpdateした製品がC636と言ってよいでしょう。周波数特性曲線からですが、高域が少し違いがあります。

C636 周波数特性曲線C535 EB 周波数特性曲線

C636もC535 EBも200Hz ... 5kHzあたりまではフラットといってよいかと思いますがC535 EBはそこから緩やかに上昇し、7kHzあたりに穏やかなpeakがあります。+2dB程でしょうか。

C636はpeak pointが8kHzあたりに変更され、+6dBほどの上昇となります。

指向性は両機ともCardiodとありますが、C535 EBはWide cardioid、C636はSupercardioidという印象です。C636のほうが周波数帯による指向特性の差は小さいように感じます。


*1:Equivalent noise level, 等価雑音レベル

Sound Impression of C636

実際の音に参りましょう。

リリースされた当初、少し試したこともありますがVocal Hand micということもあり、Vocalistに試してもらいたいな、と思って数年経ってしまいました。リリースから数年、やっとレビューにふさわしい状況が到来です。

前述の通り、Vocal micは合う、合わないが声質やジャンルに大きく影響される印象があります。その意味ではSM58は偉大なマイクだと思います(タイミングや幸運な諸条件があったのだと思いますが、性能が悪ければスタンダードにはなっていないでしょう)。

さて、今回C636を試すことになった経緯を少し記載します。よくOpeに伺うLive houseJazz Room Cortez澤田知可子さんがいらっしゃるとのこと、オーナーの青春の歌姫らしく、「彼女の声に合うマイクをぜひとも用意したい!!」、とご相談いただきました。2,3候補を提案し、納期などとのバランスでC636に決まりました。

本番の1週間ほど前に資料が届き、編成などの情報が記載されていたのですが、そこに「マイクはSHURE SM58でお願いします。」との記載が。僕とオーナーはしょんぼりです。「折角なので、SM58もスタンバイしておいて試すだけ試してもらいしょう。どうしてもSM58なのかハズレが少ないからSM58なのかにもよりますし。」と前向きな思考で当日を迎えることにしました。

これが(個人的に)幸いしました。SHURE SM58とAKG C636それぞれを使用する際のFoHやMonitorの設定をConsoleのsceneで切り替えて直ぐ呼び出せるようにしたのですが、おかげで特性の違いがよくわかりました。

感度ですが、Spec上、10dBほど違います。実際に同じ音量感になるまでGainを上げていったのですが、その通り10dBほどの差に落ち着きました(まぁ当たり前のことと言えば当たり前のことです)。
まず音質ですが、AKGのらしいスッキリした抜けの良い音という印象です。新品ということもあり、高域(10k ... 12kHz)に少しシャリとした部分がありますが、これはスルーします。中域はスムーズですが過剰な印象はありません。ヨーロピアンな感じは少し薄め、といった印象を受けました。しなやかでAKGらしい音質です。
低域はSM58より少し多めに感じました。持ち上がっているというよりは低域が伸びている、という表現が正確だと思います。ハンドリングノイズはあまり気になりませんでした。

さて、当日、編成はVo.澤田さんとPf. 小野澤さんという布陣でいらしていただきました。Syncもありましたが今回はそこまで多くは使用していませんでした。

さて、挨拶も終わり、マイクの件をご相談すると、「あら、それならぜひ試させてください!」とご快諾いただきました。オーナーも僕もルンルンです。一旦控室に衣装などをお持ちになり、まず小野澤さんが、PfのCheckとRecorderの接続にいらっしゃいました。Pfの回線のGainを取り、Syncのモニター音量、Pf Choのモニター音量をほぼほぼ確定させ、「じゃあリハに参りましょうか?」というタイミングで澤田さんに合流いただきました。緊張の一瞬です。まず声を出していただいての澤田さんの反応はポジティブなものに見受けられました。実際に「うん、今日はこれ(=C636)でいきましょう!」とのことで、その後数曲リハを行いましたがPf+Voの曲も、Pf+Vo+Syncの曲もすんなり決まりリハーサルはあっさりと終了です。

澤田さんの印象として、「コンデンサーマイクだからなのか、レコーディングのときの印象に近い。」とおっしゃってくださいました。錚々たるスタジオで、状態のよいVintgage Micを使用してきたであろう澤田さんにRecordingのときの印象に近いとおっしゃっていだけてとても光栄でした。

リハーサル後、お二人とマイクに関して少しお話したのですが、

とおっしゃっていました。その中でもC636は好印象だったらしく、
「先日、〇〇のマイクが会場にあって試したんです。そのときは良かったんですけど...」
「〇〇も評判が良いので試したんですが...」
など、ここには書けない苦労話なども聞かせてくださいました。

Liveは盛況で、観客の皆さんはとても満足してくださったみたいです。

澤田さんからもC636の印象として細かいニュアンスをきっちり拾ってくれるマイクをいう評価をいただきました。

実際の音声などはJAZZ ROOM CORTEZ YouTubeで公開されるかもしれませんので興味がある方はチェックしてみてください(公開されない可能性もあります)。

Cortezさんでは毎回のLiveをMulti Trackで収録するのですが、バラシの際に「checkがてら録音を確認しようかな」と思い、DAWを再起動させ、軽くバランスを取り、VoにRevを掛けてうっすらBGMとして再生していたのですが、サイン会/写真撮影会(Cortez恒例のイベント)を終えた小野澤さんが、「おつかれさまでした~!」と楽譜などを回収に会場へ。BGMに気づいて「お、今日のだ!」と。しばらく客席エリアで聴いてらっしゃいました。

そうこうしていると澤田さんも会場にいらしゃって「あら?!」と、しばらく聴いてらっしゃいましたが、「ここまで綺麗に録れていると反省会が始まるので..」と若干苦笑しながら、「Mixi楽しみにしています!」と帰路に着かれました。

帰り際に、「今回のLiveを踏まえてAKG C636のレビューを書こうと思っているのですが、澤田さんたちの御名前出しても大丈夫ですか?」と伺ったところ、「もちろん!ぜひとも!」とご快諾いただきました。

Cortezのオーナーもマイクポーチにサインを頂いてホクホクのご様子でした。

僕なりのC636の印象ですが、中域がスムーズで艶のあるしなやかな音質のマイクだと感じます。

Afterwords

Vocal hand micとしては高級機と行って良い部類なので悪いことは無いだろうとは思っていたのですが、非常に良い結果を出してくれました。

歌がメインとなるジャンルのVocalistの皆さんにぜひとも試していただきたいマイクの1本です。

AKG,C636 画像

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checker:Takumi Otani

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